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第二章 逆行~幼少期〜
閑話 2 容疑者
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「比嘉陽子さんですね。香住姫菜子さん殺害容疑で、逮捕状が出ています。署までご同行をお願い致します。」
「え?」
陽子に逮捕状を確認させ、有無も言わさず手錠をかける刑事。
理由が分からず、あれよあれよとパトロールカーまで連れてこられた陽子は、慎也の隣に立つ祥太郎を見つけた途端、我に返ったかの様に罵声を飛ばす。
「なによ!なんでアンタがそこに居られるのよ!アンタが……アンタのせいでアタシがこんな目にあってるっていうのに、有り得ないでしょ!」
「ほら!早く乗りなさい!」
喚く陽子に対して、女性刑事が車に乗るよう促すが、
「煩いわね!アタシだけ犯人とかおかしいでしょ?アノ男も共犯なのよ!」
と言う陽子の言葉を無視するように、女性刑事は陽子を車に乗せようと試みる。
「だから~、アイツも捕まえろって言ってんのよ!」
「お話は署の方でお聞きします!!」
抵抗する陽子を漸く車に乗せると、自らも乗り込みドアを閉めた。と同時に車が発車し、香住家の門扉をくぐり抜け出ていく。
陽子を乗せた警察車両を見送り、慎也と一緒に屋敷の中へ入ろうとした祥太郎を呼び止めた刑事は、
「では、貴方にもご同行頂きましょうか?冴島祥太郎さん。」
と言った。
一瞬ギクリとした祥太郎だったが直ぐに冷静さを取り戻し、
「僕は姫菜子の婚約者ですよ?突然婚約者を失って悲しみの中にいる僕が、何故疑われているんです?それに当日のアリバイは証明されていますよね?」
「えぇ。ですがどうしても腑に落ちないと言うか納得出来ない事がありましてね。」
「それはどういう事でしょう。」
「兎に角ご同行願えませんかね?」
「これは任意ですか?任意ならお断り出来ますよね?」
「そうですね。確かにこれは任意同行です。」
「では、お断り致します。」
「そうですか……では、今日はこれで。」
そう言って刑事は屋敷の敷地から出ていった。
署に戻る車の中で、後輩刑事が運転しながら先輩刑事に問う。
「良いんですか?芦川さん。」
「良いわけねぇだろう?ただ…今は証拠も何も十分じゃねぇからな。任意で引っ張って来ようと思ったが、あちらさんもそう簡単に尻尾は出さねぇって事だろう。まぁいい。あの女が吐くだろうさ。【急いては事を仕損じる】って言うからな。」
ニヤリと不敵に笑う芦川刑事の顔をチラリと見た、芦川の後輩鏑木刑事は、(芦川さんのあの顔は、まだ何か考えてる顔だ。【蛇に睨まれた蛙】だったと、冴島が分かる日も近いだろうな。まぁお手並み拝見といきますか。)と考えていた。
一方祥太郎は、陽子に「アンタも共犯」と言われたにもかかわらず、何も言わない慎也に恐怖を感じていた。
もしかしたら、何か警察から聞かされているのか?
