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15年前の事実①
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「美優…入るよ?あ、起きてたの?」
「うん…愛はバイトがあるから帰るって言って。」
美優は一階に降りてきていた。
「美優…頭が痛くなったりしたら話は一旦中断するから言って。」
「え?」
「美優は記憶の一部をなくしてて、医者に無理に思い出すのはやめるように言われているんだよ。だから俺も母も森さんも黙っていたんだ。」
「……うん。分かった。」
「美優、巧に見覚えない?一緒に昔よく遊んでたんだ。」
「え…一緒にって、年齢同じじゃないよね?」
「…本当の名前は巧じゃない。ルイだよ。」
「……ルイ?」
「美優はルイ君って呼んでた。巧はみゅうって呼んでた…」
「みゅう…実は聞き覚えがあるの、その呼ばれ方…」
「巧は俺の兄さんだよ。」
「え!?…でも二人とも会ったときそんな感じじゃ…ていうか何で離れて暮らしているの?兄弟だってお互い知らなかったの?」
「俺も最初はわかんなかった。15年間離れていたから…巧もあまり記憶がないらしい。でも片目がブルーなのを見て兄さんだって思ってDNA鑑定したんだ。」
「でもヒロは両目とも茶色じゃない…お母さんだって…」
「母親はハーフで片目がブルーなんだ。巧と一緒でコンタクトいれているよ。」
「…だからヒロも外国人みたいなんだね。でも、兄弟って言われてもやっぱりピンとこない。思い出せない…」
ヒロが机の上にボロボロになったピンクの小さいカバンを置く。
「このカバン…このリボン…たしかお母さんが作ってくれたカバン?」
「そうだよ。美優はすごくこのカバン気に入ってた。いつも遊びの時はこれを持ち歩いてた。」
「カバン…」
「美優様にとって大事なものが入っていたらいけないからとおっしゃってました。」
巧と泊まったホテルのスタッフの言っていたことを思い出した。
「たしか大事なものがこのカバンに…」
「そうだよ…このカバンにはクリスマス会で交換するはずだったプレゼントが入っているんだ。お互いの大事なものをプレゼントしようって言っていたんだ。」
“ガチャッ…”
玄関のドアが開く音が聞こえ、美優とヒロは身構えた。
「…誰?」
「美優!いるか!?」
「巧…?」
巧がリビングに息を切らして入ってきた。
「ヒロ…お前、それ…」
巧はテーブルに置かれたバッグが美優のバッグだということに気づいた。
「どうしてそれをお前が…」
「巧?」
「まぁいい。その話は後だ。美優に大事な話がある。」
巧が美優の腕を握って外へ連れ出そうとした。
「待って、兄さん――」
ヒロに再会してから初めて兄さんと言われ、巧の動きが止まった。
「兄さんにも聞いてほしいんだ…美優と一緒に。」
「何を?」
「…15年前の真実を。」
「事実?」
「兄さんは母さんのこと恨んでいるでしょ?それは違う。母さんは悪くない。美優だって…美優がカバンを川に落としたからじゃない…美優も本当は自分を責める必要はないんだ…」
「ヒロ…どういうことなの?」
「俺が…美優のカバンを隠したんだ…美優と兄さんには川に流されているのを見たって言ったんだ。」
「…どうして?」
「美優はいっつも兄さんのあとをついて回ってた。俺、美優が好きで…美優を独り占めしたかったんだ…あの日、クリスマスプレゼント交換をしようってなって、お互い大事なものを交換しようってなってたんだ…俺、どうしても美優の大事なものがほしくて…だから…」
巧の脳裏に15年前の出来事が甦る。
「そうだ…美優がカバンがないって言い出して、ヒロが川で見たって言って…そしたら美優が川に飛び込もうとして…俺がッ…」
「そんなッ…」
“チクッ…タクッ…チクッ…タクッ…”
三人が黙り込み、時計の針の音だけが部屋に響き渡る。
時計の針が戻せたら…15年前に戻れたら…
私たち三人はどうなっていたの…?
