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第12章 二つ目の地域制覇へ

第18話 漁村

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 漁村はすぐに見つかった。河口からそんなに離れてない所に船着場があり、そんなに大きくもない船が何艘も係留させていた。
 港と呼ぶにはお粗末な岩場を利用した桟橋だけのものだったけど、船があるなら漁もやってるだろうと、期待が膨らんだ。
 村は桟橋からすぐの所にあり、家もまぁまぁ建ち並んでいた。ざっと見た感じ、百軒はありそうだった。

 人も疎らに見かけたが、こっちを見つけると蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
 なんで? と思ったけど、まぁ普通は馬に乗った人が空から現れたら逃げたくなるよね。しかも海側から。どこの海神様かとなっちゃうよ。

 それに気付いてすぐに地上に下りたけど、既に時遅し。小さな村だから情報伝達が早い早い。
 「海神様が現れたべー!」「海神様がケルピーさ乗って現れただべー!」「海神様がセイレーンと共に現れただべなー!」
 などの声が、遠くから聞こえて来る。
 海神様って魔物寄りの立ち位置だったの? それとも今そう認定されちゃった?

「エイジって海神様だったの?」
「違うよ! 向こうが勝手に勘違いしてるだけだよ! それを言うならユーだってセイレーン認定されてるじゃないか」
「セイレーンってなんだかいいわね。でも人魚の方がよかったかな」
「どっちも魔物なんだけど」
「でも、どっちも美人で有名よ? まだ見た事は無いんだけど」

 美人で有名だから後は好みの問題ってか。可愛けりゃ何でもありっていう女子のアレか?

「でも、目的地はここだと思うから降りてみようか」
「そうね、水着って売ってるのかなぁ」

 水着は今はどうでもいいと思うんだけど、ユーは目立ったりしても動じなくなったんだな。そりゃSSSランクの冒険者なら目立つのにも慣れるか。
 俺は未だに慣れないというか、目立ちたくない精神が先に来ちゃうんだよね。もう相当目立ってる自覚はあるけど。

 ノワールに乗ったまま村に降り立つ。続いてヴァイスも降りてくる。二頭いるのに片や二人乗りで片や空馬の状態だ。非効率と言われようとも、移動に関しては全く問題ないのだからこれでいいのだ。

「全然お店が見当たらないね」
「そうだね、お店は無いのかも」
「えー! それじゃ水着も売ってないの?」

 水着に拘るね。俺も半分は賛成するけど、まずは村の様子を見てからね。

「水着は俺が用意するから、先に色々と情報を集めようよ」
「ホント!? だったら私はこっちを調べて来る!」
「え? 一緒に行かな……もう行っちゃった。気が早すぎるよ」

 考えたら即行動。いいとは思うんだけど、前より酷くなってんね。これもSSSランクになった事で何か影響受けたのかな。

 ユーとは反対側を調べに村を散策する。話がややこしくなりそうだったから天馬の二頭には村から出ていてもらった。
 だけど、来るところは見られてたから誰も寄って来ない。こちらが近付いていくと逃げるんだ。
 衛星に言えば捕まえてもらえるけど、それじゃ友好的な関係を作れなくなる。そんなのは俺の望むところでは無いので、出来る限り穏便にお付き合いできる関係になりたいと思ってる。
 だけど、現状では難しいかもしれないな。

「エイジー! ゲットしたよー!」
「なにを?」

 ユーの声に振り返ってみると、なにかロープのようなものに縛り上げられている人の塊をユーが引っ張ってこっちに駆けて来る。
 おい! その人の塊って、この漁村の住民じゃないの? 俺は穏便にって思ってるのに、それじゃ穏便にできなくなっちゃうじゃん! 何してくれてんの!

「はい、話すのは任せたよ」
 しかも丸投げー? 無理だよ、皆泣きそうになってんじゃん! こんなんで話なんてできるわけないよ。

 シュルシュルーっと拘束していたロープのようなものがユーの持つ柄に収まる。

 え? それって【ユーの剣】? そんな機能もあったんだ。使いこなしすぎじゃね?
 今はそれよりこっちだ。なんとかしなければ、二度とこの漁村に入れなくなってしまう。来ていきなり出禁なんて勘弁だぞ。

「あのー……うちの連れが大変申し訳ないです。少し話が聞きたかっただけなんですが、何を勘違いしたのかこんな感じになってしまって」

 謝ったのだが、皆怯えてしまって土下座して俺を拝んでる。
 口々に言ってる言葉は「海神様、許してけろー!」だ。
 ダメだ、このままでは海神様認定されてしまう。
 もう逃げる事もせず、その場で土下座して謝り倒す村民達。
 何度も誤解だと言っても聞いてもくれない。
 そのまま一時間以上その状態が続いた。俺は、十分で諦めて見てるだけだったけどね。

