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気に入らない
しおりを挟む地面にうずくまってガタガタと震えていたイザベラは、騎士達に拘束され連行されていった。
「・・・シア・・・」
「ウィル!」
「・・・怪我、して・・・ないか?」
「私は大丈夫よ、でもウィルが・・・」
「よか・・・た」
ウィルフレッドの頭がガクッと傾いた。
「ウィル!ウィル!!嫌よ!!嫌!!」
「ご令嬢、失礼します!」
一人の騎士がウィルフレッドの脈をとり、呼吸を確かめる。
「ご令嬢、大丈夫です。出血が多く、気を失っているだけのようです。止血の処理をして、安静にすれば大丈夫です。公爵家の屋敷までは我々が運びましょう」
騎士達によって、ウィルフレッドはアバンス公爵家の屋敷に運ばれた。
「目を覚まされた時に、ご令嬢がいないと心配なさるでしょうから、ついていて差し上げてください」
「はい、もちろんです、本当にありがとうございました」
ウィルフレッドは寝台に寝かせられているものの、背中の傷が深いため、仰向けにはできず横向きに寝かさせられていた。レティシアは床に膝をつき寝台へと縋り付くようにウィルフレッドの側にいた。中々目を覚まさないまま、丸二日が経った。
「ウィル・・・起きてよ・・・」
目の前で眠っているウィルフレッドに語りかける。このまま目が覚めないのではないか。レティシアは時間と共に段々と不安が増していた。
「また好きって言って・・・愛してるって言ってよ・・・」
何を話しかけても反応がないまま。
「・・・また抱きしめてよ・・・」
「・・・ふっ・・・ククッ」
「・・・えっ?」
項垂れていたレティシアの頭の上から、漏れるような声が聞こえ、顔をあげる。そこには穏やかに、慈しむような笑みを浮かべたウィルフレッドがいた。
「ウィル!?」
「あぁ、すまない。あまりにも可愛いおねだりが次々と聞こえてきてな。目が覚めたと言い出せなかった」
「は、早く言ってよ!!別に途中で起きてるって言ってくれてよかったじゃない!!」
「そんなに怒らないでくれ。しかし・・・俺の妻は、何故泣いているんだ?」
「妻・・・もう・・・ウィル、丸二日も眠っていたのよ」
「そうか、二日も・・・」
そう呟きながら、体を動かそうとするウィルフレッド。
「・・・いっ・・・たぁ・・・・」
激痛が走り、苦痛な表情を浮かべた。
「動いてはダメよ!背中の傷がまだ癒えていないのよ」
「それはそうだが・・・なぁ、何故俺は・・・枕を抱きしめさせられているんだ?」
「寝返りうたないようによ。まだ傷が完全には塞がっていないの」
「・・・いや、それはわかる。わかってるさ・・・だが・・・気に入らないな」
「・・・?」
「・・・別に枕ではなくてもいいだろう?」
ウィルフレッドがレティシアの顔を覗き込んで口を尖らせ拗ねている。
「確かに毎晩枕を抱きしめて眠っていた事もあった。だがな、あれは好きでしていたんじゃないんだぞ?」
「・・・そ、そう・・・なのね?」
「仕方なくだ。今は枕よりもいいものがあるはずだ。枕より、シアを抱きしめていたいんだが?」
「え?私?」
「あぁ、寝返りをうたないようにすればいいんだろう?だったら、枕よりシアがいい。シアを抱きしめてるほうがいいんだが?」
「で、でも、ウィル、怪我しているのよ?」
「だから支えがいるんだろう?」
そう言うと、ウィルフレッドはにやりと笑みを浮かべた。
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次回
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