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第6章

第27話 お嬢様の執事は気持ちを確かめる

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シアは、複雑な気持ちで俯いた。
すると、ネオがすっと手を伸ばした。


「――…っ!」



触れたのは、シアの胸元。
クライムに舐められたせいで、まだ濡れている。

うっすらと形が透けて見える。



「誰かのものになってしまう前に、私のものにしなければならないですから――…」

「――…っ、あっ」



ネオの指先が、ツンッと胸の先を突く。
ピリッと電気が走る。

 
シアの甘い声に、ネオはにっこりと笑みを向けた。



「短期間の不在予定でしたが、思いのほか、寂しかったようで――…」

「ち、違うわ」

「本当ですか?クライム様に、体を慰めていただくくらい、寂しかったのでは?」

「ちが…っ!あれは、クライム兄様が…っ」

「――…そういうことにしておきましょう」



くすくすと笑いながら、ネオが意地悪な笑みを浮かべる。

いつものように話せることに、安堵の息をもらした。


 
白い手袋が、そっと、両頬を包み込む。
触れた手からは、布越しでもあたたかさが伝わる。
 


「いまはまだ、執事の分際で、生意気だと思われるかもしれませんが――…」

「…なに?」

「もう一度、おっしゃってください」



頼まれた言葉が、なにを指すのか理解できずに、首をかしげた。


 
なにを、もう一度?



瞳を丸くしていると、指先が唇をなぞった。
 


 
「理屈とかではなく、生活すべてに私めが存在していると――…」
 
 
「い、いってない…!っていうか、どこから聞いてたの…!?」



慌てているシアを見て、目を細める。

ネオは、親指で、そっと唇をなぞった。
 


「このやわらかな唇で、そう申したではありませんか」

「――っ!」
 


鼓動が速まる。
動揺したのは、端整な顔がいつも以上に近づいていたから…。


 
「私は、うぬぼれてもよろしいのでしょうか」

「な、…にが?」

「シアお嬢様にとって、私は必要不可欠である、と」
 


うぬぼれるもなにも…。


シアにとってネオは、なくてはならない存在。
離れていた期間が幾億年にも感じるほど、そばにいなければ不安ばかりが募る。


 
だが――…



 
 
シアは気持ちに流されぬよう、わずかに残された力で、ゆっくりと首をふった。


 
「…あんな醜態、曝させたくせに」

しぼり出した言葉に、ネオが眉をひそめた。


「醜態とは?」

「…っ!しらばっくれないでよ!!」

「申し訳ありませんが、覚えていないもので…。シアお嬢様の、可愛らしい口で、説明してくださいませんか?」



おねだりをするような、掠れた声が、色気を増す。

ネオの声が切なくなると、胸がしめつけられる。
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