何故ですか? 彼にだけ『溺愛』スキルが効きません!

「メル・メロール! きみとの婚約を破棄させてもらう!」

 わたしには、誰にも言えない秘密があります。
 それは、わたしが持つスキルについてです。

「だが、何も不安に感じることはない! これはあくまでも、形だけの婚約破棄だ! きみへの愛が途切れることは未来永劫あり得ないということを、今ここで誓おう!」

 わたしが持つスキル、それは……。

「だから、メル。我が兄を亡き者にし、王位継承権を手中に収めたあかつきには、もう一度きみに結婚を申し込ませてほしい! これはきっと長い道のりになる……だが、たとえそうだとしても、待っていてくれるかい?」

 ――『溺愛』
 わたしと目を合わせた人は、例外なくわたしを溺愛したくてたまらなくなる。

 このスキルこそが、わたしが持つ誰にも言えない秘密なのです。

 故に、わたしは目を合わせたまま、笑顔で言葉を返します。
 わたしを溺愛してくださる殿方の期待を決して裏切らないために……。

「……ええ。喜んで」
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