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「だから、いいってばっ…って、もうっ。それより仕事!仕事に遅れちゃうっ!!」
スプーンを差し出したまま迫ってくる男をさけて両手で男を押し返す。
ちかいっ近いっちかいちかいちかい!!
隣に男性が座るなんてレーシアの中ではありえない。父親もいなかったレーシアには
自分の身元を保証してくれる小さいときからの知り合いの神父でさえ、隣に座るときは緊張するくらいだ。それが、ピタリと密着した、男性の体温も感じられるほどの近くで
イツを感じるなんて、気が動転する。
慌てて、視線を四方八方に泳がせて、日が昇りきった窓の外に悲鳴を上げる。
レーシアの仕事は朝早い。まだ、街に皆が眠たげにあくびを堪えて歯を磨く時間には
もう家を出ているのだ。
そして、街外れの選択屋での午前中の仕事が始まる。
洗濯屋は実際に客を相手にする店舗と作業場が離れていても構わない。
貴族の家でも洗濯するメイドだけは別棟の洗濯棟での仕事が許されるように
もくもくと朝から湯気立つ仕事場に、干し場を必要とする洗濯屋の作業所は自ずと町外れにある。
元は貴族の館で働いていた専属のメイドが結婚をして、亭主と始めたのが始まりの
洗濯屋である。お抱えの顧客には貴族もいて、大量のシーツを煮詰めて汚れを落とすのである。
洗濯屋は割が良いと若い娘にはそれなりに人気がある。他の奉公と違って雇い主に
24時間束縛を受けるような仕事ではないし、熱い蒸気と力仕事を強いられるが
専門性のある染み抜きなど、その手の技術を習得すればくいっぱぐれる心配も少なく
家でもニーズがあれば続けられる仕事だからだ。
やめた洗濯メイドを雇い主が気に入ってその後もその丁寧な仕事ぶりに
仕事を頼むなんてこともよくある話なのだ。
だからレーシアはどんなに仕事が辛くても技術を学ぼうと一番の下っ端仕事を率先して
頑張って毎日こなしていた。
他のメイドが働く傍に埃舞う仕事場を水で流し
男手が必要な搾り機も軽いものはレーシアも手伝った。
こま鼠のように働いて、みんなに認められようと必死なレーシアは、同僚にその外見で
冷笑されようと精一杯仕事には手を抜かなかった。
だがそれも一度の遅刻で積み重ねたものがぱあになりかねない小さなもの
昇りきった日にレーシアが悲鳴を上げたのも無理もない。
そして、その後に現実を思い出して青い顔でがくりと座り込んだのも無理ない話し。
「あれ、レーシア。君は仕事を辞めたんじゃなかったかい?」
そーよ。辞めたんじゃなくて、辞めさせれれたんだけどね!!
にこにこ、幸せ顔で笑うのほほんとした男が憎い。この時ほど憎いと思ったことはなかった。
「出て行ってっ!」
レーシアは吼える。涙を浮かべた眼で、殺人でもおかしそうな気迫で男に迫る。
「貴方のせいで私の人生はボロボロよっ!!どうせ責任も取るつもりなんかないんでしょう?!
遊び人のイツだもの。でも、貴方のその軽はずみな行動で女の子一人が絶望に追いやられたって知りなさいよ。…う、ひくっ。イツの馬鹿。二度と顔も見たくないわっ!!」
「だから、いいってばっ…って、もうっ。それより仕事!仕事に遅れちゃうっ!!」
スプーンを差し出したまま迫ってくる男をさけて両手で男を押し返す。
ちかいっ近いっちかいちかいちかい!!
隣に男性が座るなんてレーシアの中ではありえない。父親もいなかったレーシアには
自分の身元を保証してくれる小さいときからの知り合いの神父でさえ、隣に座るときは緊張するくらいだ。それが、ピタリと密着した、男性の体温も感じられるほどの近くで
イツを感じるなんて、気が動転する。
慌てて、視線を四方八方に泳がせて、日が昇りきった窓の外に悲鳴を上げる。
レーシアの仕事は朝早い。まだ、街に皆が眠たげにあくびを堪えて歯を磨く時間には
もう家を出ているのだ。
そして、街外れの選択屋での午前中の仕事が始まる。
洗濯屋は実際に客を相手にする店舗と作業場が離れていても構わない。
貴族の家でも洗濯するメイドだけは別棟の洗濯棟での仕事が許されるように
もくもくと朝から湯気立つ仕事場に、干し場を必要とする洗濯屋の作業所は自ずと町外れにある。
元は貴族の館で働いていた専属のメイドが結婚をして、亭主と始めたのが始まりの
洗濯屋である。お抱えの顧客には貴族もいて、大量のシーツを煮詰めて汚れを落とすのである。
洗濯屋は割が良いと若い娘にはそれなりに人気がある。他の奉公と違って雇い主に
24時間束縛を受けるような仕事ではないし、熱い蒸気と力仕事を強いられるが
専門性のある染み抜きなど、その手の技術を習得すればくいっぱぐれる心配も少なく
家でもニーズがあれば続けられる仕事だからだ。
やめた洗濯メイドを雇い主が気に入ってその後もその丁寧な仕事ぶりに
仕事を頼むなんてこともよくある話なのだ。
だからレーシアはどんなに仕事が辛くても技術を学ぼうと一番の下っ端仕事を率先して
頑張って毎日こなしていた。
他のメイドが働く傍に埃舞う仕事場を水で流し
男手が必要な搾り機も軽いものはレーシアも手伝った。
こま鼠のように働いて、みんなに認められようと必死なレーシアは、同僚にその外見で
冷笑されようと精一杯仕事には手を抜かなかった。
だがそれも一度の遅刻で積み重ねたものがぱあになりかねない小さなもの
昇りきった日にレーシアが悲鳴を上げたのも無理もない。
そして、その後に現実を思い出して青い顔でがくりと座り込んだのも無理ない話し。
「あれ、レーシア。君は仕事を辞めたんじゃなかったかい?」
そーよ。辞めたんじゃなくて、辞めさせれれたんだけどね!!
にこにこ、幸せ顔で笑うのほほんとした男が憎い。この時ほど憎いと思ったことはなかった。
「出て行ってっ!」
レーシアは吼える。涙を浮かべた眼で、殺人でもおかしそうな気迫で男に迫る。
「貴方のせいで私の人生はボロボロよっ!!どうせ責任も取るつもりなんかないんでしょう?!
遊び人のイツだもの。でも、貴方のその軽はずみな行動で女の子一人が絶望に追いやられたって知りなさいよ。…う、ひくっ。イツの馬鹿。二度と顔も見たくないわっ!!」
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