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11.前向きな気持ちで
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「朝早くに悪いわね。でも、あなたとは業務が始まる前に少し話しておきたかったのよ」
「いえ……」
ウォルファン殿下に王都を案内してもらった後日、私の部屋にはイルファナ姫が訪ねてきた。
それは本当に、朝早くのことだ。幸いにも準備は終えていたため待たせることもなかったが、この訪問には驚いた。
「えっと、イルファナ姫は激励に来てくださったということですか?」
「まあ、そんな所かしら? 先日の王都の見回りについても聞いておきたかったし……」
「ああ、それは……」
「弟が迷惑をかけてしまったかしらね……あら、そこにある木彫りの鳥は何かしら?」
「ああ、あれはウォルファン殿下にプレゼントしていただいたものです」
ウォルファン殿下と市場に赴いた時、私は彼から小物をプレゼントしてもらえることになった。
悩んだ結果、私は木彫りの鳥を選んだ。精巧な鳥というよりは少し可愛いさを優先したそれは、見ていると癒される。
「あなたが選んだのでしょうね……あの弟は、こういったものに関してはあまりにも疎いもの」
「そうなのですか?」
「ええ、真面目過ぎるからかしら? あの子も部屋にこういったものの一つでも置けばいいのに、と思うことがあるわ」
イルファナ姫は、木彫りの鳥を見ながら笑みを浮かべていた。
その笑みからは、弟に対する愛が読み取れる。アドラーク王国は、兄弟の仲に関しては良いようだ。
サルウィス王国のザルード殿下にも兄弟がいたが、その仲というものは良いとは言い難い。彼の弟達はあわよくば王位をと思っているらしく、そこには相容れないものがありそうだった。
「……それはつまり、イルファナ姫の部屋にはこういった小物の類があるということですか?」「え?」
「ああいえ、口振りからしてそういうことなのかと思ったのですが……」
そこで私は、ふとそのようなことが気になってしまった。言葉の綾かもしれないが、イルファナ姫はそう言っているように思えた。
それを聞いた彼女は、珍しく目を丸めている。その反応は、図星であるということだろうか。
「まあ、私のことなんていいじゃない。それよりも、あなたのことを聞いておきたいわね。今日から業務に参加してもらう訳だけれど、覚悟はいいかしら?」
「あ、えっと、覚悟ですか……そう言われると、少し気が引けてしまいますね」
「言い方が良くないかしら? まあ、やる気とか意気込みとかでもいいのだけれど、とにかく今の気持ちを聞かせてもらえないかしら?」
「そうですね……」
明らかに話を変えたイルファナ姫に対して、私は少し考えることになった。
アドラーク王国の一員として働く。それは私にとっては大きなことだ。イルファナ姫はその辺りの気持ちの整理について、気にしているということだろう。
「……単純にお世話になっている恩を返したいと思っています。でも今はそれを抜きにしても、イルファナ姫やウォルファン殿下のために、働きたいという気持ちがあります」
「あら? それは嬉しいものね。でもどうしてかしら?」
「お二人が尊敬できる人達だからです。私がかつて従っていたザルード殿下とは、同じ王族でも少し違っていて、国を愛して民を慮れる人達だと思います。そういった方々の元で働けるというのは、やる気が出るようです」
私はとりあえず、今の自分の素直な心境を伝えてみた。
それをイルファナ姫は、静かに聞いている。彼女は今、何を思っているのだろうか。
「あなたがそう思うように仕向けた甲斐があったわ」
「イルファナ姫、それは……」
「王家なんて、あまり信用するものではないわよ。まあ、あなたがそう思っているというなら、こちらにとっては好都合だけれど……」
イルファナ姫は、飄々と言葉を述べていた。それはつまり、彼女なりの照れ隠しのようなものなのだろうか。