 ようやく落ち着いた様子がしたので、再度誤解を解くべく話しかけた。

「僕は冒険者なんです。海神様ではありません。ここに連れて来た女の子も同じく冒険者なんです。わかってもらえましたか!」

 冒険者と聞いて、ようやく聞く耳を持ってくれた。
 ずっと冒険者とは言ってたんだけど、ユーに有無を言わさず拉致されて来たので、殺される恐怖のためさっきまで聞く耳を持ってくれなかったのだ。

 ユーが強引過ぎたからだと、ユーをとっちめてやろうと思ったけど、落ち着いたとはいえ未だに海神様呼ばわりを続けている村民達が怯えているのでそれどころではなかった。
 当のユーは、そんな俺の気持ちなどお構いなしで、海を見ながら何か思いにふけっていた。たぶん、水着のデザインでも考えているのだろう。

「わかりました。でも海神様では無いので、そうですねー…エイジと呼んでいただければいいと思います」

 いつも通りエイ…イージ…エ・イ・ジ・エイージなどの合唱が始まる。が、今回は目的があったので、あえてエイジと名乗った。
 これだけ海神様だと思われてるのなら初めは無理でもすぐにエイジと言えるようになるのではないかと思ったからだ。
 今まで『エイジ』と言えた人達(魔物も含め)は、皆俺のことを敬ったり、商業ギルドの人達のように相手(金の匂いをさせる特定の相手みたいだけど)を敬う人たちだけだ。
 だから、ここの人達なら言えると思ってあえて名乗ったのだ。

 それでも、フィッツバーグの領主様やコーポラルさんのように言えない、というか、言う必要性を感じてない人達もいるんだけどね。

 で、名乗った後が本題だ。未だに合唱を続けている人達はそのままにして話を続けた。

「あなた達が海の魚を食べないと聞いたのですが、本当ですか?」

 ユーによって集められた村民の中で、目の合った男性が答えてくれた。

「すったら事ねぇべ。おらたづは食うべ」
「え!? 食べるんですか? でも、町では食べられないと聞いたんですが」
「あー、そういう話もあんべな。だども、おらたづには誰が海の魚を食うとか関係なかんべ」

 「んだべんだべ」と頷き合う村民達。少し話して緊張が解けてきたようだ。

「確かにそうかもしれないけど、それじゃここは何で生計を立ててるの? 漁村って言ったら漁でしょ」
「当たり前ぇだべ。こんの村だば海の魔物を獲って売ってるんだべ。その時に獲れた魚はおらたづが食うんだべ」

 この村も方言がキツく、イマイチ話がわからなかったが、要約してみると、海の魚はこの村の人以外は食べないとの事だった。
 この村では海の魔物を獲って町へ売ったり、塩の精製で暮らしを立てているのだとか。
 魚については村民は食べるが、村以外の人間は食べないそうだ。
 なぜそうなったのか、諸説あるそうだが、『魚を食べたら腕や腹にポツポツと発疹がが出て、痒みが酷く熱も出て、死んだ人が出た』とか、『貝や海老を食べたら死んだ』とか、そういう話が出回って食べなくなったそうだが、この村民達は食べていたのだ。

 そりゃ普通そうだよね、食べるよね。食べない方がどうかしてると思うよ。
 青魚や貝に海老って普通に処理を間違えれば食中毒になるからね。毒なんだけど、解毒魔法が通用しなかったのかな? 普通の毒状態と違うから解毒魔法もされなかったのかも。

 漁村なんてこの村だけじゃないと思うんだけど、食中毒で死んだのがお偉い貴族様だっから、村を滅ぼしたりしたみたいで、あまり漁村は残ってないのが実情らしい。
 でも、塩は必要なので塩田村はいくつか残っているそうだが。規模も小さく村の数も少ない。その上精製の効率が悪いとなれば、塩が高価なのも肯ける話である。

 そんな理由で海の幸が食べられないなんて納得できない。
 まずは、この村から改革を進めようと心に誓うエイジであった。


―――――――――――――――――――――――――――――

いやぁ~、凄い地震でしたねぇ~。異世界転移キタァ! っと、ちょっと思ってしまいました。

ようやく今日、ガスが来ました。

主要交通機関の最寄り駅もやっと今日から動きましたし、これで平常通りかな?

家中のものがひっくり返ったので、片付けに追われていましたので更新が滞ってすみません。

地震の二日前ぐらいからPCモニタの調子が悪くなり、地震後にキーボード操作ができなくなりました。

結局、モニタとキーボードが悪くなっただけで、PC本体は無事でした。これだけが不幸中の幸いでした。

またボチボチと更新して行きますので、よろしくお願いします。
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