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幸せのフォースステップ

57歩目 西の山脈都市ドラルダ

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「がんばれアマンダー!」

「くそー!ちょこまかと」


海を超え陸に着いた僕たちは西に進んでいます、ゴツゴツとした山を登り、この国の王都までもう少しです、山道だけど王都までの道だから馬車でも楽に通れます、今アマンダがハンターバードと言う、空を飛んでいるモンスターと戦っていて苦戦中です。


「ほらほらアマンダ、早くしないとワタシが変わっちゃうわよ」


馬車を運転しているイーシャがニコニコしてアマンダを焚き付けます、アマンダはそれを聞き武技を使って倒そうとしています、でもハンターバードは旋回して武技を躱していますよ。


「ステータスでは勝ってるのに、こういった不利な状況もあるんだね、今後の為に対策を考えておかなくちゃ」


アマンダの戦いを見て、僕はうんうん頷いて今後の訓練を計画します、結局ハンターバードは仕留められず逃げて行きました、イーシャが弓を構えだしたからです。


「ちぇっもう少しだったのに」

「良く言うわよアマンダ、30分は戦ってたでしょあなた」


イーシャが手綱を握り直してアマンダに抗議しています、アマンダも横を歩いてちょっと申し訳なさそうですね。


「アマンダは遠距離の武技が苦手だね、今後は練習しよう」

「そうだな・・・しかしこんな山に王都を作るなんて、どういう考えなんだ?」


アマンダがちょっと嫌そうな顔をした後、話を逸らす感じで言ってきました、僕の訓練はちょっと大変だからまずいと思ったんでしょう、気持ちは分かります、でも道具作りを主体とするドワーフだからこその場所だよね。


「ここでは鉱石が沢山取れるんだ、珍しいのもきっと採れるんだよ」


簡単に説明しました、ここに来る前の街で聞いた話しだけど、オリハルコンは取れないって話しです、良く取れるのはミスリルで他は金銀などがちょっと希少な物ですね。


「そう言えばアードンで聞いた事があったな、今向かっているドラルダの職人が作った武器防具は、とても出来が良く高値で取引されているそうだぞ」

「それ、ワタシも知ってるわ、同じミスリルでも高炉の出来が違うからって話してた、高温で溶かして不純物が入らない様に作れるんだって、すごく性能が良いみたいよ」


イーシャがお兄さんの弓は、そのドラルダの職人から買ったと自慢しています、あの時の事を思い返してみると、とても高そうな弓だなぁって感じますね。


「通りで一人だけキラキラした弓を持ってたと思ったよ、さすが王族ってことなのかな」

「そうよ、そしてワタシとこういった関係のアユムもすごいの」


イーシャが僕に抱き着いてきます、僕は仲間であってそう言った関係ではありません、一緒に寝る時もありますが手を出していません。
そんな会話をして進み、昼食にはイーシャが倒したハンターバードの焼き鳥と、からっと揚げたから揚げをみんなで食べて目的地に到着です。


「すごく並んでるね、大変そうだ」


門の前に着くと、僕たちの前にはすごい人数の人が並んでいます、正面に見えるドラルダの造りは要塞のみたいに見えます。
山を削り建物を建設出来るように平地し、残った山の部分を城の形を成形しています、きっと中も複雑に作られたりしているんだろうね。


「それはそうだぞアユム、ここは有名だからな」


アマンダがどうしてかドヤ顔です、魔王軍のジャースワが攻めてきても倒せたか怪しいとか言っています、あいつは攻撃が効かないような事を言っていたので、きっと攻められていたら時間を掛けて落とされていましたよ。


「それにしても多いわね、これじゃ今日中に入れないんじゃないの?」


イーシャがあくびをしながら手綱を握っています、一緒に芋虫君もあくびをしてますね、僕は前を見ますが100人はいるのでまだまだ掛かりそうです。


「ドルードさんたちもここに来るんだよね?」

「それは違うだろ、ここは武器などを主流に作ってるからな、出来上がった酒を運んでくるだけじゃねぇか?」


アマンダがそう言って、僕たちが寄らなかったポーントって街の名前を言いました、そこはお酒を主流に作っている街なんですよ。


「そうかぁ・・・昼食を摂って1時間だけど、今のうちにおやつでも用意しておこうか」


僕は再会したら怒られそうかもって思いながら話を変えます、ふたりがそれを聞くと良い笑顔になりましたよ。


「いいねぇ~アユムのお菓子は食事と同じでうまいからな」


早速とばかりに馬車に乗るとアマンダが嬉しそうです、イーシャも手綱を放さないですがきっと同じ顔をしていますよ、耳が上下しています、僕は期待してねっと告げて馬車の中の台所に立ちます。


「さて何を作ろうかな、船でフルーツ関係の栽培は出来てるからそれを使ってみたいね・・・片手に持って食べれる甘い物」


僕はそう考えクレープを焼き始めます、トッピングはアイスにクリーム、果物はイチゴにバナナと種類を沢山作り、しょっぱいモノも用意しました。


「チーズにソーセージを入れてっと、良し!これだけ作れば平気でしょ」


1人4個ずつ作って僕は外に出ました、大体30分位なので列はまだまだ伸びています、僕はみんなに食べ方を教えてまずはイチゴクリームのクレープです。


「うまっ!?何だこの食べ物!」

「ほんと、イチゴの酸味とクリームの甘さがとても良いわ」


ふたりはとても気に入ってくれたようで勢いが衰えずに食べ終わります、そして次はバナナチョコクリームです。


「今度はずっと甘い・・・だが美味い!」

「ほんとね、バナナの甘さをチョコクリームが一層際立たせてるわ」


そう言ってふたりは直ぐに食べ終わってしまいました、そして僕は禁断の手順を踏んだんです。


「じゃあ甘いモノの次はしょっぱい物って事で、ソーセージチーズクレープだよ」

「「はい?」」


ふたりは頭を傾げます、おやつと言ったら甘いモノと前に僕が言っていたので、話が違うって不思議に思っているんです、でもおせんべいもあるのでそう言った方向のお菓子と説明しました。


