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アトリエの惨状

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「アマリア! お前、レノスブル様になんという口の利き方をしたのだ!」

 蒼白になった父は、ガッとアマリアの肩を捕まえてくる。

 きっとアマリアの声があまりに大きかったから、父のいたところまで聞こえてしまったのだろう。

 とっさの激情のためとはいえ、もうちょっと声を控えるべきだったわ。

 アマリアは遅すぎることを思った。

 しかしフレイディは謙虚に手を振った。

 父に向かって腰の低いことを言う。

「ああ、いえ、エヴァーレ卿。悪いのはわたくしと飼い犬ですので……」

「それとこれとは別でございます! 娘が無礼な物言いをいたしまして、大変申し訳ございませんでした! ほれっ、アマリア! 謝りなさい!」

 しかし父はそれで終わりとしてくれるはずがない。

 アマリアのふわふわした髪の後頭部を、わしっと掴み、頭を下げさせようとしてくる。

 だがやはり慎み深いとは正反対の性格をしているアマリアは、手を持ち上げてそれに抵抗した。

「嫌よ! レノスブル様のおっしゃる通りですもの! 悪いのはあちらよ!」


「いい悪いの問題ではないと言っているだろう!!」

 今度、廊下に響き渡ったのは父の悲痛な声だった。

 一人娘が上の爵位である相手に無礼すぎる物言いをしたとあっては、身分すら危うくなってしまう可能性がある事態なのだから。

 それを慌ててフォローしてくるフレイディ。

 喧騒がはじまってしまったその場。

 小さく、くぅん、と鼻を鳴らしたレオンの声だけが、唯一小さく、控えめなものであった。
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