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11.訪問者の正体

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「わかってしまったなら最早素性を隠す意味もありませんね。僕の名前はユーラス、このフェンデラット王国で兵士をやっている者です」
「兵士……確かあなたは、特別な地位などではなかったはずですよね? それなのに、どうして明らかな秘密を知っているのですか?」
「それに関しては、僕の出自からお話しする必要がありますね……」

 ユーラスと名乗った兵士は、私の体を拘束する力を緩めていた。
 最早、それに意味がないと悟ったのだろう。それはその通りだ。私は最早、抵抗したり人を呼ぼうとは思っていない。

「少し失礼します」
「あっ……」

 拘束を解いた彼は、私の体の様々な部分を押さえ始めた。
 そこが恐らく、妖術を封じていたツボなのだろう。大きな声を出せなくなったツボも含めて、彼は元に戻してくれるつもりらしい。

「僕は、かつてこの国を救ったユーランの妹の子孫です」
「ユーランの妹?」
「ユーランがどうなったのか、ラーナさんはご存知ですか?」
「え? 瘴気を払った後は村に戻って、平和に暮らしたとしか知りませんが……」
「公的にはそういうことになっています。しかし真実は違うのです。僕の家系には、歴史の裏にあった事実が伝わっている」

 ユーラスさんの言葉に、私は息を呑んだ。
 なんというか、嫌な予感がする。もしかしたらこの国は、私が思っていたよりもずっと薄暗い歴史を歩んできたのかもしれない。

「ユーランは当時の国王バルキナシスによって葬られたのです。強力な妖術を使える彼女を、国王やその家臣は邪魔に思った。自分達の地位が脅かされることを危惧して、ユーランを秘密裏に殺害したのです」
「そ、そんな……」
「それからバルキナシスは、いいえ彼だけではなくその家系である王家は、妖術を使える者を見つけては始末していきました。彼らは、妖術を恐れているのです」
「だから、残っていたということなのですか……」

 ユーラスさんの説明によって、私はアナキシス様がどうしてあのような表現をしていたのかを改めて理解した。
 自らの手によって妖術使いを葬ってきた彼からすれば、私は確かに残っていた存在なのだろう。それはなんとも、恐ろしい事実である。
 そんな彼の毒牙は、ことが解決したため私にも向けられるということなのだろう。状況が見えてきた。どうやら私は、本当に危機的状況であるようだ。

「ユーラスさん、知らせてくれてありがとうございます。それと、先程はすみませんでした。私は、あなたに随分と失礼な態度をしてしまいました」
「いえ、それは仕方ないことです。そんなことよりも、今はあなたの安全を確保することを優先させなければなりません。このままではあなたは、この国によって葬られてしまう」

 ユーラスさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 こうして私は、自分の身に降りかかっている危機について知ったのだった。
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