美優がそっとテーブルに置かれている自分の昔のカバンに手を伸ばし、中を開けてみた。
「これ…」
中には美優、巧、ヒロの三人で写った写真とクリスマスカードが入っていた。
「思い出せないけど…きっとこの頃の私にとっては三人でいることが大事だったんじゃないかなって思う。」
そういって美優は涙を流した。
美優の涙を見て、巧は今までの感情をヒロにぶつける。
“ガシャガシャンッ…”
「巧!!」
ヒロの胸ぐらを掴み、机の上にヒロを乗せ、自分も上に乗っかる。
「こんな写真のために俺…みんなの人生を狂わせたのかな…」
ヒロは目に涙をいっぱい浮かべていた。
「何でお前は俺に直接言ってこなかったんだよ!ほしいなら欲しいって言えよ!」
「兄さんは俺の憧れだったんだ…かなうわけがないんだよ!」
巧は拳を上に振りかざした。
「やめて、巧!」
“ガンッ…”
「うん…愛はバイトがあるから帰るって言って。」
美優は一階に降りてきていた。
「美優…頭が痛くなったりしたら話は一旦中断するから言って。」
「え?」
「美優は記憶の一部をなくしてて、医者に無理に思い出すのはやめるように言われているんだよ。だから俺も母も森さんも黙っていたんだ。」
「……うん。分かった。」
「美優、巧に見覚えない?一緒に昔よく遊んでたんだ。」
「え…一緒にって、年齢同じじゃないよね?」
「…本当の名前は巧じゃない。ルイだよ。」
「……ルイ?」
「美優はルイ君って呼んでた。巧はみゅうって呼んでた…」
「みゅう…実は聞き覚えがあるの、その呼ばれ方…」
「巧は俺の兄さんだよ。」
「え!?…でも二人とも会ったときそんな感じじゃ…ていうか何で離れて暮らしているの?兄弟だってお互い知らなかったの?」
「俺も最初はわかんなかった。15年間離れていたから…巧もあまり記憶がないらしい。でも片目がブルーなのを見て兄さんだって思ってDNA鑑定したんだ。」
「でもヒロは両目とも茶色じゃない…お母さんだって…」
「母親はハーフで片目がブルーなんだ。巧と一緒でコンタクトいれているよ。」
「…だからヒロも外国人みたいなんだね。でも、兄弟って言われてもやっぱりピンとこない。思い出せない…」
ヒロが机の上にボロボロになったピンクの小さいカバンを置く。
「このカバン…このリボン…たしかお母さんが作ってくれたカバン?」
「そうだよ。美優はすごくこのカバン気に入ってた。いつも遊びの時はこれを持ち歩いてた。」
「カバン…」
「美優様にとって大事なものが入っていたらいけないからとおっしゃってました。」
巧と泊まったホテルのスタッフの言っていたことを思い出した。
「たしか大事なものがこのカバンに…」
「そうだよ…このカバンにはクリスマス会で交換するはずだったプレゼントが入っているんだ。お互いの大事なものをプレゼントしようって言っていたんだ。」
“ガチャッ…”
玄関のドアが開く音が聞こえ、美優とヒロは身構えた。
「…誰?」
「美優!いるか!?」
「巧…?」
巧がリビングに息を切らして入ってきた。
「ヒロ…お前、それ…」
巧はテーブルに置かれたバッグが美優のバッグだということに気づいた。
「どうしてそれをお前が…」
「巧?」
「まぁいい。その話は後だ。美優に大事な話がある。」
巧が美優の腕を握って外へ連れ出そうとした。
「待って、兄さん――」
ヒロに再会してから初めて兄さんと言われ、巧の動きが止まった。
「兄さんにも聞いてほしいんだ…美優と一緒に。」
「何を?」
「…15年前の真実を。」
「事実?」
「兄さんは母さんのこと恨んでいるでしょ?それは違う。母さんは悪くない。美優だって…美優がカバンを川に落としたからじゃない…美優も本当は自分を責める必要はないんだ…」
「ヒロ…どういうことなの?」
「俺が…美優のカバンを隠したんだ…美優と兄さんには川に流されているのを見たって言ったんだ。」
「…どうして?」
「美優はいっつも兄さんのあとをついて回ってた。俺、美優が好きで…美優を独り占めしたかったんだ…あの日、クリスマスプレゼント交換をしようってなって、お互い大事なものを交換しようってなってたんだ…俺、どうしても美優の大事なものがほしくて…だから…」
巧の脳裏に15年前の出来事が甦る。
「そうだ…美優がカバンがないって言い出して、ヒロが川で見たって言って…そしたら美優が川に飛び込もうとして…俺がッ…」
「そんなッ…」
“チクッ…タクッ…チクッ…タクッ…”
三人が黙り込み、時計の針の音だけが部屋に響き渡る。
時計の針が戻せたら…15年前に戻れたら…
私たち三人はどうなっていたの…?
美優がそっとテーブルに置かれている自分の昔のカバンに手を伸ばし、中を開けてみた。
「これ…」
中には美優、巧、ヒロの三人で写った写真とクリスマスカードが入っていた。
「思い出せないけど…きっとこの頃の私にとっては三人でいることが大事だったんじゃないかなって思う。」
そういって美優は涙を流した。
美優の涙を見て、巧は今までの感情をヒロにぶつける。
“ガシャガシャンッ…”
「巧!!」
ヒロの胸ぐらを掴み、机の上にヒロを乗せ、自分も上に乗っかる。
「こんな写真のために俺…みんなの人生を狂わせたのかな…」
ヒロは目に涙をいっぱい浮かべていた。
「何でお前は俺に直接言ってこなかったんだよ!ほしいなら欲しいって言えよ!」
「兄さんは俺の憧れだったんだ…かなうわけがないんだよ!」
巧は拳を上に振りかざした。
「やめて、巧!」
“ガンッ…”
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