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第二章
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しおりを挟むギャルツ公爵令嬢に連れられて歩く。
「…ところでオルティアナ公爵令嬢。どうしてドレスの裾がボロボロなんですの?」
「えーっと…」
そうですよね。
それ気になりますよね。
普通公爵令嬢のする格好じゃないですものね。
しかもここは王城だし。
「ひ、引っ掛けてしまいましたの…」
「あら。それは…災難でしたわね」
…薄々思っていたんだけどギャルツ公爵令嬢ってチョロくないかな?
良い意味で純粋なのだけど…。
「もう少しで出口ですわ…」
「本当ですか。…どうされました?」
「いぇ…。ねぇヒルユ…」
名前を呼ばれたギャルツ公爵令嬢の専属侍女が彼女の近くへ行く。
「変…よね?」
「はい…どうしたのでしょうか」
変?何がだろう。
リーシェと顔を合わせるも状況がよくわからない。
「あの…ギャルツ公爵令嬢様。どうかされましたか…?」
「え、…。…あのね、おかしいのよ」
「?」
「人が…いなさすぎるの」
「!…言われてみれば」
「ここは仮にも王城の玄関よ…?なのに騎士一人いないだなんておかしいわ…」
騎士ならさっき見た。
私の護衛みたいだったけど。
…まさか王城の騎士があれだけなわけでも無いだろう。
それを考えれば確かに変だ。
それに気づいた瞬間、嫌な予感に駆られる。
「…あ、お嬢様。あそこに騎士が」
「まぁ。しっかりといたのね。良かったわ…」
ヒルユさんが少し遠くにいた二人組の騎士をみつける。
それと同時くらいに、あちらもこっちに気づき、むかってきた。
「オルティアナ公爵令嬢。騎士に帰ることを伝えれば馬車を出してくれるはずよ」
「はい、ありがとうございます」
とりあえず安堵する。
これでようやく家に帰れる。
騎士が声の届く距離まで来た。
声を出そうとして何かの違和感に気づいた。
でも、違和感の正体がわからない。
…何だ。これは。
「……?お嬢様どうかされましたか」
リーシェが不安そうに聞くも、私は固まったまま。
すると、騎士の一人が言葉を発した。
「…高貴な令嬢様がこのような場所で何をなされているのですか」
「何を…?私はいわば時間潰しのようなものですけど」
純粋なギャルツ公爵令嬢は素直に答える。
「時間潰し…?何のですか」
「まぁ。貴方王城騎士なのに何も知らないの?…今日は殿下の婚約者を決める日ですわよ。私は候補の一人ですの。…ま、もう婚約者に確定するでしょうけど」
少し嬉しそうにギャルツ公爵令嬢が短く話す。
「ほぉ…。貴方が殿下の婚約者ですか」
「えぇ」
その返事とともに一人の騎士────いや、男の目の色が変わったのがわかった。
それと同時に私の直感が告げる。
────こいつ、騎士ではない。
「ギャルツ公爵令嬢!」
そう言いながら彼女の襟首を掴んで思い切り後ろに引き寄せる。
それと同時に男の一人が腰の剣を抜き、ギャルツ公爵令嬢に斬りかかろうとした。
「!!?」
「…っ!」
「ほぅ。動きの良い侍女がいるみたいですね」
「お嬢様!」
無言で立っていたもう一人の男が喋る。
色々と整理したいけど一つ言ってもいいかしら?
……侍女じゃないんだけど?
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