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そのあとは【騎士団長と辺境伯令嬢】
しおりを挟む馬車に乗り込んだウィルフレッドは、レティシアを膝に乗せ、肩に頭を置いて身体を震わせている。
「シア・・・」
「・・・はぁ・・・もういいかしら?」
「くくっ、あははっ・・・」
「ちょっと笑いすぎよ」
「あぁ、すまん、すまん・・・くくっ・・・」
ひとしきり笑ったウィルフレッドはようやく落ち着いてきたようだ。
「いや・・・シアは演技がうまいな。舞台女優になれそうだ」
「あら、そう?お手本を真似ただけよ?」
「お手本?」
「えぇ、実際媚薬に侵されてなんて、目にする機会ないじゃない?役に立つものね」
「もしかして・・・俺の事を言っているのか?」
「えぇ、他に誰がいるのよ?」
「・・・俺、あんな風だったのか?」
「ちゃんと再現したつもりよ」
レティシアは自慢げに笑っている。
「俺がどうだったはどうでもいい・・・だが、シアが実際媚薬に侵されたら・・・あんな風になるなんて、男どもは喉を鳴らしただろうな」
「えぇ?」
「フロアのあちこちに、シアとの事を想像した男がたくさんいた。だが、実際触れられるのは俺だけだ。生殺しだな・・・くくっ、ははっ」
あの時、ミシェリアにワインを渡されるも、飲んだふりをして一滴も口にはしていなかった。前科がある為に、どちらかにまた仕掛けてくると考えられたため、飲食は一切しないと決めていた。
「ウィル、おなかすいたわ・・・」
「あぁ、俺もだ。早く帰って食事にしよう。きっとルシアンが待ってるぞ?」
「ふふっ、そうね。今日は早く帰ると言ってあったから待っているわね」
「そうだな」
「シア、それは俺だけにしろ!」
「どうしてよ?別にいいでしょう?」
「いや、ダメだ!」
「ルシアン、あーん」
「あーん」
レティシアがルシアンにあーんをして食べさせる。それを見たウィルフレッドがレティシアの身体を引き寄せ阻止しようとしている。兄の嫉妬に呆れた弟ルシアンだが、滅多にない事、甘んじてあーんされていた。
「シア、ルシアンにした二倍俺にしてくれ!」
「弟と張り合ってどうするのよ」
「何でもシアの1番がいいんだ!本当は唯一がいいのに・・・」
「もう・・・後でたくさん甘えていいから・・・ね?」
「・・・あぁ・・・」
結局何度もあーんを強請って、お腹も満たされた。食事がすむや否やレティシアを抱え、バスルームへと直行した。後ろからぎゅうぎゅうに抱きしめ、2人で湯に浸かった。そしてそのまま・・・寝台へ運び、しっかりと抱きしめて眠りについた。
「媚薬飲ませてみたくなったな・・・」
先に眠ったレティシアにその言葉は届かなかった。
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次回
何度生まれ変わっても、クラウディアに恋をする
どこにいてもどんな姿でも、きっと・・・君を見つけるよ
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