ですがそれは私には関係ないことですので

木山楽斗

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10.婚約者の弟

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 いつまでも窓越しで話すのも何だったので、私はルベート様を部屋に招いた。
 彼のことをよく知っている訳ではない。ただ彼は、リヴルム様のような過激派ではないはずである。そのような噂は、まったく聞いたことがない。

 兄弟でそこまで違うものかと思うが、そもそもの話ニーベル伯爵も別に過激な思想という訳ではなかった。
 つまりリヴルム様のその気質は、本人だけのものなのだろう。一体彼がどうしてあんな思想に染まったのかは、少々気になる所だ。

「ラティアは、すっかりイルメア嬢に懐いているようですね……」
「そうなのでしょうか?」
「そんな風に大人しくしているのだから、間違いありません」

 子猫のラティアは、私の膝の上で大人しくしている。勝手にいなくなる程にやんちゃだとは思えない程だ。
 それだけ私に懐いてくれているということなのだろうか。そうだとしたら、嬉しい限りである。

「イルメア嬢は、良い人なのでしょうね。動物は人間以上に、そういう感性は鋭いですから」
「そう言ってもらえるのはありがたいですけれど……」

 ルベート様とリヴルム様は、纏う雰囲気も正反対であるような気がする。
 リヴルム様は、鋭い刃のように鋭利な雰囲気だ。一方で、リヴルム様は森のように穏やかな人である。
 もっとも、二人の顔つきは似ていない訳ではない。やはり二人は、兄弟であるということなのだろう。

「この子は、ルベート様が飼っているということなのでしょうか?」
「いえ、この子は母上が飼い始めたんです。屋敷の庭で弱っているのを見つけたらしくて……」
「お母様が?」
「母上は動物が好きなんです。ただ体が少し弱くて、僕が代わりに面倒をみているんです」
「なるほど……」

 ルベート様は、とても優しい目でラティアのことを見ていた。
 するとラティアは、私の膝の上で立ち上がり、そのまま机に飛び移ってルベート様の方に向かった。
 そのままラティアは、ルベート様の膝に乗り移る。どうやら、私の膝はもう飽きてしまったようだ。

「ルベート様も、良い人なのでしょうね?」
「え?」
「ラティアはあなたに、随分と懐いているみたいですから」
「それは……」

 私が良い人であるかどうかはともかく、ルベート様が良い人であるということは間違いないないだろう。
 その膝でラティアが穏やかに目を瞑っていることがその証拠だ。ルベート様があの子を大切にしていなければ、そうはならないだろう。
 そんなルベート様は、苦笑いを浮かべている。先程自分が言ったことを言い返されるとは思っていなかったのだろう。
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