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ウィルフレッドだったから
しおりを挟む二人の結婚式を何とか阻止して、レティシアを手に入れたかったヴィンセントは、段々と声を小さくしていき項垂れていった。
「殿下、先ほどの質問に答えますわ」
「質問?シア、何の質問されていたんだ?」
「このまま公爵夫人におさまって満足かと」
「・・・そ、それで?」
ウィルフレッドは、レティシアが何と返答するのか、恐る恐る伺っていた。
「私は、公爵夫人になんてならなくてもいいんです」
「シ、シア!?」
悲痛な表情を浮かべて縋ろうとするウィルフレッド。その言葉を聞いて、ハッと顔を上げるヴィンセント。
「公爵夫人になれるからウィルを選んだというのなら、殿下を選べば妃になれましたよね?だったら、ウィルを選んだ理由はそこではないと言う事です。私がウィルを選んだのは、ウィルだからです」
「俺・・・だから?」
「えぇ、ウィルは・・・あなたは危なっかしかった。いつも真っ直ぐで、真剣で。でも、それが仇となることもあるの。私の一言で翻弄されて、浮き沈みするかと思えば、気にして打ち込みすぎる所もある。放っておけなかったの。あぁ、この人には、私みたいに、怒ってくれる人が必要なんだわ・・・って。でもね、それが・・・みたいにではなくて、私が怒ってあげなくっちゃって思ったの。だからウィルを選んだの。もしも、ウィルがそう言う人ではなかったら・・・その気にはならなかったかもしれないわ。いつも強くて凛々しい騎士団長様、誰からも慕われて自信満々の騎士団長様だったら・・・私はいらないわよね?どこぞかの高貴なお姫様でも娶れる地位と権力も持っている。国王陛下のお気に入りですもの。陛下選りすぐりの縁談が来てもおかしくなかったわ。それだけの人だと思うもの。でもね、私には弱い姿を曝け出した。情けない姿も見せた。本当は格好良くありたかったと思うわ。でも、間違っている、それではダメだと・・・言いたくなっちゃったのよ。だからウィルがいいと思ったの」
レティシアはウィルフレッドを見て、微笑んだ。その微笑みに、ウィルフレッドだけではなく、ヴィンセントも見入っていた。
「殿下、私は、殿下の何も知りませんわ。私は王子だ、次期国王だとしか聞かされておりませんもの。私にしか見せない姿なんてどこにあったのでしょう?だとしたら、他のご令嬢達と扱いは一緒ですわよね?何も特別だなんて感じたことありませんでしたよ?それなのに、妃にするなんて・・・ウィルと私の邪魔をしたいだけにしか聞こえませんもの」
結局、ヴィンセントは、引き連れてきた近衛騎士達に支えられ、馬車に乗せられると城へと帰っていった。
「シア、いつまでルシアンを抱きしめているつもりだ?」
「あら、今日は一緒に寝ようかと思ったのだけれど?」
「だ、ダメに決まっているだろう!」
「えぇ?ルシアン、頑張ったのよ?」
「母上がいるじゃないか!」
ごちゃごちゃ言いながらも、ウィルフレッドは王城へと戻っていった。仕事にならないと、早めに帰ったウィルフレッドが部屋に戻ると、すやすやと抱きしめあってお昼寝をしていた二人を見て、嫉妬で荒れたのは言うまでもない。ぐずぐず言いながら、レティシアを後ろから抱きしめ、自身もお昼寝に加わった。
「・・・今日だけだからな・・・ルシアン・・・」
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次回
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