ともあれ、やはりイルファナ姫やウォルファン殿下のことは信頼できる。そういった人の下で働けるというのは嬉しいものだ。少なくとも今の私は、サルウィス王国にいた頃よりも前向きな気持ちであった。
「いえ……」
ウォルファン殿下に王都を案内してもらった後日、私の部屋にはイルファナ姫が訪ねてきた。
それは本当に、朝早くのことだ。幸いにも準備は終えていたため待たせることもなかったが、この訪問には驚いた。
「えっと、イルファナ姫は激励に来てくださったということですか?」
「まあ、そんな所かしら? 先日の王都の見回りについても聞いておきたかったし……」
「ああ、それは……」
「弟が迷惑をかけてしまったかしらね……あら、そこにある木彫りの鳥は何かしら?」
「ああ、あれはウォルファン殿下にプレゼントしていただいたものです」
ウォルファン殿下と市場に赴いた時、私は彼から小物をプレゼントしてもらえることになった。
悩んだ結果、私は木彫りの鳥を選んだ。精巧な鳥というよりは少し可愛いさを優先したそれは、見ていると癒される。
「あなたが選んだのでしょうね……あの弟は、こういったものに関してはあまりにも疎いもの」
「そうなのですか?」
「ええ、真面目過ぎるからかしら? あの子も部屋にこういったものの一つでも置けばいいのに、と思うことがあるわ」
イルファナ姫は、木彫りの鳥を見ながら笑みを浮かべていた。
その笑みからは、弟に対する愛が読み取れる。アドラーク王国は、兄弟の仲に関しては良いようだ。
サルウィス王国のザルード殿下にも兄弟がいたが、その仲というものは良いとは言い難い。彼の弟達はあわよくば王位をと思っているらしく、そこには相容れないものがありそうだった。
「……それはつまり、イルファナ姫の部屋にはこういった小物の類があるということですか?」「え?」
「ああいえ、口振りからしてそういうことなのかと思ったのですが……」
そこで私は、ふとそのようなことが気になってしまった。言葉の綾かもしれないが、イルファナ姫はそう言っているように思えた。
それを聞いた彼女は、珍しく目を丸めている。その反応は、図星であるということだろうか。
「まあ、私のことなんていいじゃない。それよりも、あなたのことを聞いておきたいわね。今日から業務に参加してもらう訳だけれど、覚悟はいいかしら?」
「あ、えっと、覚悟ですか……そう言われると、少し気が引けてしまいますね」
「言い方が良くないかしら? まあ、やる気とか意気込みとかでもいいのだけれど、とにかく今の気持ちを聞かせてもらえないかしら?」
「そうですね……」
明らかに話を変えたイルファナ姫に対して、私は少し考えることになった。
アドラーク王国の一員として働く。それは私にとっては大きなことだ。イルファナ姫はその辺りの気持ちの整理について、気にしているということだろう。
「……単純にお世話になっている恩を返したいと思っています。でも今はそれを抜きにしても、イルファナ姫やウォルファン殿下のために、働きたいという気持ちがあります」
「あら? それは嬉しいものね。でもどうしてかしら?」
「お二人が尊敬できる人達だからです。私がかつて従っていたザルード殿下とは、同じ王族でも少し違っていて、国を愛して民を慮れる人達だと思います。そういった方々の元で働けるというのは、やる気が出るようです」
私はとりあえず、今の自分の素直な心境を伝えてみた。
それをイルファナ姫は、静かに聞いている。彼女は今、何を思っているのだろうか。
「あなたがそう思うように仕向けた甲斐があったわ」
「イルファナ姫、それは……」
「王家なんて、あまり信用するものではないわよ。まあ、あなたがそう思っているというなら、こちらにとっては好都合だけれど……」
イルファナ姫は、飄々と言葉を述べていた。それはつまり、彼女なりの照れ隠しのようなものなのだろうか。
ともあれ、やはりイルファナ姫やウォルファン殿下のことは信頼できる。そういった人の下で働けるというのは嬉しいものだ。少なくとも今の私は、サルウィス王国にいた頃よりも前向きな気持ちであった。
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