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41.切り捨てた後

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「それで、ランドラは逃げていったという訳かい?」
「ええ、そうです」

 お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 結果的に、お父様には事後報告になってしまった。とはいえ、今回大切だったのは私の判断なのだから、別に問題はないだろう。

「彼は更生することができなかったか……」
「そうですね……彼は最後まで、私と婚約破棄した時のままだったように思います」

 ランドラ様は、変わることができなかった。
 没落を経験して、何かしらの変化があればよかったのだが、それは起こらなかったようである。

「……むしろ、悪化したとさえ思ってしまいます」
「悪化か……ふむ」

 お父様は、少し悲しそうな顔をしていた。
 やはり、アルガール侯爵の息子である彼が落ちぶれてしまったことは辛いのだろう。

「……お父様、それで少し相談したいことがあるのですが、いいでしょうか?」
「相談? どうかしたのかい?」
「ランドラ様の借金取りなのですが、彼らはルーフィアの元へと向かうと思いますか?」
「……その可能性はないとは言い切れないね」

 私の言葉に、お父様はゆっくりと頷いた。
 ランドラ様はともかく、少なくともルーフィア側は彼と既に縁を切ったつもりであるはずだ。だが、それを気にするような人達からお金を借りたとは思えない。
 もしもそういう人達の手がルーフィアに及ぶなら、私は彼女を助けたいと思う。別に彼女のことを快く思っている訳ではないが、いくらなんでも田舎に戻って子供と平和に暮らそうという平民が愚かな貴族のせいで危ない目に合うのは可哀そうだ。

「……アルガール侯爵から預かったものの使い道は、そうなりそうですね」
「ランドラがどこからお金を借りたかを調べる必要があるね」
「ええ、お願いできますか?」
「それは、もちろん。だが、足りるのだろうか?」
「そうですね……まあ、足りなかったらまた改めて考えます」
「そうか。まあ、そうだな」

 お父様は、私の言葉に頷いてくれた。
 これで、侯爵からの預かり物のいい使い道ができた。流石にこれを自分のためなどに使うのは気が引けるので丁度いい。

「……というか、それならルーフィアに直接お金を渡してもいいのではないか?」
「どの道返すことになるなら、ランドラ様の安全も考えることにしましょう。同情するつもりはありませんが、流石にわざわざ彼の命を危険に晒そうとは思いません」
「ふむ、君は優しいな……」
「お父様、それは少し親馬鹿なような気がしますよ?」
「む? そうだろうか?」

 恐らく、これが一番いい選択であるだろう。
 借金が返済されたことは、ランドラ様には知らせない。それは、今まで迷惑をかけられた私からのささやかな罰だ。
 彼がそれを知ったとしても、それはそれで構わない。なぜなら、そこから先は最早私の知る所ではないからだ。
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