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赤と緑
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しおりを挟む彼女に興味を持った理由は、碧衣がオレの持っていた画集を見つけて、
「その人好きなの」
と言って来たからだった。
「この画集出した後、捕まったの知ってる?」
とオレが言うと、
「知ってるよ。でも、絵とかその才能には罪はないかなって」
と言うのだ。
その瞬間に、心の半分以上を持っていかれたと言っていい。
その画家がオレにとってどんな意味があるのかを、語る時間は与えられていなかったけれど。
そんな矢先、常盤の母が倒れ入院することになったと聞く。
常盤の家はシングルマザー家庭だったこともあり、オレも当初かなり心配した。
でも、常盤はあまり多くを語らない。
そんなある日、碧衣の家に常盤が出入りするのを目撃する。
さらに、
「今日はご飯食べにくる?」
なんていう、碧衣から常盤への声がけを、クラス内で目撃した。
聞いてみれば、碧衣んちの花屋にお見舞いの花を買いに行ったのがきっかけだという。
「花を買いに行くには、お見舞いくらいしかないから」
と常盤が言うのを、オレはなんとなしに聞く。
けれど、今となっては、その言葉は狂気の言葉だったと思う。
オレの中に焦りが生まれたのは、このときだった。碧衣との間に距離が生まれる気がしたからだ。
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