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セリナの憂鬱と決断

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「おまえ……。まさか、治癒魔法が使えたのか?」

「説明は後よ!」

 言いながら必死に魔力を集中させてダーク王子の傷を治癒させる。しかし虚ろな目をしたダーク王子の顔色は一向に良くならない。

「そうか、治癒魔法を……。だが、俺は助からないだろう。ここに来るまでに血を流し過ぎた……。傷口を塞いでも、失った血が多量では助からん」

「あきらめないで! やってみないと分からないわ!」

「いいか、よく聞け……。俺には第三王子ブランシュ殺害の容疑がかけられている」

「え!?」

 突然の告白に、思わず第四王子の顔を見るとダーク王子は真っすぐに私を見つめた。

「もちろん、濡れ衣だ。ブランシュ兄上を殺したのは……。第二王子、ライガ兄上だ」

「ライガ王子が第三王子を!?」

 まさか、王宮内で兄王子が弟を手にかけていたなんて信じられないという思いと、学園時代に図書館で金獅子国の王家は代々、新王が王位を継ぐ際に他の王位継承者を殺害する慣習があったことを思い出した。

 レオン国王が即位した時には、そのような事は無かったけれど第二王子は実際、その慣習通りに動いたのか……。そして自分のクラスメイトだったダーク王子もそれに巻き込まれたなんて。そう思いながら愕然としているとダーク王子は黒い布でぐるぐるに巻いた物を私に差し出した。

「これがブランシュ兄上が殺害された時の凶器だ……。これを、レオン兄上に……」

「ダーク王子! もうしゃべらないで!」

 蒼白い顔色となっている第四王子の瞳は最早、焦点があっていないし息も荒い。無理をさせれば命を縮めるであろうことはシロウト目にも明らかだった。しかし、ダーク王子は眉間にシワを寄せて首を横に振った。

「いいや、まだ言う事がある……。国王を麻痺状態にしたのはライガ兄上だ」

「えっ!?」

「そしてライガ兄上は国王が死ねば、その罪を寵妃ローザに着せようと……。寵妃ローザが国王に毒を盛ったことにしようと考えている」

「なんですって!?」

 まさかローザの名前が飛び出すとは思わなかった。しかも国王毒殺の罪を着せられようとしてるなど、にわかには信じられない。しかし、こんな状況でダーク王子が命がけで嘘を話しているとは思えない。

「おまえは王宮に出入りしているのだろう? 地下水路で兵を一時的にまいたが、逃げ切ったとは思えん……。間もなく、追っ手の兵士が来るはずだ。その凶器を隠し持て……。もし、間に合えばレオン兄上に……」

「ダーク王子? ダーク王子!?」
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