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第2部
第28話 イムナーの憂鬱と、王都行きのメンバー決め
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「久しぶり!イムナー!!」
「二日も経っていないがな。まあ、元気そうで何よりだ」
昨日ぶりのイムナーと熱いハグを交わす。今日も彼女の皮膚はとても硬い。言ったら顎で小突かれるから言わないけど。
木々の壁に隠れて熱烈に舌を交えて、私がイムナーに寄りかかって穏やかな時間を過ごす。イムナーが何も言わなくても『威圧』を発動してくれているおかげで森の中でも平和な一時を楽しめる。
「それで、イムナーはいつくらいに巣を離れられるの?」
「一応繁殖期が終わるまではいて欲しいと言われてな。二十日後にはほぼ確実に晴れて自由の身になれる」
「二十日かぁ……」
長いようで短くて、やっぱり長い。
イムナーはこの世界に来て初めて出来た友達で、チュー友で、結構嫉妬深くて可愛い子だ。
早く一緒に住みたいのに、中々上手いこといかないものだ。
「と言うか、もし私が巣を離れてもシルメリの家には住めないのだろう?前に入れてくれなかったしな」
「それはだから、ちゃんとシルちゃんを説得して……今の所成果なしだけども」
エルフは、特にシルちゃんは異常に魔物が怖いらしくて、イムナーが無害な魔物って分かってもどうしても家まで上げるのは無理らしい。過去に何かあったのか分からないが、難儀なものである。
「やはり私は生まれる種族を間違えてしまったらしいな………まあ、この姿だからこそ役立ったこともあったが、やはり私もアカリに凭れ掛かったり密着して抱き合ったりしたい……」
「生まれる種族を間違えた」が最近のイムナーの口癖だ。
確かに、いくらお互いに種族に関係なく愛情を持ち合っていたとしても、この体格差で出来ることは限られている。精々舌を絡めたり、私が一方的にしがみついたりくらいしか出来ない。
私だってイムナーといちゃいちゃえっちしたい。
色々試してみたけどやっぱり体格差的に色々難しくてできなかったし、いよいよ私も深刻に考えるようになってきた。
イムナーが巣を離れるまでの二十日間。その間にどうにかイムナーを一時的にでも人っぽくする、もしくは私が蛇っぽくなれる薬とかスキルとか見つけられないだろうか。
「あー…どっかに魔物を人に変えるスキルか薬落ちてないかなー」
ご飯の席でふと悩みを漏らすと、
「聞いたことあるわよ」
答えたのはリア。
固まるアカリ。
「えっ、えええぇぇぇ!?ホント!?リアさん!!」
「あーちょっと待って。聞いたことがあるだけで、絶対にあるとは言えないわよ?」
「いやいやでもでも、もし可能性があるのなら是非聞きたいです!」
「えーと…過去に私冒険者してた時があって、その時王都で知り合った友人が確か『魔物を人の姿に変える魔法』?みたいなのを研究していたような?名前は何て言ったかな…」
『魔物を人の姿に変える魔法』ですと!?
そんなタイムリーなこと研究している人がいるなんて!
「じゃあその王都に行きましょう!今すぐに!!」
「アカリちゃん、一旦落ち着きましょ?聞いた感じだとまだイムナーちゃんはしばらく巣から離れられないのよね?だったら、まずはゆっくりと計画を立てた方がいいわ」
「計画」
アカリ、落ち着きます。
「まず、イムナーちゃんとこのことを話し合って、本当に行くかどうか決める。それから王都に行くための手段を探す。そして王都に着いてからどうやって私の友人を探すのか、大体でいいから計画を立てないと、行き当たりばったりだと物事は往々にして上手くいかないものよ」
「ごもっともで…」
道のりは長く思えたが、話はとんとん拍子に進んでいった。
イムナーは王都に向かう私の心配をしたが、それでもなお人になれる手段があるなら試してみたいと言ってくれた。余程私と密着エッチしたいらしい。可愛いやつめ。
そして王都に行くための手段。
コットンが王都行きの馬車停留所を見つけてくれた。停留所までそこそこ距離があるが、歩いて行ける距離にあるらしい。イムナーからもらったお金があるから行って帰って来るくらいは余裕がある。
『魔物を人の姿に変える魔法』について研究しているらしいリアさんの友人の名前は、エメユイ・メメエルド。本業でメイドをやっていて、趣味で色々研究していたらしい。「今は何やってるのか知らないけど」と付け加えていた。
エメユイさんについては仕事一筋で、ちょっとスカしてるけど可愛い性格してるとリアさんは語る。髪色は頻繁に変えてたから地毛は知らないらしい。エメユイさんについて分かったような分からないような感じだが、一先ず名前が分かればいくらでも探しようはあるだろう。
ということで、
「王都に行きたい人は手ー上げてー」
夕食後に王都行き参加者を募った。
手を挙げるは、リアさん、フィリアと……え、二人だけ?
