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報告と温情

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レイバンを牢に入れ、ウィルフレッドは再度、国王レオナルドの元へと報告に訪れていた。


「レイバンは牢へと入れました」

「そうか、ご苦労だった」

「この度は私の部下が大変申し訳ない事をしでかしました。この責任は、」

「いや、お前が責任を感じる必要はない。騎士団で過ごす内に大きくなった憎悪ではないのだ。元より持っていたもの。お前に罪はない」

「しかし、気付くべきでした」

「いや、誰も気付いていなかったのだ。その異変に、違和感に気付いたのもお前だったという事だろう?」

「いえ・・・最初に違和感を持ったのはコルテオです」

「そうなのか?」

「えぇ。あいつは周りからいつも蔑まれた目で見られていましたから、人の機微や感情に鋭いんです。ちょっとした違いにも良く気付く。新人達を教育するにはうってつけの人材なのですが、いかんせん自身の身体を使うことが全くでして・・・とにかく、これからも好きな事をさせて役に立ってもらうつもりですよ」

「そうか・・・」


国王レオナルドは、静かに頬を緩ませた。


「それと・・・レイバンを問いただしましたが、ソハナスからの侵攻は事実ではありませんでした。暴れたがっていた野盗と、レイバンが引き連れてきていた男達のように、過去の憂いを拭えない人間の素人が集まっただけのものです。だからといって何も知らないままだと、誰かが犠牲になったかもしれません。レイバンはその事を考えると、それだけは阻止せねばと思ったのでしょう。コルテオに通信機を使わせるのには何の躊躇いもなくすんなり指示を聞いたんです」


ウィルフレッドが国王レオナルドの顔を真剣な顔で見つめる。


「何か言いたげだな?」

「えぇ・・・レイバンの事、許して頂けるとは思っておりません。しかし、レイバンの傷は、国によって、他人によってつけられた傷。この事は公にはせず、アバンス公爵家に任せては頂けませんか?」

「・・・お前が全て引き受けると言うのか?」

「レイバンはずっと私の補佐官であり、右腕のような存在でした。私が騎士団長の座を辞する時は、レイバンにその座を譲ろうと思っていた程です。そして、レイバンがこのように事を起こしてしまった事。私は責任をとって騎士団長の座を」

「まぁ、待て」


ウィルフレッドが言わんとしている事を、レオナルドはわかっているのか、言葉を遮るように話し出す。


「レイバンの今後はお前の判断に任せるとしよう。だが、お前の今後はまだ決めてくれるな」

「ですが・・・」

「レイバンの事は関わった者には緘口令を敷く。とにかく、北の辺境地の小競り合いの確認をとってくれぬか。私の可愛い姪が心配でな」

「承知しました」


一礼をし、踵を返すウィルフレッドの背中にレオナルドが声をかける。


「ウィルフレッドよ。此度は誠にすまなかった。早く屋敷に帰りたいだろうに・・・」

「いえ・・・騎士団長として送り出してくれたのもシアですから」


ウィルフレッドは振り向くこともなく、そのまま部屋から出ていった。





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次回

お前が信じてくれるなら、それでいい


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