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42.村を訪ねて
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私は、アルガール侯爵家の領地だった村に来ていた。
侯爵令嬢である私が、このように村を訪ねるというのは大変に珍しいことではあるだろう。村の人達も、かなりざわついている。
「……失礼、この辺りにルーフィアという女性はいますか?」
「ル、ルーフィアですか? 彼女なら、ここから真っ直ぐ進んで、右側の家で数えて六番目の家に住んでいます」
「そうですか、ありがとうございます」
一緒に来てもらったメイドさんが村の人に聞いてくれて、ルーフィアの居場所がなんとなくわかった。
とりあえず、そこを目指せばいいだろう。わからなかったら、また聞けばいいだけだ。
「セリティアお嬢様、それでは行きましょうか?」
「ええ、そうしましょう」
私はメイドさんとともに馬車に乗り込み、そのまま村の中を進んで行く。
御者さんも話は聞いていたはずだが、右側で数えて六番目というのは少々難しい説明である。この辺りは家と家の間隔が広く、どの家を数えていいのか少し混乱するからだ。もしも間違えたとしても、これは仕方ないといえるだろう。
「止まりましたね……」
「ええ……多分、ここだと思います」
「そうですね……私も数えていましたが、ここであると思います」
メイドさんは、私の言葉にゆっくりと頷いてくれた。
御者さんも含めて、ここがルーフィアの家である自信はない。
だが、とりあえず下りてみればいいだろう。もし違ったら、その家の人にルーフィアの家かどうかを聞けばいいだけだ。
「失礼します」
「……はい、どちら様ですか?」
「あっ……」
メイドさんが戸を叩きながら声をかけると、中から一人の女性が出てきた。
その女性には見覚えがある。お腹は大きくなっているが、その女性はアルガール侯爵の葬儀の時に目にしたルーフィアに間違いない。
「どうもルーフィアさん、私のことがわかりますか?」
「……ええ、わかります。セリティア・オンラルト侯爵令嬢様ですよね」
「ええ、その通りです。今日はあなたと少し話がしたいと思い、訪ねてきました」
「えっと……」
ルーフィアは、かなり怖がっているように見える。夫だった人物の元婚約者、それは確かに怖いかもしれない。
故に、まずは安心させる必要があるだろう。別に私が彼女を責めるために来たという訳ではないことをわかってもらわなければならない。
「ご安心ください。別にあなたのことを恨んでいたりする訳ではありません。ただ、少々厄介なことが起こったため、あなたにお知らせをしたいと思いました。私自身が来たのは、話が早いからです」
「そ、そうなのですか……」
私は極めて穏やかな口調で彼女に語りかけた。
彼女は、少し警戒を解いてくれたような気がする。
身重の女性にあまり無理はさせられない。今日は基本的に、穏やかに話をすることを心掛けることにしよう。
侯爵令嬢である私が、このように村を訪ねるというのは大変に珍しいことではあるだろう。村の人達も、かなりざわついている。
「……失礼、この辺りにルーフィアという女性はいますか?」
「ル、ルーフィアですか? 彼女なら、ここから真っ直ぐ進んで、右側の家で数えて六番目の家に住んでいます」
「そうですか、ありがとうございます」
一緒に来てもらったメイドさんが村の人に聞いてくれて、ルーフィアの居場所がなんとなくわかった。
とりあえず、そこを目指せばいいだろう。わからなかったら、また聞けばいいだけだ。
「セリティアお嬢様、それでは行きましょうか?」
「ええ、そうしましょう」
私はメイドさんとともに馬車に乗り込み、そのまま村の中を進んで行く。
御者さんも話は聞いていたはずだが、右側で数えて六番目というのは少々難しい説明である。この辺りは家と家の間隔が広く、どの家を数えていいのか少し混乱するからだ。もしも間違えたとしても、これは仕方ないといえるだろう。
「止まりましたね……」
「ええ……多分、ここだと思います」
「そうですね……私も数えていましたが、ここであると思います」
メイドさんは、私の言葉にゆっくりと頷いてくれた。
御者さんも含めて、ここがルーフィアの家である自信はない。
だが、とりあえず下りてみればいいだろう。もし違ったら、その家の人にルーフィアの家かどうかを聞けばいいだけだ。
「失礼します」
「……はい、どちら様ですか?」
「あっ……」
メイドさんが戸を叩きながら声をかけると、中から一人の女性が出てきた。
その女性には見覚えがある。お腹は大きくなっているが、その女性はアルガール侯爵の葬儀の時に目にしたルーフィアに間違いない。
「どうもルーフィアさん、私のことがわかりますか?」
「……ええ、わかります。セリティア・オンラルト侯爵令嬢様ですよね」
「ええ、その通りです。今日はあなたと少し話がしたいと思い、訪ねてきました」
「えっと……」
ルーフィアは、かなり怖がっているように見える。夫だった人物の元婚約者、それは確かに怖いかもしれない。
故に、まずは安心させる必要があるだろう。別に私が彼女を責めるために来たという訳ではないことをわかってもらわなければならない。
「ご安心ください。別にあなたのことを恨んでいたりする訳ではありません。ただ、少々厄介なことが起こったため、あなたにお知らせをしたいと思いました。私自身が来たのは、話が早いからです」
「そ、そうなのですか……」
私は極めて穏やかな口調で彼女に語りかけた。
彼女は、少し警戒を解いてくれたような気がする。
身重の女性にあまり無理はさせられない。今日は基本的に、穏やかに話をすることを心掛けることにしよう。
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