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12・side アージェン 2
しおりを挟む図書棟でその背を見つけた時、自分の帰る場所を見つけたと感じた。
例え、何処にいても何処へ行っても、帰る場所はルキ様だと。
語りかければ、俺の方を真っ直ぐに見上げて来る。その瞳に何とも言えない高揚感が生じる。
神殿長の言葉を伝えれば、伝えた内容にルキ様は恐縮している様だった。
一瞬で王都全域を浄化してしまえる程の力を纏っているというのに、何を遠慮する事があるのか。
だが…自分には自然に接して欲しいと思い、言い訳として立場を説いたが。何故か自分も敬語を外す事になってしまい「アージェン」と名を呼ばれた時は、胸に熱が宿った。
何なんだこの感覚は。
神子達の実年齢に驚きつつも部屋に戻ろうと昇降機へ向かう途中、ユースから報告を受けた。
「ルキ様は昇降機と相性が良くないみたいです」とそんな所に連れて来たのかと思ったが、何より今は昇降機の不快感から守らねばと目の前で緊張している体を引き寄せた。
狭い場所で取り乱したり、倒れては危険かと腕の中に閉じ込めたが、すっぽりと収まった身体は抵抗する事無くその身を委ねてくれた。
その事に安堵したのも束の間。
声を掛けても反応が無い。
様子を伺うと軽い酩酊状態にある。
何度か声を掛ければ漸く反応が返って来たが…これは。
ルキ様を部屋まで送り、騎士棟に戻ると神子達の食事が届いていた。
報告をと思ったが隊長が居なかった為、食事を持って折り返しルキ様の元へ戻った。
……、部屋に居る事は分かっているが返事が無い。
食事を持って中に入るとルキ様は眠っていた。
だが酷く魘されている。
食事を机に置き、ルキ様の様子を見ようと覗き込むと腕が伸びて来た。
その腕に絡め捕られ、引き寄せられるままに身を任せると、少し表情が緩んだ様に見えたがまだ苦しそうだ。
何とかその苦痛を和らげたい。
俺は……無意識に唇を合わせ、その唇に舌を這わせていた。
受け入れる様に開いた隙間から自分の舌を差し入れれば、絡むルキ様の腕に力が入り。縋るように吸い付いて来た。
求められる事に悦を覚えた舌は狭い咥内を宥める様に撫で、柔らかい舌に絡み付き。擦り合わせた。
どれだけの時間そうしていたのか、口づけに心酔していたルキ様が覚醒し始めた。
ぼんやりしていた眼差しは徐々に正気を取り戻し。悪夢の痕跡も残っていない事に安心したが俺の中心部は興奮状態だ。
自分の状態に困惑した。
自分から誰かに口づける等、考えもしなかった。
朝の生理現象や激しい戦闘後の興奮状態以外で、勃つ事は無かった。
…いくら抱き込まれたとはいえ、勝手に唇を奪い好き勝手したのだ。
ここから先は流石に相手の同意がいるだろし、ルキ様の様子を見ても続きは……無理そうだ。
お互い、物理的距離を取る為に、ルキ様にシャワーを勧め、自分は己を落ち着かせる為に壁際に凭れ掛かった。
だというのにルキ様は裸で出て来た。
落ち着かせようとしていた己は既に大興奮で痛いくらいだ。
これは何だ? 一緒にシャワーを浴び、その後絡み合おうと言うお誘いか?
確認したが、違ったようだ…。
シャワーの使い方を教え、俺は再び己を落ち着かせる事に全力を注いだ。
…騎士棟へ戻る道すがら今日の事を思い返す。
他人に興味の無かった俺を揺さぶる感情。
図書棟での酩酊。
先程の依存状態。
昔聞いた父の話。
「己の伴侶を見つけよ。」
ルキ様は そうなのだろうか。
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