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二人きりの一夜

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「そうですわね。絵の進みも遅れてしまいますし」

 ためらい、ためらい、そう言ったアマリア。

 だが口に出たのは絵のことだった。

 もう本塗りに入って、だいぶ進んできた絵。

 あれが遅れてしまうのは自分としても不本意だ。

 それにまだ半年ほどはあるとしたって、進みを止めてしまいたくはない。

 一応、それも自然な理由とはいえた。

 アマリアの仕事はあの肖像画を完成させることなのだから、それが最優先事項だ。

 けれどその理由は、フレイディに苦笑いを浮かべさせてしまった。

「そうではないよ」

 ひとこと言って、軽く腰を上げた。

 アマリアがなんとなく予想してどきっとしたときには、すぐ隣に座り直したフレイディによって、腕の中に捕らえられていた。

 アマリアの心臓が跳ねあがる。

 抱きしめられた感触、薄着の中から伝わってくる確かなぬくもり。

 そしてフレイディのものだろう、ほんのり香る香水のような匂い……。

 どくどく心臓の鼓動が速まり、どきどきするだけではなく、あまりの刺激の強さにくらりと意識まで揺れてしまった。
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