だとしたら、慎也も消さないと俺がヤバくなるのかもしれない。
だが、今慎也を消すと益々俺が疑われる事になるだろう。
色々と考えを巡らせていると、
「顔色が悪い様だが?それは、アノ女が言っていた事が本当だったからかな?祥太郎君。」
いつの間にか、屋敷の中に入っていたはずの慎也が執事の三枝と二人、祥太郎の目の間に立っていた。
「お、お義父さん?」
「キミに『お義父さん』と呼ばれる理由はもう無いだろう。私の姫はもう妻の元へ強制的に旅立たされてしまったのだから。犯人達の陰謀によってね。」
祥太郎は、慎也の低く冷たい声に震えた。
長く香住家と関わってきたが、慎也がそんな声を出す事は一度もなかったからだ。
「婚約は解消。と言うか【白紙】だ。冴島さんにはその様に伝えてある。キミと会う事も…いや。二度と顔を見せないで欲しい!さぁ、帰りたまえ。」
踵を返し慎也が再び屋敷の中に入っていった。
「お車を呼んでございます。道中お気を付けてお帰り下さいませ。」
三枝に半ば強制的にタクシーに乗せられた祥太郎は、運転手に冴島家の住所を伝えている三枝をボーッと見つめていた。
走り出したくるまのなかで実家に居場所など無い祥太郎は、これから起こるであろう事を思い、呆然としていた。
「え?」
陽子に逮捕状を確認させ、有無も言わさず手錠をかける刑事。
理由が分からず、あれよあれよとパトロールカーまで連れてこられた陽子は、慎也の隣に立つ祥太郎を見つけた途端、我に返ったかの様に罵声を飛ばす。
「なによ!なんでアンタがそこに居られるのよ!アンタが……アンタのせいでアタシがこんな目にあってるっていうのに、有り得ないでしょ!」
「ほら!早く乗りなさい!」
喚く陽子に対して、女性刑事が車に乗るよう促すが、
「煩いわね!アタシだけ犯人とかおかしいでしょ?アノ男も共犯なのよ!」
と言う陽子の言葉を無視するように、女性刑事は陽子を車に乗せようと試みる。
「だから~、アイツも捕まえろって言ってんのよ!」
「お話は署の方でお聞きします!!」
抵抗する陽子を漸く車に乗せると、自らも乗り込みドアを閉めた。と同時に車が発車し、香住家の門扉をくぐり抜け出ていく。
陽子を乗せた警察車両を見送り、慎也と一緒に屋敷の中へ入ろうとした祥太郎を呼び止めた刑事は、
「では、貴方にもご同行頂きましょうか?冴島祥太郎さん。」
と言った。
一瞬ギクリとした祥太郎だったが直ぐに冷静さを取り戻し、
「僕は姫菜子の婚約者ですよ?突然婚約者を失って悲しみの中にいる僕が、何故疑われているんです?それに当日のアリバイは証明されていますよね?」
「えぇ。ですがどうしても腑に落ちないと言うか納得出来ない事がありましてね。」
「それはどういう事でしょう。」
「兎に角ご同行願えませんかね?」
「これは任意ですか?任意ならお断り出来ますよね?」
「そうですね。確かにこれは任意同行です。」
「では、お断り致します。」
「そうですか……では、今日はこれで。」
そう言って刑事は屋敷の敷地から出ていった。
署に戻る車の中で、後輩刑事が運転しながら先輩刑事に問う。
「良いんですか?芦川さん。」
「良いわけねぇだろう?ただ…今は証拠も何も十分じゃねぇからな。任意で引っ張って来ようと思ったが、あちらさんもそう簡単に尻尾は出さねぇって事だろう。まぁいい。あの女が吐くだろうさ。【急いては事を仕損じる】って言うからな。」
ニヤリと不敵に笑う芦川刑事の顔をチラリと見た、芦川の後輩鏑木刑事は、(芦川さんのあの顔は、まだ何か考えてる顔だ。【蛇に睨まれた蛙】だったと、冴島が分かる日も近いだろうな。まぁお手並み拝見といきますか。)と考えていた。
一方祥太郎は、陽子に「アンタも共犯」と言われたにもかかわらず、何も言わない慎也に恐怖を感じていた。
もしかしたら、何か警察から聞かされているのか?
だとしたら、慎也も消さないと俺がヤバくなるのかもしれない。
だが、今慎也を消すと益々俺が疑われる事になるだろう。
色々と考えを巡らせていると、
「顔色が悪い様だが?それは、アノ女が言っていた事が本当だったからかな?祥太郎君。」
いつの間にか、屋敷の中に入っていたはずの慎也が執事の三枝と二人、祥太郎の目の間に立っていた。
「お、お義父さん?」
「キミに『お義父さん』と呼ばれる理由はもう無いだろう。私の姫はもう妻の元へ強制的に旅立たされてしまったのだから。犯人達の陰謀によってね。」
祥太郎は、慎也の低く冷たい声に震えた。
長く香住家と関わってきたが、慎也がそんな声を出す事は一度もなかったからだ。
「婚約は解消。と言うか【白紙】だ。冴島さんにはその様に伝えてある。キミと会う事も…いや。二度と顔を見せないで欲しい!さぁ、帰りたまえ。」
踵を返し慎也が再び屋敷の中に入っていった。
「お車を呼んでございます。道中お気を付けてお帰り下さいませ。」
三枝に半ば強制的にタクシーに乗せられた祥太郎は、運転手に冴島家の住所を伝えている三枝をボーッと見つめていた。
走り出したくるまのなかで実家に居場所など無い祥太郎は、これから起こるであろう事を思い、呆然としていた。
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