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休暇二日目⑧羨望の眼差し

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「おい、みんな、ちっとばかり手を休めてくれないか!」


副騎士団長のエリオットが声をかけると、何事かと稽古中の騎士達がこちらを向く。


「あれって、白馬の!」

「あぁ、近衛の騎士団長様だよな?」

「もしかして見学に?」


騎士達がウィルフレッドの存在に気付くと、憧れの眼差しで視線を送ってくる。


「みんな、この方は近衛騎士の、ウィルフレッド・アバンス騎士団長様だ!本日はプライベートで当主様を見舞いにいらしたらしいが、ご夫人の希望もあって、稽古に参加される!滅多にない機会だ、何か一つでも学びを得られるように、有意義な時間にしてくれ」


副騎士団長のエリオットがウィルフレッドを紹介すると共に、ご夫人がと付け足した。そのせいでレティシアにも注目が集まってしまった。ウィルフレッドは、いてもたってもいられなくなり、隠すように、自身の胸にレティシアの顔を押し付けぎゅっと抱きしめた。騎士達はその様子に、最初は唖然としていたが、近衛騎士の騎士団長まで上り詰めた事に加え、こんなにも美しい妻を得られる事ができたウィルフレッドを羨望の眼差しで見ていた。もし出世をしていく事ができたなら、あんな風に羨ましがられるような存在になれるのだろうかと夢を与えたようであった。


「紹介された通り、俺は近衛の騎士団長だ。だからと言って、俺が一番強いわけでもなく、俺の剣が一番凄いと言うわけでもない。その土地、所属する軍、敵対するもの・・・さまざまな環境下で、それにあうように力を発揮する事が大事だ。君達もこの辺境で、たくさん鍛錬を積み、己の力を高めてきたと思う。今日は、それぞれが有意義な時間になるように、君達の力を存分に見せてくれ」


ウィルフレッドが話をすると、騎士達がわぁっと沸き立った。その後、ウィルフレッドは、一人ずつ丁寧に指導をしながらも、どんどんと騎士達を打ち負かしていく。自分に見惚れていれはくれないだろうかと、その度にレティシアをチラチラと見ては確認する。レティシアが目が合うたびに小さく手を振ってくれることに、ウィルフレッドは心が浮き足立つ。気付けば周りには疲れ果てた騎士達が地面にへたりこんでいた。


「もう終わりか?」

「はははっ、全く情けないな。騎士達の体力はまだまだですな。体力づくりをせねばいけないと当主様に助言しておきましょう」

「そうですね。俺一人相手にこれだけの人数がばてているなどと、心配になりますよ。いざという時、命を落としかねませんからね」

「ごもっともですな」


ウィルフレッドはばててはいないものの、たくさん汗をかいて、砂まみれ。さすがにレティシアにベタベタとしていたら嫌われるだろうと思い、遠慮をしていた。だが、そんな様子に気付いたレティシアが、自らウィルフレッドに抱きついた。


「お疲れ様」

「シ、シア・・・今、俺汗かいてるし、汚れてるから・・・」

「それがどうかしたの?」

「えっ・・・」

「ねぇ、部屋に戻って湯浴みしましょう?きっとすっきりするわ」

「・・・そうだな」


ウィルフレッドは、レティシアを抱えると、騎士達に向き直る。


「いい運動になった。君達も休息をとって、明日からもしっかりと鍛錬を続けてくれ」


そしてレティシアを抱えたまま嬉しそうに歩いていくウィルフレッドの背中を、騎士達はいろんな意味で憧れの眼差しを向けていた。


「俺は嫁に、汚いままくっつかないでって頬を引っ叩かれた事あるぞ」

「俺だって、恋人が見学に来たことがあるが、汗臭いまま近寄るなって言われたな」

「あんな風に自ら抱きつかれるなんて・・・羨ましすぎるだろう」

「いい男はかく汗さえもいい匂いがするのか?」


騎士達は羨ましいだの、凄いだの・・・いろいろ好き勝手話しているが、共通するのは、優しい綺麗な奥さん・・・いいなぁと。ウィルフレッドに対していろんな意味で憧れが増していくのだった。




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次回

なんだか特別って感じがするから好きなんだ







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