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俺は男爵だよ。
しおりを挟む俺は(自称)イケてる男爵(32)だ。
顔はそこそこ整っている……地味だけどな。
細マッチョで足もそこそこ長い。
領地収入もそこそこ。
人望もそこそこ。
優しく美しい妻がいて、元気で可愛い娘もいる。
愛し愛される癒しの家庭持ちだ。
……俺の人生って満たされてるよなぁ。
「お父さまぁ、どうしたの?」
幸せをかみしめて立ち止まる俺を、つぶらな瞳がのぞき込む。
いかん、娘のショッピングのエスコート中だった。
愛娘の前では素敵なパパででいなければな。キリッ。
しかし、俺の娘……可愛いなぁ。
まるで天使だ。いや天使だよな。天使でいいんじゃないか? 間違いなく天使だよ。
まぁ、ヒロインなんだから可愛いのは当たり前かぁ……
………………ん?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……
俺の頭に、なにインプットしてくれちゃってんの? 誰のしわざ?
あれ? あれれれ?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?!
いやいやいやいや……
悪役令嬢の断罪は学園の卒業パーティーだ。
まだ14歳! まだ入学前! まだ余裕! まだまだ余裕! ぜんぜん余裕!
ダメだったら隣国に亡命しよう。
「お父さまったらぁ~」
娘に腕を揺さぶられる。
舌っ足らずの甘えた声に、コテンと首をかしげる愛くるしい仕草。
親バカの俺には身悶えるほど可愛いが……人によっては殺意わくよな~、これ。
可愛いんだけどな~。キュンとくるんだけどな~。お小言なんて言いたくないな~。
「待てぇぇぇっ! 待たぬかーーーっ!!」
ざわついたショッピング通りに、野太い奇声が上がる。
声の主は通行人にぶつかりまくっているらしく、悲鳴や罵声も聞こえてきた。
うるせぇな。
考えがまとまらないじゃないか。
真昼間から酔っ払いか?
「お前たちだーっ! そこの父娘ーーーっ!」
やべっ、こっち来た。
うわっ、目があった。
もしかして、俺たちに用あんの?
誰だよ、おっさん。
いや、どこかで会ったことあるような……あの顔は公爵だったか?
あっ、こっちに手のひら向けるんじゃねぇ!
「死ねぇぇぇーーーっ!!!」
魔法弾ぶっ放しやがりましたよ!
何てことしやがる!
娘を抱えて飛んだから無事だったが、俺じゃなきゃ死んでたぞ!
そう、飛べるんだよ。
男爵は仮の姿で、その実態は『王家の影』だからな。
「おのれっ! 降りてこいっ!」
降りねぇよ。
「男爵令嬢の分際で、公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーーっ!」
……え? 公爵も? 公爵もゲーム情報キャッチしたの?
「逃がさぬぞぉぉぉーーーっ!!」
ぎゃぁぁぁ! 魔法弾ふたたび!
応援ありがとうございます!
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