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12. 乾くんです

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 先生の言祝ことほぎ――魔法を発動させるための言葉――と共に、私の周りに暖かい風の渦が出来やがて、消えました。
 全身すっかり乾いています。
 生徒はまだ免許がなく授業以外での魔法使用を禁止されていて、自分では乾かせなかったのでとても助かりました。

「さて、どうかな~? 乾いてないとことかあるかい?」

 にこにこ微笑みながら先生が聞いてきます。

「いえ、特に不具合はなさそうです。ありがとうございます先生」
「それがお仕事だからねぇ、けどお礼は受け取っとく~」

 いい子いい子と言われながら、頭を撫で撫でされました。
 生徒が小さい子にでも見えているんでしょうか? こういったことを家族以外にされた事がなかったので少し面食めんくらいます。
 先生は手を離すと自分の机に戻る直前、私にだけ聞こえる声でおっしゃいました。

「……対応しきれなくなったら、ちゃんと相談するんだよ~」

 ……完全にわかられています、よね。
 まぁわからない方がおにぶちんでしょう、何せほんとにずぶ濡れでしたから。
 私はぺこりとお辞儀だけし、それを返事としました。
 いよいよとなれば学校を巻き込む気は満々ですよ! 泣き寝入りは選択肢にありませんので。

「それにしても、誰がこんなことをしたんでしょう」

 アインバッハ様の呟く声が聞こえました。
 私には心当たりがありましたが、彼女には関係ない事ですのでそれには返事をせず、聞こえてなかった事にします。

「アインバッハ様、先程はハンカチをありがとうございました。お礼は後日させていただきますね」
「ローゼリアで良いですわ、ジュラルタ様。お礼をされるほどの事はしていない、と思ってますから、気にしないでいただけたら嬉しいですわ」
「そうですか? それではお言葉に甘「あのっ!」

 大仰おおぎょうなお礼ではなく同じようなハンカチでも……と考えながらお返事していたところ、ローゼリア様が少し食い気味になりつつどこかモジモジしながら、声をかけてきました。
 美少女のモジモジは絵になりますね。

「お礼の代わりと、言ってはなんですが……る、ルルーシア様とお呼びしても?」
「良いですよ?」
「!! ありがとうございます。実はその、わたしずっとルルーシア様に憧れていたんですの」

 ローゼリア様は少し頬を染めながら、私に伝えてくれました。
 んでしょうか? 少しの違和感に引っかかりを覚えた時――

 ガラガラピッシャァァァン

「……ルルーシア!!!!」

 ……殿下、ドアが可哀想ですよ。
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