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この唇に触れていいのは

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フロアを出た二人の元に、近衛騎士が駆け寄る。


「殿下、報告申し上げます」

「何だ」

「ベルモンド辺境伯令嬢と、ミシェリア王女殿下が一緒に客間に入られたのを目撃した者がおりました」

「そうか・・・ミシェリア?」

「殿下!急ぎましょう」

「ウィルフレッド?だが、見かけたのはミシェリアと言っている。マクシミリオンではないぞ?」

「嵌められたんです。ミシェリア王女殿下がシアをフロアから連れ出したんです。その後にランドルスト公爵令息に引き合わせたと考えられます」

「そうか・・・近衛!案内しろ!」


報告に来た近衛騎士が走る後ろをヴィンセントとウィルフレッドがついていく。


王族の居住区域にほど近い客間のドアの前に着くと、中から声がした。


「やめてください、離してください!」


レティシアの声だった。ウィルフレッドが耐えきれず、鍵のかかったドアを蹴破って中に入ると、唇が触れそうなほどのに顔を近づけたマクシミリオンに覆いかぶさられたレティシアが見えた。


「貴様っ!!」

「なっ・・・うぐっ」


ウィルフレッドが瞬時に駆け寄り、マクシミリオンの腕を掴み、力ずくで引き剥がすと、近衛騎士がいる方向へと投げ飛ばした。


「何をする!」

「そんなに人肌が恋しいなら、近衛にでも抱きしめて貰っていろ!」

「何だと!」

「マクシミリオン、やめないか」

「で、殿下!なぜここに・・・」

「レティシア嬢の危機だと聞いて駆けつけたまでだ。選ばれなかったとはいえ、好いた女の危機に駆けつけない男など格好がつかんからな」


ヴィンセントとマクシミリオンが話している間に、ウィルフレッドはレティシアの元に駆け寄る。


「・・・ウィル」

「遅くなった、すまない」

「いいえ、私がいけなかったの。ミシェリア王女殿下を信じてついてきてしまったんだから・・・」

「シア・・・」


ウィルフレッドは、ソファに押し倒されていたレティシアを抱き起こすと、しっかりと抱きしめる。気丈に振る舞ってはいたが、レティシアは小刻みに震えていた。


「・・・何をされた?」

「えっ?・・・あぁ・・・髪にキス・・・されたわね」

「ちっ・・・触れていいのは俺だけだ・・・」

「・・・」

「唇にはされてないんだな?」

「えぇ・・・」

「そうか・・・この唇に触れていいのは」


ウィルフレッドはゆっくりとレティシアの唇を塞ぐ。


「ん・・・」

「俺だけだ」


ウィルフレッドは耐えきれず、何度も何度もキスをする。ヴィンセントとウィルフレッドと共に部屋に雪崩れ込んでいた近衛騎士達は、自分達の騎士団長の姿に驚いて見入っている。


「おい、ウィルフレッド・・・私達もいるんだが?」

「そうでした・・・邪魔しないでください」

「おい、何故そうなるんだ!ここは、殿下が私を助けてくれたとレティシア嬢に惚れ直されるところだろう!」

「そんな展開ありませんよ。シアは俺だけのものです。たとで殿下であっても渡しません」

「レティシア嬢、助けにきたぞ?さぁ、私の胸においで?」

「結構です」

「うっ・・・ダメか・・・」


レティシアがニコリと微笑む姿にヴィンセントは項垂れ、近衛騎士に慰められていた。




ーーーーーーーーーーーーーー


次回

【ウィルフレッドside】

怖かったんだな・・・
もう大丈夫だ














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