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レティシアにその気はない

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飲み物を受け取り、しばらく壁の花と化していたレティシア。何度となく令息達が声をかけてくる。その都度体調が良くなくてと言って誤魔化していた。個室の休憩所があるからと、どこかの伯爵家の令息から手を取られた時に、慌てた様子でウィルフレッドが現れた。


「ご令嬢、どうされました?体調がすぐれないようでしたら、辺境伯のところへお連れしますが?」

「そうですわね・・・気分がすぐれませんもの。そうしたいですわ」

「えっ?個室で休憩した方がいいよ。僕が案内するよ?」


令息は個室に連れ込もうと必死になっていたが、ウィルフレッドの漂わせた冷気に耐えられず足速に去っていった。


「アバンス団長様、ありがとうござました」

「いや、止めていいものかわからなかったが・・・君に触れる男が許せなかっただけだ、失礼する」


ウィルフレッドは踵を返し去って行った。レティシアは去っていく背中をじっと見つめていた。


ホールに戻ると、ヴィンセントの気を引こうと絡みついている姉のマリーリアと目があい、しっかりと睨みつけられた。


「私に敵意を剥き出しにしても意味ないわよ」


ぼそっと呟くと、そのままホールを進んでいく。辺境伯である父の姿を探しているところに、ヴィンセントが追ってくる。姉のマリーリアが絡みついているが、見向きもしていない様子だ。


「レティシア嬢、私と一曲踊らないか?」


マリーリアの手を払うと、レティシアの手を取ろうとヴィンセントが近寄ってくる。


「お断りしますわ」

「そんなに照れなくともいいではないか、一曲共にすれば次もとなるさ、さぁ」

「結構です」


レティシアはその場から離れようと急足で進んでいく。


「レティシア嬢、待ってくれ!」


大声で呼び止めるヴィンセントの声に会場がしんと静まり返る。一気に注目を集める事になってしまった。それでもレティシアは進む足を止めない。


「待つんだ!」


すぐ側で聞こえた声と同時に、腕を取られて立ち止まってしまった。振り向くとヴィンセントが腕を掴んでいた。




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次回

君はこのまま私の妃になれ

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