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19.王国の変化(トルフェニオ視点)
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ドルマニア王国の北西にあるエルヴォアという村は、農民達が暮らすのどかな村である。
私は、助手であるメーリムとともにその村で発見されたという珍しい魔物に関する調査に来ていた。
「パストマン教授、これは一体……」
「ふむ……」
そんな私は、とある問題に直面していた。
私の目の前に広がっているのは、明らかに活力を失った農作物の数々だ。
魔物の調査をしていた私の元に農民達が焦った様子で現れたのはつい先程のことである。
彼らは、この惨状に対してそのような反応をしていたようだ。それは、非常に納得できることである。
「メーリム、私の記憶が確かであるならば、ここ最近天候や気候に目立った変化はなかったはずだ。例年通りだったということで、間違いはないだろうか」
「ええ、そのはずです……」
「農民達は、どう言っていたのだろうか?」
「最近、農作物に元気がないということは感じ取っていたようです。もっとも、そういったことは起こりえることだったため、それ程重要視していなかったみたいです。ただ、ここまでの惨状は普通ではないと思ったらしく、教授に相談しようということになったという流れです」
「なるほど……」
私は、作物に近づいてその様子を間近で観察することにした。
作物はしおれており、すぐにでも枯れてしまいそうな様子だ。
続いて私は、地面の様子を観察する。
このドルマニア王国には、とある特色がある。王都にある大樹の根が、国中に広がっており、それが繁栄をもたらしているのだ。
もしも、その大樹に異常があれば、作物に影響が出る。今回、可能性が高いのは恐らくそれだろう。
「ふむ、恐らく今回の不作は、フェルーナ嬢から、ホーネリア嬢に聖女が変わったことが今回の事件の原因であるだろう」
「そうなのですか?」
「気候や天候に問題がなく、農民達がおかしなことをしていないという前提から考えると、その可能性が高いはずだ。直近で聖女が変わって、農作物に変化があった。そこには因果関係があると考えるべきだろう」
「なるほど……」
先日、ドルマニア王国は聖女が変わった。
前聖女がとある罪で追放されて、彼女の妹が聖女に就任したのだ。
その変化は、農作物の変化に関係していると考えられる。なぜなら、大樹に魔力を与えて王国に繁栄をもたらすのが、聖女の役割だからだ。
「確か、教授はフェルーナ様が無実だと考えているのですよね?」
「ああ、そうだ。彼女のことは知っているが、そのようなことをする人ではなかった。ただ、それには根拠は存在しなかったがね。もっとも、今回のことが何よりの証拠になるだろうね……」
私は、地面に手をつき魔力を探ってみることにする。大樹に何があったのか、その手がかりが、少しでも掴めかもしれないと思ったからだ。
「これは……」
「教授? どうかされましたか?」
「なんということだ……メーリム。事態は深刻だ。早く手を打たなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない」
「そ、そうなんですか?」
地面に触れた瞬間、私は理解した。この王国に起こっている変化が、思っていた以上にまずいものであるということを。
私は、助手であるメーリムとともにその村で発見されたという珍しい魔物に関する調査に来ていた。
「パストマン教授、これは一体……」
「ふむ……」
そんな私は、とある問題に直面していた。
私の目の前に広がっているのは、明らかに活力を失った農作物の数々だ。
魔物の調査をしていた私の元に農民達が焦った様子で現れたのはつい先程のことである。
彼らは、この惨状に対してそのような反応をしていたようだ。それは、非常に納得できることである。
「メーリム、私の記憶が確かであるならば、ここ最近天候や気候に目立った変化はなかったはずだ。例年通りだったということで、間違いはないだろうか」
「ええ、そのはずです……」
「農民達は、どう言っていたのだろうか?」
「最近、農作物に元気がないということは感じ取っていたようです。もっとも、そういったことは起こりえることだったため、それ程重要視していなかったみたいです。ただ、ここまでの惨状は普通ではないと思ったらしく、教授に相談しようということになったという流れです」
「なるほど……」
私は、作物に近づいてその様子を間近で観察することにした。
作物はしおれており、すぐにでも枯れてしまいそうな様子だ。
続いて私は、地面の様子を観察する。
このドルマニア王国には、とある特色がある。王都にある大樹の根が、国中に広がっており、それが繁栄をもたらしているのだ。
もしも、その大樹に異常があれば、作物に影響が出る。今回、可能性が高いのは恐らくそれだろう。
「ふむ、恐らく今回の不作は、フェルーナ嬢から、ホーネリア嬢に聖女が変わったことが今回の事件の原因であるだろう」
「そうなのですか?」
「気候や天候に問題がなく、農民達がおかしなことをしていないという前提から考えると、その可能性が高いはずだ。直近で聖女が変わって、農作物に変化があった。そこには因果関係があると考えるべきだろう」
「なるほど……」
先日、ドルマニア王国は聖女が変わった。
前聖女がとある罪で追放されて、彼女の妹が聖女に就任したのだ。
その変化は、農作物の変化に関係していると考えられる。なぜなら、大樹に魔力を与えて王国に繁栄をもたらすのが、聖女の役割だからだ。
「確か、教授はフェルーナ様が無実だと考えているのですよね?」
「ああ、そうだ。彼女のことは知っているが、そのようなことをする人ではなかった。ただ、それには根拠は存在しなかったがね。もっとも、今回のことが何よりの証拠になるだろうね……」
私は、地面に手をつき魔力を探ってみることにする。大樹に何があったのか、その手がかりが、少しでも掴めかもしれないと思ったからだ。
「これは……」
「教授? どうかされましたか?」
「なんということだ……メーリム。事態は深刻だ。早く手を打たなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない」
「そ、そうなんですか?」
地面に触れた瞬間、私は理解した。この王国に起こっている変化が、思っていた以上にまずいものであるということを。
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