「わ、私は…に、人間の、た、たくさんいる所……こ、怖くって……た、食べられちゃいそう」
これはシルちゃん。
いや、食べられないとは思うけどね?まあ、シルちゃんくらい可愛かったら危ない輩に目付けられそうだし、彼女の身の安全を考えたら妥当かもしれない。
「し、シーが行かないなら、私も残る」
これはコン。
「シー」はシルメリの愛称。コンとシルちゃんは最近非常に仲が良い。元々雰囲気も似ていたし、お互いに通じ合うことがあるのだろう。コンも人が沢山いる所は嫌いそうだし、本人が行きたくないなら無理強いはしない。
「コンが行かないなら、ルーも、残る。心配」
これはルーミャ。
分かる。この二人+コットンだけ残すのは不安だよね。ルーミャはいてくれるだけで安心感があるから来て欲しかったが、残ると言うなら本人の意思を尊重しましょう。
「…私も、二人が残るなら残ろっかな」
これはちょっと意外なイルリ。
フィリアをベアナルから助けた日からイルリはたまに少し変だ。人が変わったと言う程おかしいと言う訳ではないが、今みたいに暗い顔をするようになった。こういう時イルリなら「王都!?楽しそう!!私も行きたい!!」と身を乗り出しそうなものなのに、お年頃なのかな?
「私しかエメユイのこと知らないし、アカリちゃんと離れたくないから私は行くわ♡」
「アカリが行くなら絶対行く!!」
言うまでもなく、これはリアさんとフィリア。
安定の私ラブ。愛が重いぜ。
「あ、コットンは?」
「わ、私が心配だから……い、行けないって…停留所まで案内はするって」
皆に心配されるシルちゃん。本人には言えないが、解釈一致だ。
と言うことで、王都に向かうメンバーは、
私、フィリア、リアさん、
と言う、夜がちょっぴり不安で愉しみなメンバーになりました。
「二日も経っていないがな。まあ、元気そうで何よりだ」
昨日ぶりのイムナーと熱いハグを交わす。今日も彼女の皮膚はとても硬い。言ったら顎で小突かれるから言わないけど。
木々の壁に隠れて熱烈に舌を交えて、私がイムナーに寄りかかって穏やかな時間を過ごす。イムナーが何も言わなくても『威圧』を発動してくれているおかげで森の中でも平和な一時を楽しめる。
「それで、イムナーはいつくらいに巣を離れられるの?」
「一応繁殖期が終わるまではいて欲しいと言われてな。二十日後にはほぼ確実に晴れて自由の身になれる」
「二十日かぁ……」
長いようで短くて、やっぱり長い。
イムナーはこの世界に来て初めて出来た友達で、チュー友で、結構嫉妬深くて可愛い子だ。
早く一緒に住みたいのに、中々上手いこといかないものだ。
「と言うか、もし私が巣を離れてもシルメリの家には住めないのだろう?前に入れてくれなかったしな」
「それはだから、ちゃんとシルちゃんを説得して……今の所成果なしだけども」
エルフは、特にシルちゃんは異常に魔物が怖いらしくて、イムナーが無害な魔物って分かってもどうしても家まで上げるのは無理らしい。過去に何かあったのか分からないが、難儀なものである。
「やはり私は生まれる種族を間違えてしまったらしいな………まあ、この姿だからこそ役立ったこともあったが、やはり私もアカリに凭れ掛かったり密着して抱き合ったりしたい……」
「生まれる種族を間違えた」が最近のイムナーの口癖だ。
確かに、いくらお互いに種族に関係なく愛情を持ち合っていたとしても、この体格差で出来ることは限られている。精々舌を絡めたり、私が一方的にしがみついたりくらいしか出来ない。
私だってイムナーといちゃいちゃえっちしたい。
色々試してみたけどやっぱり体格差的に色々難しくてできなかったし、いよいよ私も深刻に考えるようになってきた。
イムナーが巣を離れるまでの二十日間。その間にどうにかイムナーを一時的にでも人っぽくする、もしくは私が蛇っぽくなれる薬とかスキルとか見つけられないだろうか。
「あー…どっかに魔物を人に変えるスキルか薬落ちてないかなー」
ご飯の席でふと悩みを漏らすと、
「聞いたことあるわよ」
答えたのはリア。
固まるアカリ。
「えっ、えええぇぇぇ!?ホント!?リアさん!!」
「あーちょっと待って。聞いたことがあるだけで、絶対にあるとは言えないわよ?」
「いやいやでもでも、もし可能性があるのなら是非聞きたいです!」
「えーと…過去に私冒険者してた時があって、その時王都で知り合った友人が確か『魔物を人の姿に変える魔法』?みたいなのを研究していたような?名前は何て言ったかな…」
『魔物を人の姿に変える魔法』ですと!?
