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〜オマケ後日談〜

転生ヒロイン、ゴブリンと遭遇する

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 ゴブリンはグレーの肌の『小鬼族』と呼ばれる魔物で男しか存在しない。

 自分達で子供を産めない彼らは繁殖の為に人族やエルフ族、ドワーフ族の女性を専らもっぱら攫って繁殖する。
 その為目撃報告があれば国もギルドも関係なく駆除に馳せ参じるが、村を形成するほど多くのゴブリンが見つかった場合はゴブリンキング、ゴブリン騎士ナイト、ゴブリン戦士ウォーリアなどという厄介な特殊個体が産まれるため、スタンピード並みに警戒度が上がる。

 滅多なことではそこまで大きな集落は近年見つかることは無かったが、今回ばかりは勝手が違った――


 「洞窟の中に村を形成してたんですか・・・ 厄介ですね」

 「拐われた女性の安否も確かめないと・・・ 魔術師は索敵で村の中を探れ」


 小隊長の指示で4人の魔術師が索敵サーチ魔法の小さな光を村に向かって放つ――勿論リーナもその中の1人だ。


 「母体となる苗床は村を形成する程子供を生んでたらもう助からん。既に人としての意識もないだろう。あいつら1ヶ月もしないうちに産まれちまう。苗床にされちまった女は確実にアイツラの毒で気が狂うからな」


 団長がコメカミを抑えて唸る横で、もう1人の魔術師の男性が魔鳥を王都の騎士団と辺境伯兵団、そして冒険者ギルドに飛ばした。


 「何処から女性を攫ってきたんでしょう?」

 「恐らくだが人族じゃないだろう。今の陛下の代になって戸籍登録ってヤツのお陰で庶民も貴族も関係なく人1人が行方不明になるだけで大騒ぎになるからな」

 「じゃあ、ナイトはいませんね」



 この世界では女性の種族によって特殊個体が決まる。人族は騎士、ドワーフ族は戦士、エルフ族なら魔法使いメイジだ。


 溜息を思わずつく小隊長達。


 2小隊合同で現在40人編成の中隊という状態だが、魔術師は1小隊に2人。

 現在魔術師は4人で36人は騎士達だ。



 「魔法にも物理にもどちらかというと弱いゴブリンだが特殊個体がいないことを祈るしか無いだろう」

 「応援を待ちますか?」


 小隊長の言葉に団長も流石に眉をしかめる。

 眼の前の村は掘っ建て小屋を幾つも形成しており規模は大きく、洞窟の壁際に身を潜めて隠れて確認している場所から見える限り村の中を彷徨く個体だけでも4、50人は軽く超えそうだ。






 「流石に応援を待つか・・・ 1度撤退するぞ転移魔法を使えるヤツはそのまま展開しろ。その他は転移魔法のスクロールの使用を許可し1度砦に戻る・・・・ オイッ!」


 団長が急に慌てて洞窟の入口を指さした。
 振り返ると6人程のゴブリンが急に現れ、人間に驚いて騒ぎ出した。

 1人だけネックレスを首から下げた背の高い色白のゴブリンが混じっていた――ゴブリン魔術師メイジだ――


 「間違いない、エルフ族が苗床だな」


 小隊長の声が絶望的に洞窟に響いた。


 「魔法陣で転移して来やがった」


 ゴブリンは男は殺すが女は生け捕りにする。

 この中隊に在籍する女性はリナだけなので標的が彼女であるのは間違いない。

 彼女を見つけて気味の悪い下卑た顔で笑ったゴブリンメイジが目に映り、リナは血の気が引いたのを感じた――



×××



 「え、北の森の洞窟にゴブリンの村?」


 王太子妃の執務室でお茶を優雅に飲んでいたソフィアが驚いて吹いた。


 「ああ。どうやら2個小隊では太刀打ちできん人数らしい」

 「北の森は里奈さんがいる砦の管轄よ? 何で分からなかったのかしら?」

 「恐らくだが気配を消す結界を張れるゴブリンメイジが混ざってるからだろう。他には考えられんからな」


 話しながら部屋をすぐ出て、騎士団長の執務室に向かってドレスをたくし上げて走ろうとしてシルファにすぐ止められた。


 「転移したほうが早い。騎士団全員を北の森に跳ばすぞ」


 
×××


 
 「王領区の北の砦に急げ!」


 辺境伯兵団に激が飛ぶ。


 「里奈がいるのに分かんなかったのか?」

 『ふん。『魔法使い』でモ混じっテいたのダロウな』

 「面倒くさそうだなエルフが苗床か」

 『エルフ族は閉鎖的だからナ。人族やドワーフ族と連携シタがらん。仕方ナイ』



 レヴを肩に乗せて兵団の最後尾に着くと腕組をする。

 肩には愛弓を担ぐアジェス。


 「まあ、行ってみっか」






Ages・Raid



×××



 『北の森にゴブリンの村が出来てたらしい第2警戒体制だ。冒険者に出動要請を送れ。特殊個体の可能性を考えてクラスS~Aに固定だ』



 冒険者ギルドの執務室で魔鳥からの知らせを開いた途端にギルド長が手元の拡声機のマイクを持つと、館内放送用のスピーカーから怒鳴り声が響く。

 一瞬静まり返ったギルドの建物がハチの巣を突付いたような大騒ぎになった――


 『出払ってないS及びAクラスに至急連絡を取れッ!』


 拡声器を手放すと壁に飾ってあった大剣を睨みながら椅子に『ドン』と音をさせて座るとギルド長は押し黙る。


 「何で村が・・・ 結界か!」


 『ゴブリンメイジの可能性がある。反射の護符を持つように通達しろッ!!』


 階下の騒ぎが更に大きくなった――



×××



 「北の森の砦って、リナさんがいる所ですよね・・・」


 パーティーメンバーの中の1人が出発の準備の済んだスタンの背中に声を掛ける。

 彼はこれから北の砦に転移魔法で跳ぶのだ。


 「ああ。王領区の北の砦の勤務だ」


 「俺等まだBランクだから行けねえから・・・ せめてAなら」


 パーティーの内2人はまだAランクにはなっていない。


 参加するのはスタンとレオナルドだけだ。

 「しょうがねえよ。じゃあ行ってくるな」



 レオナルドは軽く手を振り、スタンは苦笑いをするが残る2人は不安そうだ。


 彼は昨日会ったばかりのリナの顔を思い出しながら転移魔法を展開させた――


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