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8.手紙の効果
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私は、馬車に乗っていた。
森でスウェンド王国の騎士団達と会った結果、こうなっているのだ。
「さて、事情を説明するべきでしょうね」
「ええ、お願いできますか?」
「もちろんです。そのために、こうして同乗させていただいているのですから」
私の馬車には、森で会った騎士の内一人が乗っていた。
彼には、何が起こっているのかを説明してもらうつもりだ。私も、色々と知っておきたいのである。
「とはいえ、事情はとても単純なものです。発端は、あなたが出した手紙でした。トルフェニオ・パストマン教授は、あなたからもらった手紙の暗号を読み解き、アグナヴァン王子殿下に手紙を出したのです」
「手紙は、先生にきちんと伝わっていたのですね……安心しました」
「教授も驚いていたそうです。まさか、遊びで教えた暗号がこんな所で生かされるとは思っていなかった。そう言っていたようです」
「ええ、私も思っていませんでした」
トルフェニオ・パストマン教授は、私の家庭教師だった人物だ。
彼からは、色々なことを学んだのだが、娯楽として暗号を教えてもらっていたのである。
その手紙によって、私は自分が危機的状況であることとアグナヴァン様にその旨を連絡して欲しいということを伝えた。その意図は、きちんと伝わっていたようだ。
それは、先生が作り出したものであるため、他の人にはわからない。それなら検閲も突破できると思い、おぼろげな記憶を頼りにそれを用いたのである。
「それによって、アグナヴァン王子殿下はあなたを助け出す計画を立てたのです」
「それで、あなた達は私を探していたのですね……」
「ええ……あなたの意図としては、スウェンド王国への亡命の許可を得たかったということなのでしょうが、殿下はあなたの存在が自国の利益に繋がると思い、そこまで計画を立てたようです」
「自国の利益……なるほど、そういうことだったのですね」
騎士の言葉で、私は理解した。
確かに、私の存在は、スウェンド王国にとって有益なのかもしれない。
よく考えてみれば、私はドルマニア王国の機密情報の塊だ。優れた魔術師であるだけでなく、隣国の秘密も持っているとなると、助け出すという選択を取るのはそれ程不思議なものではないのかもしれない。
「もっとも、殿下の個人的な気持ちもあったようですが……」
「個人的な気持ち?」
「ええ、王子殿下はあなたが無罪であると思っているようです」
「アグナヴァン様が……」
アグナヴァン様の思いに、私は少し感動していた。
彼は以前から、私の能力を高く評価してくれていた。ドルマニア王国の聖女として何度か会い、その度に賞賛してくれたものだ。
しかし、まさかそこまで信用してくれているとは思っていなかった。ドルマニア王国ではほとんど信用されなかったため、涙が出てきそうだ。
何はともあれ、これで私の安全は保障されたということになる。
もっと大変だと思っていたが、案外スムーズにことが進んだのは、嬉しい誤算だ。
こうして、私はスウェンド王国に保護されることになったのだった。
森でスウェンド王国の騎士団達と会った結果、こうなっているのだ。
「さて、事情を説明するべきでしょうね」
「ええ、お願いできますか?」
「もちろんです。そのために、こうして同乗させていただいているのですから」
私の馬車には、森で会った騎士の内一人が乗っていた。
彼には、何が起こっているのかを説明してもらうつもりだ。私も、色々と知っておきたいのである。
「とはいえ、事情はとても単純なものです。発端は、あなたが出した手紙でした。トルフェニオ・パストマン教授は、あなたからもらった手紙の暗号を読み解き、アグナヴァン王子殿下に手紙を出したのです」
「手紙は、先生にきちんと伝わっていたのですね……安心しました」
「教授も驚いていたそうです。まさか、遊びで教えた暗号がこんな所で生かされるとは思っていなかった。そう言っていたようです」
「ええ、私も思っていませんでした」
トルフェニオ・パストマン教授は、私の家庭教師だった人物だ。
彼からは、色々なことを学んだのだが、娯楽として暗号を教えてもらっていたのである。
その手紙によって、私は自分が危機的状況であることとアグナヴァン様にその旨を連絡して欲しいということを伝えた。その意図は、きちんと伝わっていたようだ。
それは、先生が作り出したものであるため、他の人にはわからない。それなら検閲も突破できると思い、おぼろげな記憶を頼りにそれを用いたのである。
「それによって、アグナヴァン王子殿下はあなたを助け出す計画を立てたのです」
「それで、あなた達は私を探していたのですね……」
「ええ……あなたの意図としては、スウェンド王国への亡命の許可を得たかったということなのでしょうが、殿下はあなたの存在が自国の利益に繋がると思い、そこまで計画を立てたようです」
「自国の利益……なるほど、そういうことだったのですね」
騎士の言葉で、私は理解した。
確かに、私の存在は、スウェンド王国にとって有益なのかもしれない。
よく考えてみれば、私はドルマニア王国の機密情報の塊だ。優れた魔術師であるだけでなく、隣国の秘密も持っているとなると、助け出すという選択を取るのはそれ程不思議なものではないのかもしれない。
「もっとも、殿下の個人的な気持ちもあったようですが……」
「個人的な気持ち?」
「ええ、王子殿下はあなたが無罪であると思っているようです」
「アグナヴァン様が……」
アグナヴァン様の思いに、私は少し感動していた。
彼は以前から、私の能力を高く評価してくれていた。ドルマニア王国の聖女として何度か会い、その度に賞賛してくれたものだ。
しかし、まさかそこまで信用してくれているとは思っていなかった。ドルマニア王国ではほとんど信用されなかったため、涙が出てきそうだ。
何はともあれ、これで私の安全は保障されたということになる。
もっと大変だと思っていたが、案外スムーズにことが進んだのは、嬉しい誤算だ。
こうして、私はスウェンド王国に保護されることになったのだった。
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