星月の蝶

兎猫

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0章 夢の中

12話 いざ伝説の王国へ

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「ミディ達のお部屋」

 転移先はミディリシェル達も部屋だった。

「ミディちゃん、魔力使って大丈夫?」
「うん」
「自分の魔法具の効果は効かないとかそういうのか?」
「違うよ。というか、ゼノン本当に魔力ないの?」
「最近どっかの誰かがくれねぇからな」
「ふにゃ?忘れてた。ミディあり余ってるからあげる」

 最近はゼノンから言われる事がなかった。それもあって大事な事だが忘れてしまっていた。

 ミディリシェルはゼノンに抱きついた。

「どのくらい?」
「好きなだけ。フォルの加護のおかげで普通に過ごせてるけど、ミディには多すぎるから」
「いっきに貰えねぇから、暫くくっついとくか」
「うん」

 ゼノンの魔力回復方法は主に他者からの魔力譲渡。

 最近ではミディリシェル以外からは受け取らない。

 魔力を与えるため、ミディリシェルはゼノンとベッドの上に行き魔力を与えやすいように密着していた。

「主様、魔力回復薬一個につき仕事一つで売るよ」
「……三つで」
「只今お得サービス。三つ以上のご購入につき仕事が二つ付け出されます」
「フォル、変な商売やっちゃだめ」
「仕事が減ればミディと一緒の時間が増えるよ」
「どんどん売って」

 フォルとの時間が増えるという事はミディリシェルにとっても喜ばしい事だ。
 反対していたがそれを聞いてすぐに手のひらを返した。

 フォルがルーツエングに小瓶を三個渡した。

「アゼグ、リーミュナ」
「良いの?仕事増やしてまで」
「気にしなくて良い」
「……今度の会議の欠席許可とリードの軍部移動の話の白紙。それで良いにしてあげる」
「フォル可愛い」
「……双子姫の教育権限追加で。何しても口出ししないって条件付き」
「良い……」

 フォルの要求を聞いた瞬間、ミディリシェルはゼノンと一緒に反対運動をベッドの上でした。

 魔法で作った反対と書かれた旗を二人で一緒に振っている。

 自分達の為にも口出しの条件だけは反対しなければならなかった。

「ゼノン、逃亡先探しとこう」
「アスティディアにでも夜逃げするか?」
「うん」

 口出ししない権利など渡される前に逃げる計画を立て始めた。

「アスティディアって御子が築いた王国か」
「御子が?行ってみたい」
「今から行ってみる?」

 フォルが転移魔法を使い、アスティディアの入り口へ転移した。

     *******

 ミディリシェルは辺りを見回したが、ゼノン以外はいない。

「ふぇ?みんなは?」
「いねぇな。俺らだけ転移した?」
「のかも。とりあえず、王都に行ってみようよ」
「そうだな」

 どの方角を歩けば王都へ着くのか。その手がかりとなる看板が目の前に設置されていた。

 看板を頼りにゼノンと一緒に王都へ向かった。

     *******

「ここ通るの?いやなんだけど」
「けど、看板にはここだって書いてある」
「むにゅぅ。頑張る」

 看板の通りに行くと、沼地が見えた。
 近くにある看板にここを通ると書いてある。

 服が汚れる以前にこんな場所に好き好んで入ろうとは思えない。

 ミディリシェル達は沼地の手前で立ち尽くしていた。

「ゼノンから行ってよ」
「いつもお前が先に行ってんだからお前から行けよ」
「おにぃちゃんでしょ」
「双子だから関係ねぇよ」
「ふにゃ?」

 二人は顔を見合わせて首を傾げた。

「どうして双子って双子姫とは言われるけど、あれは兄弟御子がそう呼ばれるってだけで双子なんて一度も」
「けど、双子だって知ってたよな?」
「うん。ミディ達は双子でいつも一緒にいた」
「ああ。アスティディアでミディが俺の事を守ってくれて以来ミディの頭にツノが生えて髪の長さと髪と瞳の色が変わった」

 記憶にはなかったはずの事を当たり前のように口にする。知らない記憶が突如存在を顕にした。

 その記憶は何故か鮮明に思い出せる。

 ミディリシェルは戸惑いながらも記憶の整理をした。

「どうしてだろ」
「知らね」
「とりあえず、ここ入んないと。アスティディアに行けば何か分かるかもだよ」

『最後までずっと僕と一緒にいて』

「ふにゅ?」
「どうしたんだ?」
「ちょっと昔の事思い出したの。恥ずかしいけど、記憶送るよ」

 二人の額が重なる。

 ミディリシェルとゼノンが使える特殊な魔法、共有。その魔法は触れ合う事で発動する。

 これを使えば互いの感覚、感情、記憶等を他の魔法なしで共有する事ができる。

 ミディリシェルは共有を使い、ゼノンに記憶の映像を見せた。
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