そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗

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 ウェルクードとかいう恐怖の第三王子との話し合いが終わって、数日が経ちました。
 すごくテンションが低くなっている私は、お兄様に呼ばれました。話があるそうです。
 どういう話かなんて、考えるまでもありません。第三王子との婚約に関することですね。
 という訳で、私はお姉様についてきてもらいました。必死に説得して、お兄様に対抗できる唯一の人を味方につけたのです。

「……何を隠れている」
「え? その……」
「出てこい。今日の話は、お前が身構えるようなことではない」
「嘘です。絶対に身構えることです」
「シャルリナ、エルード様はきっと本当のことを言っているよ。ほら、いつもより優しいと思わない?」
「……確かに、そうですね」

 お姉様の言葉に、私は納得しました。
 なんというか、今日のお兄様は結構優しい感じがします。

「回りくどい話はしない。第三王子からの婚約は、断った。まず、その事実をお前に伝えておこう」
「え? マジですか?」

 お兄様の言葉に、私はびっくりしました。
 まさか、断るなんて、思ってもいませんでした。
 だって、王族との結婚ですよ。普通に考えて、断るなんておかしいです。

「どうして?」
「ふっ……お前が王族と婚約するなど、考えたくもないことだ。万が一、お前が王妃にでもなったら、この国は終わりだ」
「お兄様……わかっているじゃないですか。素晴らしいです。やっぱり、持つべきものは理解がある兄ですね!」

 私は、お兄様にとても感謝しました。
 こんなに感謝したのは、初めてかもしれません。
 いや、よかった。これで、あの怖い人と一緒にならなくて済みます。自由で怠惰な生活が手に入りますよ。

「無論、だからといって、自由で怠惰な生活は許さない」
「うげっ!? 本当に、わかっていますね……」
「もっとも、怠惰な生活にはしばらくならないだろうな……」
「え?」
「……第三王子から返答があった。諦めるつもりはないと」
「……かっ!」

 お兄様の言葉に、私は恐怖に慄きました。
 こんなのもうストーカーですよ。嫌ですね、これは。

「まあ、俺も色々と考えておいてやる。だが、お前も強さを身に着けておくのだな。第三王子をはねのけられる程の強さを……」
「ふふ……」
「アルシア、何を笑っている」
「あ、いえ、エルード様もやっぱりシャルリナが大切なんだと思って……」
「待て。そういうことではないぞ。断じて違う」

 お兄様とお姉様が、微笑ましそうに話しています。
 この状況でそういう話をされるのは、少し気分が悪いですね。
 でも、お姉様は悪くありませんから、全部お兄様のせいです。

「……ああ、それと聖女の仕事だが、ある程度見直されるようだ。ただ、歴代の聖女に聞いてみた所、大変だったが、そこまでではないという回答が得られたらしい」
「え?」
「つまり、お前とフェルムーナ・エルキアードは、少々面倒くさがり屋だったということだ」
「ええっ……」

 お兄様の言葉に、私は少し唸りました。
 歴代の聖女はすごいですねえ。まあ、私とあの人が駄目なだけなんでしょうけど。
 ただ、私は自覚していますから、まだマシじゃないですか? よくわからない正義感を振りかざしたあの人の方が、どうしょうもないですよね。

「ふん、お前はいつまでも変わらんな……」
「でも、私はシャルリナのそういう所が嫌いじゃありませんよ?」
「お前は、甘すぎる」
「いいじゃないですか。エルード様が厳しいんですから」
「ああ、これからも大変そうですね……」

 色々なことがあって、私は結構ぐったりしています。
 これはもう寝るしかないですね。引きこもりましょう。
 それが私です。お姉様も嫌いじゃないと言っていますし、変わる気なんてありませんよ?
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感想 14

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みんなの感想(14件)

ゆらぽって
2022.06.08 ゆらぽって

使用人の〜、から続いて読みました。

相変わらずのほほんとした雰囲気で、癒されました。

また、他の作品も読んでみたいと思います。

執筆は大変でしょうけれど、無理せずに続けていただけたらと思います。

素敵な作品をありがとうございました。

2022.06.08 木山楽斗

感想とお心遣いありがとうございます。
両作品を楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。
こちらこそ、ご愛読本当にありがとうございました。

解除
とら
2021.11.24 とら

歴代の聖女おかしい と思いました。

そんな私は怠け者。

2021.11.25 木山楽斗

感想ありがとうございます。
確かに、歴代の聖女の方がおかしいのかもしれません。

解除
セライア(seraia)

完結、お疲れ様でした💐

『ハッピーエンド?』も『ざまぁ?』も納得です😆
ついでに『恋愛』にも『?』つけたくなるくらい、やっぱりシャルリナ、でしたね😂
そしてエル-ドの苦労は続く、と😅

第3といえど王子、粘るにも限界が有るでしょうから、シャルリナの適性(王子妃は無理)を考えても、逃げきれるんじゃないかと。。。😁

2021.06.20 木山楽斗

感想ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら、幸いです。
彼女は、素直に恋愛をできる性格ではありませんでした。

解除

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