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4-3「……ひどいですわ」

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 席に戻ると、れんさんも食事を終えていた。

「ごめん、お待たせ」
「いいえ、大丈夫ですわ」

 恋さんがその言葉と共に、愛らしく微笑む。
 
「えっと、それで……」

 おれは遠見の方をちらりと見る。
 遠見は恋さんの微笑に見惚れて、鼻の下を伸ばしていたけれど、構わず紹介することにした。

「こちら、遠見。同学年で、おれの友人」
「はあ」

 突然の紹介に、恋さんが怪訝そうな表情を浮かべる。
 おれは、遠見に目配せして、挨拶するように促す。

「ども、遠見俊也とおみしゅんやっす! よろしくっす!」

 遠見は勢いよく挨拶し、友好の握手を求めて恋さんに右手を差し出した。
 が、恋さんはその手を取らずに立ち上がって、食器トレイを手に持った。

「古倉くん、お先に失礼します」

 それだけ言って、恋さんが席を後にする。
 
「あっ、ちょっと……」

 おれも自分のトレイを持って、急いで後を追う。
 遠見は灰になって崩れ落ちていた。


 幸い、恋さんの足取りはゆっくりとしたものだったので、すぐに追いついた。

「待って、恋さん」

 おれの言葉に、恋さんが歩みを止めてくれる。

「……ひどいですわ」
「えっ……」

 それは小さな声だったが、確かにひどいと言った。
 なぜか恋さんは怒っているようだ。
 
「あなたが、あんな殿方を紹介してくるなんて……」

 あんな殿方――遠見のことか?
 確かに、あの時、遠見はだらしない顔をしていた。
 下心が見え見えだったかもしれない。
 恋さんもそれに気付いたのだとしたら、怒るのも無理はない。

「ごめん、恋さん……でも、遠見はあれで、なかなかいい奴なんだ」
「……はあ」

 おれの弁解に、返ってきたのはため息だった。

「そういうことを言ってるわけではありませんのに……」

 けれど、彼女はくすっと不敵な笑みを浮かべた。

「まあ、いいですわ。まだまだ、これからですもの」

 結局、何が原因で怒らせてしまったのだろうか……。

「早く食器を片付けませんと、次の講義に間に合わなくなりますわよ」

 再び歩みを進めはじめる恋さん。
 まあ、問題が解決したならいいか。

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