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13.争いの火種
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アドラーク王国で私が働き始めてから一か月の時が経った。
私も段々と仕事に慣れてきて、心には余裕ができ始めていた。こちらの国でもやっていけるだろう。そう思い始めた直後に、私はある人から呼び出されることになった。
「いや、こうしてあなたと会うのは初めてのことだな、フェルリア、で良かったんだよな?」
「あ、はい。フェルリアと申します、アンバス殿下」
「評判は聞いているよ、なんでも優秀な魔法使いなんだってな。いや、こっちの国にあなたが来てくれて良かったよ」
その人物とは、アドラーク王国の王太子であるアンバス殿下だ。
彼の隣には、イルファナ姫とウォルファン殿下もいる。今回のこの場は、私とアンバス殿下の対面の場であるのだが、二人も同席してくれたらしい。
アンバス殿下は、気さくな人であった。
まだ会ったばかりなのに、どこか親近感が湧くような印象がある。人当たりの良さそうなその笑みからは、彼が民から慕われる王になるのだということが感じられる。
「しかし、あなたも災難なものだな。サルウィス王国は、なんとも愚かな決断をしたものだ。いや、この場合は国というよりも個人か? ザルードがあなたをクビにして、国から追い出したんだろう?」
「あ、はい。そうですね……」
「そのせいで、サルウィス王国は火の車だ。なんとも悲惨なものだ」
「……え? そうなのですか?」
アバンス殿下が呆気なく言った言葉に、私は少し驚くことになった。
サルウィス王国が火の車、そのようなことは聞いたことがない。私は、イルファナ姫とウォルファン殿下の方を見る。すると二人とも、微妙な表情をしていた。
「まだ、フェルリアさんには話していませんでしたが……実の所、サルウィス王国の状況というものは良いものではないのです。具体的に言えば、聖女の不在が尾を引いています」
「聖女の不在……それではまさかザルード殿下は、聖女の代わりなんていないのに見栄を張って私をクビにしたのですか?」
「ええ、そういうことになるわね。サルウィス王国はなんとか聖女を擁立しようとしていたけれど、結局の所実力不足だったわ。一応、今は聖女として収まっている者はいるけれど、その子では国の力の象徴としては不十分、でしょうね」
ウォルファン殿下は、イルファナ姫の言葉に少し俯いた。それに私は、嫌な予感を覚えずにはいられない。
聖女というのは、国を象徴するものだ。それが不在であるということは、その国家の強さというものを疑う要因となる。
「北……ラスパーが動き始めているのですか?」
「……ええ、あの国はこういった隙に敏感です。サルウィス王国が負けるとも限りませんが、何せよ火種がある状態です」
「それは……」
ウォルファン殿下は、悲痛な面持ちで言葉を発していた。
争いが起こるかもしれない。その事実には、私も穏やかではいられない。故郷に戦火が降りかかる。私の存在一つで、そのようなことが起こるなんて思ってもいないことだった。
「これは、あなたが責任を感じるようなことではないわ。ザルードの愚かな行いが原因なのだから」
「まあ、こちらからもサルウィス王国に働きかけるつもりだ。あなたは安心して待っていてくれ。争いなんて起こさせないさ」
イルファナ姫とアンバス殿下の言葉を受けても、私はそこまで明るくはなれなかった。
しかしこれに関しては、サルウィス王国の働きかけに期待するしかないだろう。今はとにかく、その成果を待つしかない。
私も段々と仕事に慣れてきて、心には余裕ができ始めていた。こちらの国でもやっていけるだろう。そう思い始めた直後に、私はある人から呼び出されることになった。
「いや、こうしてあなたと会うのは初めてのことだな、フェルリア、で良かったんだよな?」
「あ、はい。フェルリアと申します、アンバス殿下」
「評判は聞いているよ、なんでも優秀な魔法使いなんだってな。いや、こっちの国にあなたが来てくれて良かったよ」
その人物とは、アドラーク王国の王太子であるアンバス殿下だ。
彼の隣には、イルファナ姫とウォルファン殿下もいる。今回のこの場は、私とアンバス殿下の対面の場であるのだが、二人も同席してくれたらしい。
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まだ会ったばかりなのに、どこか親近感が湧くような印象がある。人当たりの良さそうなその笑みからは、彼が民から慕われる王になるのだということが感じられる。
「しかし、あなたも災難なものだな。サルウィス王国は、なんとも愚かな決断をしたものだ。いや、この場合は国というよりも個人か? ザルードがあなたをクビにして、国から追い出したんだろう?」
「あ、はい。そうですね……」
「そのせいで、サルウィス王国は火の車だ。なんとも悲惨なものだ」
「……え? そうなのですか?」
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サルウィス王国が火の車、そのようなことは聞いたことがない。私は、イルファナ姫とウォルファン殿下の方を見る。すると二人とも、微妙な表情をしていた。
「まだ、フェルリアさんには話していませんでしたが……実の所、サルウィス王国の状況というものは良いものではないのです。具体的に言えば、聖女の不在が尾を引いています」
「聖女の不在……それではまさかザルード殿下は、聖女の代わりなんていないのに見栄を張って私をクビにしたのですか?」
「ええ、そういうことになるわね。サルウィス王国はなんとか聖女を擁立しようとしていたけれど、結局の所実力不足だったわ。一応、今は聖女として収まっている者はいるけれど、その子では国の力の象徴としては不十分、でしょうね」
ウォルファン殿下は、イルファナ姫の言葉に少し俯いた。それに私は、嫌な予感を覚えずにはいられない。
聖女というのは、国を象徴するものだ。それが不在であるということは、その国家の強さというものを疑う要因となる。
「北……ラスパーが動き始めているのですか?」
「……ええ、あの国はこういった隙に敏感です。サルウィス王国が負けるとも限りませんが、何せよ火種がある状態です」
「それは……」
ウォルファン殿下は、悲痛な面持ちで言葉を発していた。
争いが起こるかもしれない。その事実には、私も穏やかではいられない。故郷に戦火が降りかかる。私の存在一つで、そのようなことが起こるなんて思ってもいないことだった。
「これは、あなたが責任を感じるようなことではないわ。ザルードの愚かな行いが原因なのだから」
「まあ、こちらからもサルウィス王国に働きかけるつもりだ。あなたは安心して待っていてくれ。争いなんて起こさせないさ」
イルファナ姫とアンバス殿下の言葉を受けても、私はそこまで明るくはなれなかった。
しかしこれに関しては、サルウィス王国の働きかけに期待するしかないだろう。今はとにかく、その成果を待つしかない。
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