聖女の代わりなんていないのに見栄を張って私をクビにしたのですか?

木山楽斗

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12.働くようになって

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 アドラーク王国の王城で、私は働くようになった。
 その日々というものは、それなりに大変である。サルウィス王国での活動とは違う部分があり、その辺りの調整には手間取った。
 ただ幸いにも、周囲の人は私に優しかった。サルウィス王国から実質的に追放された元聖女である私を、アドラーク王国の人々は受け入れてくれたのだ。

「ウォルファン殿下やイルファナ姫の言う通りでした。アドラーク王国の人々は温かい人達ばかりですね……」
「そう言っていただけると、俺としては嬉しい限りです」
「でも、私は面倒な事情があるというのに、どうして皆さん優しいのでしょうか?」
「ザルード殿下の行いは、知られていない訳ではありません。こういうことを言いたくはないのですが、彼はこちらの国においてそこまで評判がいい王子ではないですからね」
「そうなのですか……」

 ザルード殿下のことは、隣国にも伝わっているようである。それは驚きだ。私は、隣国の王族のことなんて知らなかったのに。
 それはつまり、悪名の方が轟くということなのだろうか。確かにザルード殿下は、サルウィス王国でもどちらかというと悪い評判の方が目立っていたが。

「それにアドラーク王国は、どちらかというと実力主義な国ですからね。フェルリアさんの才覚は、単純に尊敬を抱けるものなのでしょう。もちろん、問題が抱えているということで最初は多少の色眼鏡はあるかもしれませんが、実際に接すれば良い人だということはわかります」
「……そういえば、こちらの国は平民の方も多いですね。重要な役職にも登用されていて、少し驚きました。そういった所も実力主義という訳ですか?」
「ええ、兄上や姉上……もちろん俺も、能力がある人を身分で冷遇するつもりはありません。優秀な者は積極的に役職にも登用します」

 アドラーク王国は、サルウィス王国とはやはり違う国である。実際に働いてみて、私はそれを改めて実感していた。
 この国の風潮はその是非はともかくとして、私にとっては幸いなものだった。とりあえず今の所は、安心してもいいだろう。

「フェルリアさんがこちらの国で馴染めそうで何よりです。しかしもちろん、サルウィス王国との交渉は諦めていません。あなたも帰りたいなら、帰りたいですよね?」
「そうですね……その気持ちが、消えたという訳ではありません。でも、今はそこまで強く帰りたいとは思っていません。アドラーク王国が居心地が良いですからね」
「……何せよ、あなたの不当な追放という汚名は晴らします。その上で、アドラーク王国にいることを選択していただけるなら、俺としては嬉しい限りです」

 ウォルファン殿下の心意気は、私にとっては嬉しいものだった。
 確かにどちらの国に残るとしても、できることなら入国拒否なんてものは解いておきたいものだ。名誉を守るということ、私はそれを意識し始めていた。
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