「こ、これも旨いな!」

「ほんとに美味しい・・・それに甘いモノを食べた口の中がしょっぱさで占領されたわ、もう一度甘いモノが食べたくなる」


ふたりがあっという間に食べ終わってしまいました、僕はそこでシメのバニラアイスのクレープを出します、これにはキウイやモモと色々なフルーツを沢山入れています。


「ちょっちょっとアユム!?これは反則よ!」


イーシャがクレープを見て叫びました、しょっぱいモノの後にまた甘いモノを出したので、美味しさが上がると分かっている顔です、アマンダも同じ感じですよ。


「甘いモノの後にしょっぱいモノ、そしてまた甘いモノを食べると、それはもう止められない無限に続く美味しさのループが来るんだ、あまり続けると体に悪いから今日はこれだけね」


僕の解説を聞き2人が一口食べました、そして予想通りあっという間に間食です、僕はふたりの食べっぷりを見て笑顔で食べましたよ。


「はぁ~美味かった」

「ほんとねぇ~」


ふたり私服の顔のままで遠くを見ています、僕も嬉しくて笑顔ですよ、列はそれなりに進みましたがもう少し掛かりそうだと前を見ます、そこで僕たちの前に並んでいた子供と目があってしまいましたよ。


「こんにちは~」

「ここ、こんにちは」


僕は手を軽く振って挨拶をしました、男の子はちょっと困った感じで返してくれます、ちょっとオドオドしているので人見知りなのかなって思い、しゃがんで目線を合わせ自己紹介をしたんだ、ついでに飴を出して見せました。


「僕はアユムって言うんだ、これはお近づきの印のアメだよ、良かったら貰ってくれるかな?」


僕の手を見て、男の子が一緒にいた大きなリュックをしょっている母親を見ています、僕は笑顔で母親の分も出しましたよ。


「お母さんがアネーシャさんで、君がタナトって言うんだね」


飴を渡してふたりの名前を聞きました、ついでにちょっと世間話をします、ふたりは外の岩場でノーマルバードと言う、鳥モンスターの卵を取りに行っていたそうです。


「明日の朝ごはんに使うんだ、オレは母さんの護衛なんだぞ」

「お手伝いなんて、タナトは偉いねぇ~」


僕はタナトの頭をヨシヨシって撫でました、すると肩まで伸びていた長い髪の中から、茶色い立派なウサギミミが飛び出て来たんです、僕がその立ち上がったミミを見ると、タナトは咄嗟に手で耳を後ろに隠しました、そしてかなり怯えています、僕が人種だからでしょうね。


「可愛い耳だねタナト、お母さんもそうなの?」


僕が気にしない素振りを見せたので、タナトもアネーシャさんも驚いています、アネーシャさんの方は人種で、ドラルダで仕事をしている父親がウサギ獣人だそうですよ。


「外に卵を取りに行くなんて危なくないのか?ドラルダにも売っているだろう」


僕がタナトを撫でているとアマンダも話に入ってきて、僕の後ろから声を掛けてきました、あまり近づくとタナトが怖がってしまうのでまだ少し遠いです。


「それは・・・娘の治療に使うんです」


アネーシャさんが言うには、娘さんはちょっと体が弱く体調を崩しているそうです、同じ目玉焼きに見せて栄養の高い物を出したいそうですよ。


「なるほど、だから朝食って言ったのね、それで娘ちゃんがターナちゃんでお父さんがナナガイさんって言うのね」


イーシャが御者席から顔だけ向けて答えます、エルフは耳が良いと言っていたので聞いていたんでしょう、タナトがミミを立てて驚き、アネーシャさんの後ろに隠れてしまったよ、やっぱり人見知りなんですね。


「なぁアユム、これで母親の護衛が務まっているのか?アタシなら逆に心配だぞ」


タナトが少し離れたので、アマンダが心配そうに耳打ちしてきました、タナトの年齢は画面を見て分かっていて8歳です、きっとお手伝いをしているって見栄を張ってるんですよ。


「良いじゃんアマンダ、可愛いんだからさ・・・それよりも、僕はこっちの方が心配だよ」


タナトの年齢をタップして覗いた時、身体の状態も見れました、二人は空腹と出ているんです、アマンダにそれをぼそっと話し説明したよ。

きっと僕と目が合ったのはそれが原因です、羨ましかったんだ。


「なるほどな、それなら早く作ってやれよアユム、どうせそのつもりだろ?」


アマンダが笑いながら僕の両肩に手を置き馬車の方に押してきました、僕は笑顔で馬車に入ってクレープを作り始めたよ。


「どうせアマンダとイーシャも食べたそうにするだろうし、ちょっと多めに作っておこうかな」


僕はさっきの食べる勢いを思い出し多めにしょっぱい方を多めに作りました、自分の分ももちろん作りましたよ。
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