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そんなこんなで1ヶ月

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 (私にとっては)怒涛の初出勤からやっと1ヶ月が
 経とうとしてるある日 ――
 


『お早うございます』

  
 いつもの様に通用口から社内へ入り
 タイムカードを押してコスモ企画のフロアへ行き着くと、
 何だかスタッフの皆さんは異様な興奮に包まれていて、
 掲示板の前に人だかりがしていた。
 
 そして――――


「いやぁ~和泉くん、よくやってくれた」

 と、皆さん同様興奮の面持ちで私を迎えたのは、
 直属の上司・鈴木係長。

 掲示板前の人だかりが私と鈴木係長の為にスペースを
 空けた。
 このフロアの出入口近くで係長に迎えられ、
 その掲示板前のスペースへ行く途中にも、
 社員さんや同じバイト仲間達から口々に
 「おめでとう」と言われ、
 私は益々戸惑って小首を傾げた。


「まさか、アルバイトのキミが各務社長の選抜チームに
 選ばれるだなんてね――」

「はいっ?!」

 驚きのあまり声が裏返ってしまった。
  
「ま、入社以来キミの指導は笠井くんと国枝くんに
 任せきりだったが、自慢の部下が異例の出世で
 私も鼻が高いよ」


 そう言われてみれば、先週末にあった特別会議で
 社長を統括官に据えた新しいデザインチームが
 発足するから、一応スタッフは社員・アルバイトの
 区別なく全員メンバーの候補者になったと言われた。

 けど、私はアルバイトの分際で社員さんを差し置いて
 まさか自分が選ばれるだなんて、
 夢にも思ってなかったから、記憶の片隅にも
 とどめていなかったんだ。
 鈴木係長はそりゃもう両手離しの歓びようだし、
 社員さん達の反応も概ねいい感じだったので
 私もちょっとは嬉しくて

 ”少しは自慢してもいいのかな”なんて
 思ったりもしたけど。

 そんな私の浮かれかけた心を音速で元に戻したのが、
 各務社長フリークの女性の先輩達。
 彼女達が向けてくる鋭い視線が私の背中に突き刺さる……。


「机の物は後で整理するとして、キミはまず各務社長の
 所へご挨拶に行ってらっしゃい」

「あ、は、はい……」
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