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休暇一日目①心地よい目覚め
しおりを挟むまだ外も薄暗く、朝というには暗い時間。耳元から規則正しい寝息が聞こえる事に、レティシアは一安心した。何度も焦って飛び起きては、抱きしめ直してまた眠る。その行動をウィルフレッドが一晩中繰り返していた事が気がかりだった。実は何度もその行動のたびに気付いていて目が覚めてはいたのだが、敢えて寝たふりをしていた。レティシアが眠っていれば、いなくなる事はないとわかっているウィルフレッドは、隣に眠っているとわかれば安心してまた眠りにつくからだ。眠りから覚め、ウィルフレッドの寝息が聞こえているのをしばらく穏やかな気持ちで聴いていたが、寝顔が見たくなり腕の中で身を返す。その動きに、ウィルフレッドはレティシアの身体を探すように、確かめるように掴もうと無意識に手を動かしていた。レティシアの身体を捉えて安心したのか、目が覚めることもなく、穏やかな表情で眠っている。そっとウィルフレッドの頭に手を乗せて、髪を梳いていく。ウィルフレッドの髪は紺色で、見た目に反してサラサラと柔らかい。指通りを楽しんでいると、心地よかったのか、口元が僅かに緩んだ。
「ふふっ」
思わずレティシアが声を漏らすと、それに気付いたウィルフレッドがゆっくりと目を開いた。まだ夢の中なのか、ぼーっとしたままレティシアの顔を見つめている。
「女神がいるな・・・」
「何言ってるの・・・おはよう、ウィル」
「あぁ、おはよう」
にへらっと笑うと、ウィルフレッドはレティシアの身体を抱き寄せてしっかりと抱きすくめた。
「何度も夜中に目を覚ましてたみたいね?」
「知ってたのか?」
「えぇ」
「・・・気付けば眠ってしまってて、焦って飛び起きて、シアがいなくなってないか確かめて、でもちゃんと目の前にいて。また安心して眠っての繰り返しをしていたな・・・」
「そうみたいね。ゆっくり眠れたとは言えないだろうけど、寝息をたててたのには安心したわ」
「心配かけてすまん・・・」
「いいのよ」
「・・・」
「ねぇ、ウィル?」
レティシアは腕の中からウィルフレッドの顔を見上げる。
「何だ?」
「お休み10日貰ったじゃない?」
「そうだな」
「ウィルは何かしたいことある?」
「シアを独り占めしたい」
「それはそれでいいんだけど、そうね・・・例えばどこか行きたいとか、何か食べたいとか」
「・・・何も考えてないな・・・とにかくシアと一緒にいたいとしか思いつかない・・・」
「そう・・・じゃあ、ウィルに提案があるわ」
「提案?」
それから寝台の中で、ウィルフレッドに抱きしめられたまま、話を続けた。レティシアの言う提案は、ウィルフレッドにとって、思いもしなかった意外なもので、自身にとってもありがたいものだった。
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次回
ウィル、私を盾に隠れないでくれる?
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