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92【本編最終話】言葉にしたらアイシテル
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「シルファはさ~ 私と違って誰にでも丁寧な対応するしさ」
――イヤイヤイヤイヤ、君以外の生き物全般に鉄面皮の無表情男ですけどッ?! と突っ込んでくれる人が残念な事にココには居ない――
「学園でも貴族の女子にもかなりモテてたって噂だったし。見たこと無かったけど」
――君の入学時点で全員処罰されてたから目にする機会はなかったのよ~! これも誰も教えてくれない――
「・・・」
「しかも卒業パーティーはお父様が邪魔したせいでエスコートしてもらえなくなっちゃってさ」
――いや、それは君の父親の我が儘ですよね? シルファ王子のせいじゃないよね?――
「・・・」
「入場する時にリーナさんをエスコートしてたの見て実はちょっとショックだったのよね。だからスタンピードの知らせでその場から直ぐに領に帰れたのは私にとってはラッキーだったの」
――ソレハ大失敗デシタネ。殿下――
「・・・・ソフィア。ちょっと待ってろ。今からポチに過去に連れて行ってもらって、リーナを屠って来る」
「えッ? ちょちょちょちょっと待ってッ!」
急にテラスから部屋に戻ろうとする彼の腕に慌てて飛び付くソフィア。
「ポチをそんなに簡単にホイホイ使わないでってばッ!」
――ちがうそうじゃないよね――
「じゃあそこに寝てるリーナをひと思いに・・・」
――テラスの向こう側の部屋でレヴの上に寝転がってアジェスと仲良くイビキをかく里奈を見る目がメッチャ怖いッ!――
「こらこらこらッ! だからそうじゃないってばッ!!」
シルファの頬を思わず両手で押さえて自分の方を無理やり向ける。
――何だこのツルツルお肌? 陶器肌ってこういう事? あー、違う違う! 里奈の命が風前の灯だから頑張れ――
「そうじゃなくって、あの時嫌だって思って、その場から逃げ出したくなる位にはシルファのことが好きだったってことなの!」
「ん?」
顔を手で挟まれたまま首を傾げるシルファ王子。
「だからね、自分の『嫌』にすぐ蓋をしちゃうのよ。こうね、胸のあたりにモヤッとしたら気の所為だって無視したり、キュって痛くなっても、気が付かなかったフリをしちゃうのよ。我慢してるつもりがなくても」
「・・・・」
「ああいうのって『気持ちに体が反応してる』って事を1年前の事件以来、やっと分かってきたのよ」
「え。さっきの『箱庭』での事か?」
ソフィアはゆっくり頷いて、シルファを見上げる。
「要するにさ、ヤキモチを妬いたんだってば」
ソフィアはそう言いながら迷子の子供の様な表情をした。
「嫌?」
最初は呆然としていたが、だんだんニンマリとした笑顔になる国民的アイドルの王太子。
「いいや」
「シルファだけじゃなくて、私も言葉で伝えてなかったって気がついたの。婚約者ってのに胡座をかいてたのよね。ごめんなさい」
ペコリと頭を下げようとしたソフィアの顎を片手でクイッと持ち上げて
「俺もお前がずっと好きだった。今はもっと好きで、もっとドロドロに執着してて、お前を失ったら世界中を壊して回れるくらいには愛してる」
そう言いながら口角が上がった途端に、ソフィアの唇にフワリと彼の唇が重なった。
「何か不穏なセリフが混ざってなかった?」
唇が少し離れた隙に眉を顰めるソフィアに。
「いいや。お前の不安の種なんかよりずっと平和なセリフだ」
そう言って、もう1度クスクス笑いながらキスをする。
「愛してるわシルファ」
「ああ。俺もそれ以上に愛してる」
お互いの唇と口内の温度が蕩けて同じになるまで深いキスを続ける2人を。
静かに祝福する星達が美しく瞬いていたらしい――
~fin~
『転生辺境伯令嬢は可憐な魔法少女を目指しますッ~心ゆくまで気の済むまで殴っても宜しいでしょうか? 勿論物理で~』
by.hazuki.mikado.
