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3章 商品チート

42話 どうして作れない

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「ジェイク様、密偵から報告が来ました」


ついに来たかっと、ジェイクサー商会の長であるワタシ【ジェイク・サーサロ】は、部下のシャシャルダから手紙を受け取り読み上げた。
そこには、訳の分からない用語が書かれていて、首を傾げてしまった。


「シャシャルダ、加工石とはなんだ?」
「それが良く分からないのです」
「それにこれだ、どうやって鉱石を繊維にするのだ」
「さ、さぁ?」


武具を作るのに、鉱石はインゴットにしてから使う物で、溶かす事はあっても繊維にはしないし、出来る訳がない。
更に加工石と言う良く分からない石を使い、魔石と繊維にした鉱石を編むと書かれていて、分からない事だらけだ。


「こいつは頭がおかしいのか?金属を編むとかどうやるんだ」
「炉に手を直接入れる技術があるのでしょうか?」
「モンスターには火に強い者がいるが、だとしても編む為の道具が無いだろう」
「それに、魔石から魔力抽出するなんて、相当な技術者がいないと出来ませんよ」


相手はそれだけの職人を持っているのがわかり、相当な強敵が相手なのを理解した。
しかし、相手の品を作るには加工石と言う石が必要で、ワタシはそれを調べる事にして数日を費やした。


「何故だ、何故見つからない」
「それが、どこの鉱山を探しても、加工石と言う石は見つからないのです」
「それならダンジョンだろう、あそこにはダンジョンがある」
「勿論探しました、しかし冒険者ギルドに聞いても無かったんです」


どういうことなのだと頭を抱えたワタシは、どうやったら手に入るのかと考え、盗むことを考えた。
そして、更に数日を掛けやっと加工石と言う石を手に入れたのだが、尖った水晶の様な石だったよ。


「なんとも綺麗だな」
「魔力の結晶体の様で、これには濃密な魔力が込められているそうです」
「ふむ、ではこれの量産をするのだ」
「そ、それがですねジェイク様・・・これをどうすれば作れるのか分からないのです」


な、なんだそれはっと、ワタシは唖然としてしまった。
現物があり、鑑定スキルで調べれば良いと思っていたが、魔力の結晶体と出るだけだったらしい。


「つまり、どうやったのかは分からないのか」
「そう言う事ですジェイク様」
「それでは盗んだ意味が無いではないか」
「ですがジェイク様、魔力結晶体と言うのであれば、魔石か魔力を用いる事が考えられます」


今から研究すれば良いとシャシャルダが提案してきたが、それではあまりにも遅すぎる。
いったいどうすれば良いのか、残された方法はもう1つしかないとワタシは宣言し、シャシャルダが驚いて復唱して来た。


「誘拐ですか」
「人聞きが悪いぞシャシャルダ、奴隷が商品を作っているらしいから、買おうと言っているんだ」
「ああ、奴隷は物でしたね」
「そう言う事だ、技術者を買い取れ」


シャシャルダが納得し、奴隷商をあたったが、どうしてかそういった者たちは売っていなかった。
そして、ある商会に全てを取られている事が分かり、先回りされているのが分かった。


「くそっ!忌々しいリイル商会め」
「奴隷を教育しているのでしょう、なかなかやりますね」
「ああ・・・しかし、これでは買い取る事が出来ないぞ」
「その事ですがジェイク様、奴隷を買ってから教育をしているのであれば、加工石と言う石は魔石を使っている可能性が高いです」


そう言う事なら、数も必要になるだろうと、ワタシはシャシャルダに研究の始動を命じた。
そして、また数日が経ったが、研究は困難を極め、上手くいかないと報告がなされた。


「シャシャルダ、どういうことだ?」
「それがですね、魔石からの抽出が上手くいかないんです、どうしても結晶化しません」
「やり方が違うと言うのか?」
「程度の低い奴隷を使っているのですから、方法は間違いないと思います、ですがダメなのです」


奴隷を使っているのだからと、シャシャルダも方法はそれしか考えられず、どうしてなのか悩んでいる感じだ。
それなら、商会の馬車を襲撃しようと計画を立てたが、シャシャルダは既に行っていて、その結果は失敗したようだった。


「相手は手強い訳だな」
「手強いなんてモノではないですよジェイク様、未知の技術に凄腕の護衛と、ほんとに強敵です」
「そうだな・・・しかし、ワタシなら勝てる、そうだろうシャシャルダ」
「そうかもしれませんが、無傷とはいかないかも」


それだけの差を味わった様で、シャシャルダはかなり弱腰だ。
そこでワタシは、近々その商会がこちらに手を伸ばしてくる情報を掴んでいたので、全てを取り込んでしまおうと提案した。


「っというと、店を奪うのですね」
「そう言う事だ、あいつらがここに来ると言うのなら、それを全て奪ってやる」
「では、ギルドで準備します」
「ああ、それと領主にも声を掛けておけよ」


それだけの大物だろうから、ワタシも本気で行くことにしたのだ。
全てを完璧に準備して、逃がさぬように指示を出したのだ。


「それと、途中では仕掛けるなよ、悟られる」
「分かりましたジェイク様」
「気づかれても、こちらには権力と言う最大の武器がある、1つの商会程度では何も出来ないさ」


シャシャルダが恐れていたから、そこで落ち着かせ失敗はあり得ないと元気づけたよ。
商会の責任者にサインをさせる事、それが成功の道と伝えたんだ。


「気づかれませんかね?」
「来るのが商会の長なら気付くだろう・・・しかし、ここに向かっているのは奴隷上がりの獣だ」
「そこまでお調べになっているんですね」
「そう言う事だ、何も知らずにサインをして、店を整えこれからって時に奪ってやれ」


シャシャルダは、喜んで返事をしてくれた。
相手が頭の悪い獣人の奴隷だった女だから当然で、そんな奴に負ける訳がないと宣言したんだ。


「そう、ここから始まるのだよシャシャルダ」
「なるほど、そいつらを使って生産をするんですね」
「そう言う事だ、出来たばかりの商会らしいからな、数を作れれば余裕で勝てる」


量産出来ればこっちの物と、ワタシは勝ちを確信したんだ。
最悪、貴族に対する不敬罪でも良いのだから、こちらが負けるはずがない。


「気楽に行けシャシャルダ、ワタシたちは負けない」
「そうですね、分かりました」
「良し、可愛いウサギ狩りの始まりだぞ」
「は、はははは」

シャシャルダが笑ったが、ウサギ獣人が相手で他にも奴隷が沢山だから、ワタシたちには遊びの様なモノだ。
遊んで大金が転がり込んでくると思い、そいつらが来るのを歓迎したんだ。
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