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18.割り切る覚悟
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「……困ったものだな」
エルムルナ様は部屋を去ったが、私はアグナヴァン様の元に留まっていた。
それは、彼からの要望だ。私と色々と話したいことがあるらしい。
「フェルーナ嬢、正直な話をすると、こちらからできることは中々に少ない。ドルマニア王国とは同盟国であり、助ける義理はあるのだが、どこまでできるかはわからない。結局の所、大局を決めるのは父上だ。父上は優しい方ではあるが、いざという時は決断する力を持っている。この場合、賢明な判断とは何か……」
「ドルマニア王国を切り捨てる決断も、あり得るということですね……」
「ああ、そういうことだ」
アグナヴァン様は、かなり困っているようだ。
彼個人としては、ドルマニア王国の人々の命が脅かされるこの事態を収拾したいと思っているのだろう。
だが、国としてその決断ができるのかは別である。彼の父親であるスウェンド王は、非情ともいえる判断をする可能性があるのだ。
「……アグナヴァン様、それは仕方ないことです。あなたが責任を負うべきことではありません」
「もちろん、わかっている。しかし、簡単に割り切れることではない」
「……エルムルナ様も、同じようなことを言っていました」
「む……」
私は、思わず苦笑いを浮かべていた。
彼もエルムルナ様も、根本的にいい人すぎるのだろう。それは素晴らしいことであると思えるが、国や人を率いるものとしては少々邪魔なものなのかもしれない。
「言いにくいことではありませんが……割り切ることも、時には必要だと思います。特に、あなたは国を背負っているのですから」
「……ああ」
アグナヴァン様は、ゆっくりと天を仰いだ。
その表情は明るくない。やはり、心を痛めているのだろう。
だが、その顔はすぐに引き締まった。そこには、決意の色が見える。
「仕方ないことだと割り切ることも確かに必要だ。ふっ……俺も、王族としてはまだまだのようだな」
「いえ、アグナヴァン様は立派な人だと思いますよ」
アグナヴァン様には、弱々しい一面もあるようだ。
それを支えていくのが、私の役割なのだろう。私は、それをなんとなく悟っていた。
「……結果的ではあるが、あなたの冤罪は思っていた以上に早く晴らされそうだ。ホーネリアの正体は、もうすぐ判明することだろう。そうなれば、自ずと彼女の悪事も暴かれる」
「……そうですね。彼女はきっと、闇の魔法を行使し続けているはずです。私の魔力を奪えなくなったなら、他の人から魔力を奪う以外に聖女を続ける方法はありません。ですから、被害者も増えているのではないかというのが今の私の見立てです」
「なるほど、もしもそうなっているなら、被害者には申し訳ないが、こちらとしては都合がいいとさえいえる」
その後も、私はアグナヴァン様と色々と話し合うのだった。
エルムルナ様は部屋を去ったが、私はアグナヴァン様の元に留まっていた。
それは、彼からの要望だ。私と色々と話したいことがあるらしい。
「フェルーナ嬢、正直な話をすると、こちらからできることは中々に少ない。ドルマニア王国とは同盟国であり、助ける義理はあるのだが、どこまでできるかはわからない。結局の所、大局を決めるのは父上だ。父上は優しい方ではあるが、いざという時は決断する力を持っている。この場合、賢明な判断とは何か……」
「ドルマニア王国を切り捨てる決断も、あり得るということですね……」
「ああ、そういうことだ」
アグナヴァン様は、かなり困っているようだ。
彼個人としては、ドルマニア王国の人々の命が脅かされるこの事態を収拾したいと思っているのだろう。
だが、国としてその決断ができるのかは別である。彼の父親であるスウェンド王は、非情ともいえる判断をする可能性があるのだ。
「……アグナヴァン様、それは仕方ないことです。あなたが責任を負うべきことではありません」
「もちろん、わかっている。しかし、簡単に割り切れることではない」
「……エルムルナ様も、同じようなことを言っていました」
「む……」
私は、思わず苦笑いを浮かべていた。
彼もエルムルナ様も、根本的にいい人すぎるのだろう。それは素晴らしいことであると思えるが、国や人を率いるものとしては少々邪魔なものなのかもしれない。
「言いにくいことではありませんが……割り切ることも、時には必要だと思います。特に、あなたは国を背負っているのですから」
「……ああ」
アグナヴァン様は、ゆっくりと天を仰いだ。
その表情は明るくない。やはり、心を痛めているのだろう。
だが、その顔はすぐに引き締まった。そこには、決意の色が見える。
「仕方ないことだと割り切ることも確かに必要だ。ふっ……俺も、王族としてはまだまだのようだな」
「いえ、アグナヴァン様は立派な人だと思いますよ」
アグナヴァン様には、弱々しい一面もあるようだ。
それを支えていくのが、私の役割なのだろう。私は、それをなんとなく悟っていた。
「……結果的ではあるが、あなたの冤罪は思っていた以上に早く晴らされそうだ。ホーネリアの正体は、もうすぐ判明することだろう。そうなれば、自ずと彼女の悪事も暴かれる」
「……そうですね。彼女はきっと、闇の魔法を行使し続けているはずです。私の魔力を奪えなくなったなら、他の人から魔力を奪う以外に聖女を続ける方法はありません。ですから、被害者も増えているのではないかというのが今の私の見立てです」
「なるほど、もしもそうなっているなら、被害者には申し訳ないが、こちらとしては都合がいいとさえいえる」
その後も、私はアグナヴァン様と色々と話し合うのだった。
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