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10.一致しない言動
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「……私をどうするつもりなんですか?」
「先程言っていた通りです。私はあなたに話を聞いてもらいたいというだけです。危害を加えるつもりはないのです」
「危害はもう加えているではありませんか」
喋れるようになった私は、男性に話しかけてみることにした。
彼の口調からは、不思議と悪意のようなものは伝わってこない。このような手荒な真似をしているというのに、紳士的だ。
それが私にとっては、とても奇妙なことだった。彼の意図と行動の意味が、まったくわからない。
「それについては申し訳なく思っています。しかしながら、声をあげられると厄介ですからね」
「それはやはり、暴漢の思考回路ではありませんか」
「人に知られてはならない話なのです。だから、こんな夜分に訪ねざるを得なかった……あなたには、四六時中メイドがついていたでしょう」
男性の説明に、私は少し考えることになった。
彼が言っていることに、特に矛盾があるという訳ではない。人に絶対に聞かれたくない話をするならば、確かにこのタイミングしかないだろう。
そしてこのタイミングで普通に訪ねても、私の対応は追い返すか叫びをあげるかのどちらかになる。故に手荒な真似をした。やっていることは滅茶苦茶ではあるが、筋は通っている。
「……わかりました。とりあえずあなたの話を信用します。どの道今の私は、あなたの要求を受け入れるしかない立場ですしね。それで、あなたは一体何の話をしたいんですか?」
「あなたの身に危険が迫っているのです」
「危険?」
男性の話をとりあえず聞いてみることにした私は、彼の言葉に早速疑問を抱くことになった。
私に危険が迫っている。それは、確かに速やかに伝えなければならないことだ。
しかしそれが、人に聞かれてはならないということが気になる。それが意味していることは、私を狙っている人が周囲にいるというになるからだ。
「……まさか」
「何か心当たりがあるのですか?」
「危険があったという訳ではありません。ただ、心のどこかでずっと引っかかっていることがあって……」
そこで私は、ベルナック山で意識を失う前に聞いた言葉を思い出していた。
あの時、アナキシス様は奇妙なことを言っていたような気がする。妖術使いが残っていてよかった。その言葉は、考えてみればおかしな言葉だ。
「アナキシス様は、妖術使いが残っていてよかったと口にした……それはなんだか、奇妙な表現でした。でも、もしも彼が妖術使いを裏で始末しているとしたら、その言葉の筋が通ってしまう。彼は、まさか……」
「流石ですね、既に疑念を抱いていたとは……」
「あっ、あなたはあの時の……」
同時に私は、あることも思い出していた。
この男性の声を、どこで聞いたのか。それも、意識を失う直前のことだったのだ。あの時私を支えて声をかけてくれた兵士、私を取り押さえているのはあの時の兵士で間違いない。
「先程言っていた通りです。私はあなたに話を聞いてもらいたいというだけです。危害を加えるつもりはないのです」
「危害はもう加えているではありませんか」
喋れるようになった私は、男性に話しかけてみることにした。
彼の口調からは、不思議と悪意のようなものは伝わってこない。このような手荒な真似をしているというのに、紳士的だ。
それが私にとっては、とても奇妙なことだった。彼の意図と行動の意味が、まったくわからない。
「それについては申し訳なく思っています。しかしながら、声をあげられると厄介ですからね」
「それはやはり、暴漢の思考回路ではありませんか」
「人に知られてはならない話なのです。だから、こんな夜分に訪ねざるを得なかった……あなたには、四六時中メイドがついていたでしょう」
男性の説明に、私は少し考えることになった。
彼が言っていることに、特に矛盾があるという訳ではない。人に絶対に聞かれたくない話をするならば、確かにこのタイミングしかないだろう。
そしてこのタイミングで普通に訪ねても、私の対応は追い返すか叫びをあげるかのどちらかになる。故に手荒な真似をした。やっていることは滅茶苦茶ではあるが、筋は通っている。
「……わかりました。とりあえずあなたの話を信用します。どの道今の私は、あなたの要求を受け入れるしかない立場ですしね。それで、あなたは一体何の話をしたいんですか?」
「あなたの身に危険が迫っているのです」
「危険?」
男性の話をとりあえず聞いてみることにした私は、彼の言葉に早速疑問を抱くことになった。
私に危険が迫っている。それは、確かに速やかに伝えなければならないことだ。
しかしそれが、人に聞かれてはならないということが気になる。それが意味していることは、私を狙っている人が周囲にいるというになるからだ。
「……まさか」
「何か心当たりがあるのですか?」
「危険があったという訳ではありません。ただ、心のどこかでずっと引っかかっていることがあって……」
そこで私は、ベルナック山で意識を失う前に聞いた言葉を思い出していた。
あの時、アナキシス様は奇妙なことを言っていたような気がする。妖術使いが残っていてよかった。その言葉は、考えてみればおかしな言葉だ。
「アナキシス様は、妖術使いが残っていてよかったと口にした……それはなんだか、奇妙な表現でした。でも、もしも彼が妖術使いを裏で始末しているとしたら、その言葉の筋が通ってしまう。彼は、まさか……」
「流石ですね、既に疑念を抱いていたとは……」
「あっ、あなたはあの時の……」
同時に私は、あることも思い出していた。
この男性の声を、どこで聞いたのか。それも、意識を失う直前のことだったのだ。あの時私を支えて声をかけてくれた兵士、私を取り押さえているのはあの時の兵士で間違いない。
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