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蠢く闇
疑心
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次に訪れたのは海陽の病室だった。
白暗と黒明に気に入られた恋歌は少し嬉しそう向かう時とは違い軽い足取りで歩いて行く。
「ねぇ恋歌君、さっきのって……」
声を掛けたのは雪成だ。
「秋良先生の事ですか??本気ですよ。僕。……だからこそ、どうして貴方なのかが僕には理解出来ません。」
恋歌には二人の関係性が手に取るように見えているのだろう。
全てを見透かしたような発言に、雪成の心拍数は上がる。
それと共に何か嫌な予感のようなものも感じていた。
「そうなんだ~頑張ってね!僕秋良先生なんてこれっぽっちも眼中に無いから!」
これが精一杯の虚勢だ。
言っている最中も、ずっと氷の針で心をチクチクと刺されているような、そんな涙が出るような気持ちがとめどなく募っていく。
しかし、そんな雪成の気持ちとは裏腹に、雪成の虚勢を秋良に選ばれた者の余裕だと受け取った恋歌の闘争心に火を付けた。
”やっぱり邪魔だなぁ……桃江雪成”
そう内心憎悪で溢れる気持ちを笑顔に変え、頑張ります!と言っていた。
海陽の病室前へと着くと、雪成は一旦恋歌を病室の外へと待機させ、中へと入る。
心地の良い陽だまりに包まれていて、心地が良い。
そんな中、ベッドに腰掛け本を読む青年が一人。
海陽だ。
あれから目覚しい回復を続けている彼はもう退院まで決まっている。
「海陽君。回診だよ~」
中に入ってきたことにすら気づかないほど本に夢中になっていたのか、それとも雪成だったから気を許していたのか、どちらであろうと彼はもう大丈夫だろう。
「あ、雪成先生!わざわざありがとうな。そろそろ俺診察室行くって」
声を掛けられ海陽は雪成の方を向く。
その姿はとても元気になっているように見える。
「いいのいいの。まだ万全じゃないし……。といってもそんな君に研修医君を紹介しよう!入ってもらっても大丈夫かな?」
海陽は研修医?と首を傾げるも、すぐにいいよ、と頷いた。
ありがとう。と笑いながら海陽の頭を撫で、入っていいよ、と扉の外へと声を掛ける。
すると恋歌は「はい!」と明るく返事をし、スライドドアを開け、入室した。
「初めまして、僕、今日から雪成先生と一緒に行動させて貰うことになった木山恋歌です!しばらくよろしくね!」
明らかによろしくしたく無い海陽だったが、これも退院への試練だと思い、短く”よろしく”と答えた。
「じゃあ挨拶も終わったし、今日は軽くお話ししようか。」
こうして雪成にとって何事もない平凡な日常は過ぎていった。
二日たち、一週間がたち、一ヶ月が過ぎた頃、事件は起こった。
白暗と黒明に気に入られた恋歌は少し嬉しそう向かう時とは違い軽い足取りで歩いて行く。
「ねぇ恋歌君、さっきのって……」
声を掛けたのは雪成だ。
「秋良先生の事ですか??本気ですよ。僕。……だからこそ、どうして貴方なのかが僕には理解出来ません。」
恋歌には二人の関係性が手に取るように見えているのだろう。
全てを見透かしたような発言に、雪成の心拍数は上がる。
それと共に何か嫌な予感のようなものも感じていた。
「そうなんだ~頑張ってね!僕秋良先生なんてこれっぽっちも眼中に無いから!」
これが精一杯の虚勢だ。
言っている最中も、ずっと氷の針で心をチクチクと刺されているような、そんな涙が出るような気持ちがとめどなく募っていく。
しかし、そんな雪成の気持ちとは裏腹に、雪成の虚勢を秋良に選ばれた者の余裕だと受け取った恋歌の闘争心に火を付けた。
”やっぱり邪魔だなぁ……桃江雪成”
そう内心憎悪で溢れる気持ちを笑顔に変え、頑張ります!と言っていた。
海陽の病室前へと着くと、雪成は一旦恋歌を病室の外へと待機させ、中へと入る。
心地の良い陽だまりに包まれていて、心地が良い。
そんな中、ベッドに腰掛け本を読む青年が一人。
海陽だ。
あれから目覚しい回復を続けている彼はもう退院まで決まっている。
「海陽君。回診だよ~」
中に入ってきたことにすら気づかないほど本に夢中になっていたのか、それとも雪成だったから気を許していたのか、どちらであろうと彼はもう大丈夫だろう。
「あ、雪成先生!わざわざありがとうな。そろそろ俺診察室行くって」
声を掛けられ海陽は雪成の方を向く。
その姿はとても元気になっているように見える。
「いいのいいの。まだ万全じゃないし……。といってもそんな君に研修医君を紹介しよう!入ってもらっても大丈夫かな?」
海陽は研修医?と首を傾げるも、すぐにいいよ、と頷いた。
ありがとう。と笑いながら海陽の頭を撫で、入っていいよ、と扉の外へと声を掛ける。
すると恋歌は「はい!」と明るく返事をし、スライドドアを開け、入室した。
「初めまして、僕、今日から雪成先生と一緒に行動させて貰うことになった木山恋歌です!しばらくよろしくね!」
明らかによろしくしたく無い海陽だったが、これも退院への試練だと思い、短く”よろしく”と答えた。
「じゃあ挨拶も終わったし、今日は軽くお話ししようか。」
こうして雪成にとって何事もない平凡な日常は過ぎていった。
二日たち、一週間がたち、一ヶ月が過ぎた頃、事件は起こった。
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