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面倒な男になった騎士団長
しおりを挟む「団長、復帰おめでとうございます!」
「あぁ、ありがとう」
「やっぱり団長がいると締まります!」
「何?俺がいないとお前らは緩むのか?」
「そ、そんな意味じゃないですよ!」
そこへ近付く足音がする。
「まぁ、まぁ、そう言わずに」
様子を遠くから見ていた副騎士団長であるレイバンだった。
「彼等も嬉しいんですよ。団長の復帰を喜んでるんです。じゃれつく犬みたいなもんですから、多目に見てやってください」
「そうか」
レイバンが穏やかな笑みを浮かべ、騎士達をぐるっと見回している。そしてウィルフレッドが問う。
「ところで、今何時だ」
「今、ですか?午前10時まわったところですね」
「まだ10時か・・・」
盛大にため息をつくウィルフレッドを、何事かと見やるレイバン。
「どうかなされましたか?何か予定でも?」
「どうにか時を進める事はできないか・・・」
「何おっしゃってるんです?」
「無理だよな・・・あぁ、早く帰りたい」
レイバンは悟った。これまでの女嫌いな騎士団長はどこへ行ったのかと思うほど、公爵邸で見たウィルフレッドは、婚約者のレティシアに甘え通しだった。きっと屋敷を出てくる時も大変だっただろうと予想する。そして今、たった数時間離れるのが耐えられないと言わんばかりに帰りたがっている。
「婚約者殿に会いたいのですね」
「そうだ。昨日までは毎日一緒にいたんだ。それも常にだ。今朝離れるのがどれだけ辛かったことか・・・騎士団長を辞してもいいと思っているぐらいだ」
「全く、何をおっしゃるかと思えば・・・」
「だが約束したから耐える」
「約束?」
「昼まで頑張ると」
「昼まで?夕刻ではなく、ですか?」
「あぁ、昼にシアが来るからな。なぁ・・・」
時計を差しながらウィルフレッドがレイバンを見る。また時間を進めたいなど言い出すのだろうと思った。
「何ですか?」
「あの時計壊れてるんじゃないか?」
どこからとも、いやどこからも、はぁ?っと声が上がる。話を聞いていた周りの騎士達も何を言い出したんだ?とウィルフレッドを見ている。
「壊れてなんかいませんよ」
「いや、壊れてるとしか思えん。まだ数分しか進んでない」
「えぇ、実際数分しか経っておりませんからね」
残念なものを見る目で見ている者、唖然とする者、苦笑いを浮かべる者。いろんな反応があったが思うことは同じ。
「壊れているのは団長だ」
どこからかぼそっと聞こえたが、ウィルフレッドには届かなかった。
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次回
俺には何よりの罰だ
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