そんなタイムリーなこと研究している人がいるなんて!
「じゃあその王都に行きましょう!今すぐに!!」
「アカリちゃん、一旦落ち着きましょ?聞いた感じだとまだイムナーちゃんはしばらく巣から離れられないのよね?だったら、まずはゆっくりと計画を立てた方がいいわ」
「計画」
アカリ、落ち着きます。
「まず、イムナーちゃんとこのことを話し合って、本当に行くかどうか決める。それから王都に行くための手段を探す。そして王都に着いてからどうやって私の友人を探すのか、大体でいいから計画を立てないと、行き当たりばったりだと物事は往々にして上手くいかないものよ」
「ごもっともで…」
道のりは長く思えたが、話はとんとん拍子に進んでいった。
イムナーは王都に向かう私の心配をしたが、それでもなお人になれる手段があるなら試してみたいと言ってくれた。余程私と密着エッチしたいらしい。可愛いやつめ。
そして王都に行くための手段。
コットンが王都行きの馬車停留所を見つけてくれた。停留所までそこそこ距離があるが、歩いて行ける距離にあるらしい。イムナーからもらったお金があるから行って帰って来るくらいは余裕がある。
『魔物を人の姿に変える魔法』について研究しているらしいリアさんの友人の名前は、エメユイ・メメエルド。本業でメイドをやっていて、趣味で色々研究していたらしい。「今は何やってるのか知らないけど」と付け加えていた。
エメユイさんについては仕事一筋で、ちょっとスカしてるけど可愛い性格してるとリアさんは語る。髪色は頻繁に変えてたから地毛は知らないらしい。エメユイさんについて分かったような分からないような感じだが、一先ず名前が分かればいくらでも探しようはあるだろう。
ということで、
「王都に行きたい人は手ー上げてー」
夕食後に王都行き参加者を募った。
手を挙げるは、リアさん、フィリアと……え、二人だけ?
「わ、私は…に、人間の、た、たくさんいる所……こ、怖くって……た、食べられちゃいそう」
これはシルちゃん。
いや、食べられないとは思うけどね?まあ、シルちゃんくらい可愛かったら危ない輩に目付けられそうだし、彼女の身の安全を考えたら妥当かもしれない。
「し、シーが行かないなら、私も残る」
これはコン。
「シー」はシルメリの愛称。コンとシルちゃんは最近非常に仲が良い。元々雰囲気も似ていたし、お互いに通じ合うことがあるのだろう。コンも人が沢山いる所は嫌いそうだし、本人が行きたくないなら無理強いはしない。
「コンが行かないなら、ルーも、残る。心配」
これはルーミャ。
分かる。この二人+コットンだけ残すのは不安だよね。ルーミャはいてくれるだけで安心感があるから来て欲しかったが、残ると言うなら本人の意思を尊重しましょう。
「…私も、二人が残るなら残ろっかな」
これはちょっと意外なイルリ。
フィリアをベアナルから助けた日からイルリはたまに少し変だ。人が変わったと言う程おかしいと言う訳ではないが、今みたいに暗い顔をするようになった。こういう時イルリなら「王都!?楽しそう!!私も行きたい!!」と身を乗り出しそうなものなのに、お年頃なのかな?
「私しかエメユイのこと知らないし、アカリちゃんと離れたくないから私は行くわ♡」
「アカリが行くなら絶対行く!!」
言うまでもなく、これはリアさんとフィリア。
安定の私ラブ。愛が重いぜ。
「あ、コットンは?」
「わ、私が心配だから……い、行けないって…停留所まで案内はするって」
皆に心配されるシルちゃん。本人には言えないが、解釈一致だ。
と言うことで、王都に向かうメンバーは、
私、フィリア、リアさん、
と言う、夜がちょっぴり不安で愉しみなメンバーになりました。
応援ありがとうございます!
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