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4.疑念を抱いて

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 実家に戻ってから、王城で亡くなったメイドさんのことを、私は自分なりに調べてみた。
 といっても、公爵家の屋敷からわかることは少なかった。わかったのは、表面上の事柄だけである。

 王城で、平民のメイドが事故で亡くなった。それは不幸な事故として、処理されているようだ。
 正式に発表もあったらしく、その事実が隠されているという訳ではない。ただその裏にイルヴァン様がいる可能性があることなどは、当然いくら調べても出てこない。

「でも、イルヴァン様が関わっているということは間違いないと思うわ。使用人達の様子、本人の様子、それにウルド様の様子、全てがそれを示しているもの」
「なるほど……まあ、姉上がそういうならそうなのでしょうね」

 私は、イルヴァン様が怪しいということを弟のミラーグに打ち明けていた。
 お父様やお母様に伝えると問題になるが、ミラーグにならば気軽に話せた。気心の知れた弟にだけは、その事実を伝えられたのである。

「もしかしたら、ウルド様もそれに関わっている可能性もあるけれど……」
「姉上の印象では、彼はどちらかというと味方なのでしょう?」
「ええ、私のことを心配してくれているように感じたわ」
「それならとりあえず、イルヴァン様が単独で関わったと考えておけばいいでしょう。問題となるのは、その関わり方ですが……」

 ミラーグの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 イルヴァン様が事件にどう関わっていたのか、それはとても重要な部分だ。
 もっとも、本人や周囲の人々の態度からそれも予想がついている。

「恐らく、イルヴァン様がメイドさんを始末したのだと思うわ。メイドさんと彼がどのように関わっているのかはわからないけれど、多分彼女が、イルヴァン様は邪魔だったのよ」
「やはり、そういう話になってきますか……」
「イルヴァン様はどうやら、私が考えていたよりもとんでもない人物だったのかもしれないわ」

 イルヴァン様は、表面通りの紳士的な人物ではないのだろう。彼の内面には、もっと邪悪な意思が渦巻いている。
 その意思について、私はしっかりと考えていかなければならないだろう。

「言っておきますが姉上、僕もウルド様と考えは同じです。余計なことをして、イルヴァン様を刺激するべきではありません」
「ええ、それはもちろん心得ているわよ。わざわざ危険なことをするつもりはないわ。ただ、頃合いを見て、お父様やお母様に相談した方がいいでしょうね……」
「ああ、そうだね。これは僕達だけで解決できる問題ではない。これからも話し合って、色々と考えていくとしよう」

 こうして私は、イルヴァン様との婚約について考え直すことになったのだった。
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