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1.竜との出会い①

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「エルッサさん、掃除終わりましたよ」
「あら、フェリナ、お疲れ様」

 宿屋の廊下や空いている客室を掃除するのは、私の毎朝の日課だ。ここで働くようになってから三年間、ほぼ毎日やっている。始めた頃はとても大変だと思っていたが、今ではそれ程疲れも感じていない。

「それじゃあ、私は厨房に行きますね」
「ええ、よろしくね」
「はい、任せてください」

 私の次の仕事は、朝食の準備だ。昨年までは、料理は別の人が担当していたのだが、高齢でやめてしまったため、今は私の役目となっている。
 何故、私が引き継ぐことになったかというと、私がその料理人に弟子入りしていたからだ。
 単純に、料理に興味があったので教えてもらっていただけなのだが、その人の味を再現できるのは私だけということもあり、その役目まで引き継ぐことになったのだ。
 一応、私の料理の評判はいい。ただ、まだ師匠には遠く及ばないので、もっと精進をしなければならないと思っている。

「ああ、フェリナ。朝食の準備が終わったら、今日は夜まで休んでいいよ。お客さんもいなくなるからね」
「いいんですか?」
「ああ、構わないよ」
「ありがとうございます。それなら、休ませてもらいます」

 私達が暮らしている町アルバナスは、そこまで人が来るような町ではない。特に観光する所があるという訳ではないし、人が来る理由があまりないのだ。
 この町に来るのは、仕事をしに来たとか、当てのない旅人だとか、そのような人達がほとんどである。
 そういった事情もあって、時々昼間に休みをもらえることがあるのだ。基本的に、お客さんが来るのは夜なので、それまでは休めるということなのである。

 もっとも、急な来客があるかもしれないので、基本的にはどちらかが残らなければならない。
 エルッサさんは、そういう時に大抵私を休ませてくれる。初めの頃は疲れているだろうから、最近は朝から忙しくしているから。そのように理由をつけて、私を休ませてくれるのだ。

 昔は、私が残ると提案していたこともある。だが、それは無駄だとすぐにわかった。彼女は、絶対に譲ってくれないからだ。
 という訳で、最近の私は素直に休ませてもらっている。最近に関しては、朝から忙しいのは事実なので、休めるというのは中々嬉しいことだ。

「さて、休みももらえたことだし、張り切っていきますか」

 休みが待っている。そう思うと、自然にやる気が出てきた。自分でも、現金な奴だと思ってしまうが、やはり休みというのは嬉しいのだ。
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