2023.9.16.sat.
――イヤイヤイヤイヤ、君以外の生き物全般に鉄面皮の無表情男ですけどッ?! と突っ込んでくれる人が残念な事にココには居ない――
「学園でも貴族の女子にもかなりモテてたって噂だったし。見たこと無かったけど」
――君の入学時点で全員処罰されてたから目にする機会はなかったのよ~! これも誰も教えてくれない――
「・・・」
「しかも卒業パーティーはお父様が邪魔したせいでエスコートしてもらえなくなっちゃってさ」
――いや、それは君の父親の我が儘ですよね? シルファ王子のせいじゃないよね?――
「・・・」
「入場する時にリーナさんをエスコートしてたの見て実はちょっとショックだったのよね。だからスタンピードの知らせでその場から直ぐに領に帰れたのは私にとってはラッキーだったの」
――ソレハ大失敗デシタネ。殿下――
「・・・・ソフィア。ちょっと待ってろ。今からポチに過去に連れて行ってもらって、リーナを屠って来る」
「えッ? ちょちょちょちょっと待ってッ!」
急にテラスから部屋に戻ろうとする彼の腕に慌てて飛び付くソフィア。
「ポチをそんなに簡単にホイホイ使わないでってばッ!」
――ちがうそうじゃないよね――
「じゃあそこに寝てるリーナをひと思いに・・・」
――テラスの向こう側の部屋でレヴの上に寝転がってアジェスと仲良くイビキをかく里奈を見る目がメッチャ怖いッ!――
「こらこらこらッ! だからそうじゃないってばッ!!」
シルファの頬を思わず両手で押さえて自分の方を無理やり向ける。
――何だこのツルツルお肌? 陶器肌ってこういう事? あー、違う違う! 里奈の命が風前の灯だから頑張れ――
「そうじゃなくって、あの時嫌だって思って、その場から逃げ出したくなる位にはシルファのことが好きだったってことなの!」
「ん?」
顔を手で挟まれたまま首を傾げるシルファ王子。
「だからね、自分の『嫌』にすぐ蓋をしちゃうのよ。こうね、胸のあたりにモヤッとしたら気の所為だって無視したり、キュって痛くなっても、気が付かなかったフリをしちゃうのよ。我慢してるつもりがなくても」
「・・・・」
「ああいうのって『気持ちに体が反応してる』って事を1年前の事件以来、やっと分かってきたのよ」
「え。さっきの『箱庭』での事か?」
ソフィアはゆっくり頷いて、シルファを見上げる。
「要するにさ、ヤキモチを妬いたんだってば」
ソフィアはそう言いながら迷子の子供の様な表情をした。
「嫌?」
最初は呆然としていたが、だんだんニンマリとした笑顔になる国民的アイドルの王太子。
「いいや」
「シルファだけじゃなくて、私も言葉で伝えてなかったって気がついたの。婚約者ってのに胡座をかいてたのよね。ごめんなさい」
ペコリと頭を下げようとしたソフィアの顎を片手でクイッと持ち上げて
「俺もお前がずっと好きだった。今はもっと好きで、もっとドロドロに執着してて、お前を失ったら世界中を壊して回れるくらいには愛してる」
そう言いながら口角が上がった途端に、ソフィアの唇にフワリと彼の唇が重なった。
「何か不穏なセリフが混ざってなかった?」
唇が少し離れた隙に眉を顰めるソフィアに。
「いいや。お前の不安の種なんかよりずっと平和なセリフだ」
そう言って、もう1度クスクス笑いながらキスをする。
「愛してるわシルファ」
「ああ。俺もそれ以上に愛してる」
お互いの唇と口内の温度が蕩けて同じになるまで深いキスを続ける2人を。
静かに祝福する星達が美しく瞬いていたらしい――
~fin~
『転生辺境伯令嬢は可憐な魔法少女を目指しますッ~心ゆくまで気の済むまで殴っても宜しいでしょうか? 勿論物理で~』
by.hazuki.mikado.
2023.9.16.sat.
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