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本編

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イルファンの正式な婚約者になり、変わった事がいくつかある。

まず俺の部屋が無くなって、イルファンの部屋が俺の部屋なった。婚約者とはいえ国王から婚姻の許しを得ており、イルファンが重婚の権利を放棄したため生涯伴侶は俺だけだ。
だから婚姻前から居所を同じくする事を認められた。
イルファンの部屋は、居間に相当する部屋とミニキッチン、イルファンの書斎に俺のプライベートな部屋と衣装部屋(すごい量の服と装身具や靴、それがシーズン毎に入れ替わるらしい!)、バスルームにトイレもあり、それと二人の寝室からなっている。
もう部屋っていうか、マンションの一室みたいだ。

朝は同じ部屋から執務室へ向かい、同じ部屋に帰る。彼が公務で時間が合わない以外は、食事も一緒に摂る。
たまに、国王陛下お義父さんやお義兄さんの家族とも食事をする。最初は物凄く緊張したし、同性の伴侶を本当に認められてもらえるのか、不安だった。

実際にご挨拶して、家族と認めてもらえた時は、安堵と緊張が解けてちょっと泣いちゃって、皆様に慰められて温かく迎えてもらった。
・・・その後、部屋に戻ってからイルファンがぎゅっと抱き締めてくれて、また涙が止まらなくなって・・・ちょっと過剰なくらいに甘く慰められちゃったけど。

あとは、王宮仕えの人たちが俺を“第三王子の唯一の婚約者”として、“仕えて”くれるようになった。
ただ、イルファンの侍従の皆はお仕事仲間なのに、主の婚約者として扱われるのはイヤだったんだ。だから皆に執務室での仕事中は、今まで通りに“秘書の西条伊織”として関わって欲しいとお願いした。
皆は快く受け入れてくれて、本当に嬉しかったな。


他にも変わった事はあったけど、そんなに影響がないから実感のない事柄は、今は考えないようにしてる。

から、本当にビックリするほどスムーズに事が運ばれていて、自然にそうなったようにしか思えないくらいだったんだ。
俺が少しも嫌な思いをしたり、傷ついたりしないように・・・逃げられないように
イルファン、どんな根回しと手続きを取ったんだ?・・・18歳の王子の手腕が怖いくらいだよ。


その怖いくらいの手腕は、プライベートな部分でも発揮されまくってる。

正式に婚約してから、以前にも増してイルファンの過保護っぷりと甘やかしっぷりが・・・あとベッドの~がもう、なんかもう~~~ぅぅ!
って、取り乱すくらい・・・なんだよ~。すごく優しいと思うとイジワルだったり、なんでこんなに上手いんだ?!って焦るヒマも無いくらいあっという間に、その、あれだ・・・気持ち良くされちゃって、ワケわからなくなってたり。
ただ、ふっと気がつくと、いつもぎゅっと抱き締めていてくれる。俺が目覚めると、すぐに気づいてキスと恥ずかしいくらいに愛を囁いて、これでもかというくらいに甘く甘い時間を過ごしたり。





今、1日の執務を終えたイルファンが自室に帰ってきた。今日は視察と王宮外での仕事で、俺は執務室でシステムのメンテの内勤だったから、彼に会うのは朝食ぶりだ。
俺はいつもの時間に軽めの夕食を摂って、イルファンを待ちながらも先に入浴をしようとする時間だった。今日は、かなり忙しい公務だったのだろう、もう23時を少し過ぎたところだ。

侍従の皆やSPは前室までで下がらせたようで、リビングにはイルファン一人が入ってきた。今日の彼は、オーダーメイドのスーツを身に付け、前髪を上げて普段は隠れている形の良い額と眉を出している。

普段は王族が着用する、豪奢な長衣を着ているため体型は解りづらくて、何となくがっちりしてるかなーくらいにしか判断できない。
でも、今日みたいにぴったりとしたスーツを着ると、そのバランス良く鍛えられたスタイルが、はっきりと判る。
大人っぽく整えられた髪型と、ともすれば冷たく鋭く見える翠色の双眸。

もう、すっごい格好良い!!脚、長っ!てか、腰の位置がおかしいだろ。乱れた前髪が額にかかってるのが、何で色っぽく見えるんだ?!

俺は、“お帰りなさい”を言うのも忘れて、ぼ~っとイルファンに見とれてしまう。真っ直ぐこちらに歩いて来る彼が、その美貌に柔らかい笑みを浮かべて長い腕をこちらへ伸ばす。

「今、戻った。イオリ、会いたくて堪らなかった。」

そっと俺を引き寄せてぎゅっと抱き締めてくれる。俺も彼の背に腕をまわして、顔を上げて少し離れただけなのに懐かしく感じてしまう、いつもと同じハズなのに何故か違う美貌を見つめる。

「イオリ・・・朝に別れた後、何も無かったか?また仕事に没頭しすぎて食事を抜いてはいないだろうか?不埒な真似をする者や不敬な態度を取る慮外者は?どこか不調なところはないか?」

・・・うん、オカンかな?過保護もここまでくると、もはやオカンだな。
そういうイルファンこそ、食事は摂ったのかな?疲れてるだろうし、食事がまだでも入浴が先かな?

「お帰りなさい、お疲れさまでした、イルファン。何もなかったよ。執務室でシステムメンテをしていただけだから。体の調子も良いし、食事もして入浴しようとしてたところ」

俺は抱き締めながら、俺の無事を言葉と手で確かめようとするイルファンの顔を両手で包み込んで引き寄せ、唇を合わせる。

ーーちゅっ・・ちゅっ・・・

オカンなイルファンは、俺のキスにふわりと相好を崩すと俺のキスを受ける。微笑ましそうな表情にちょっと悔しい気もするが、俺は俺のペースで良いんだ。

「・・・んんっ・・・っふ・・んっ・・」

最後は少し深く口づけ、そっと唇を離す。嬉しそうに俺を見つめるイルファンは、目を閉じていなかったようだ。まったく、エチケットっていうかデリカシーがないヤツだな、まったく。
そう言ったところで、”可愛らしいイオリのキスの最中の愛らしい表情を見ていたい”とかなんとか、恥ずかしいコトを言われるのが目に見えているからな~(実は以前に言われてるんだよねぇ・・)

「イルファンは夕食はちゃんと食べた?」

俺の問いに是と答える彼は、そのまま怪しい手つきで背から腰を撫で始める。穏やかで甘い表情の中で、翠の瞳にははっきりとした情欲の熱が見える。

・・・ん~、これは・・今にもベッドに直行コースになりそうな予感しかしない。
取り合えず、俺が頑張ってイルファンを入浴させてから、ベッドで休ませるぞ~!!
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