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休暇二日目⑩ゲオルグへの報告
しおりを挟む「それはそうと、突然どうしたんだ?」
「師匠の見舞いと・・・事件の詳細を話すべきかと思いまして」
「だとしても、知らせぐらい出してから来いよ。何のもてなしもできないじゃないか」
「ごめんなさい。こちらへ来ることは私が急に言い出したことなのです。ゲオルグ様のお見舞いもですが、イザベラ様にも会いたいくて」
「そうだったのか。まぁ、会えて嬉しいが・・・こんな格好じゃなぁ・・・」
「仕方ありませんよ。今は怪我を治すことを一番に考えてください」
「あぁ」
それから、ウィルフレッドは、ゲオルグに事件の詳細を語っていった。
「結局はレイバンの仕業だったって事か」
「えぇ、ですが、もう一人牢に捉えられているものがいましてね・・・」
ウィルフレッドはちらりとイザベラを見る。視線を感じたイザベラは不安な表情になっていく。
「師匠、夫人には少々辛い話になるかもしれないんですが・・・」
ウィルフレッドの神妙な面持ちに、イザベラの顔が強張った。そを見たゲオルグはイザベラに手招きをし、自分の側まで呼びつけた。イザベラを寝台に腰掛けるように座らせると、その膝の上に、ゲオルグが頭を乗せた。所謂膝枕というやつだ。
「へ、辺境伯様!?」
「このまま聞きたい」
「師匠、オジサンが甘えるのはあまり可愛らしくはないかと」
「お前だってそんなに若くはないだろう?随分と甘えているらしいじゃないか」
「・・・まぁ、否定はしませんが」
ウィルフレッドは呆れたようにため息をつく。真っ赤になっていたイザベラだったが、少しずつ顔が強張っていく。それに気付いたゲオルグが、イザベラの顔を見上げ優しく笑みを向ける。
「イザベラ、大丈夫だ。俺がついている。これから聞くことが何であっても、俺が側にいる。だから、きちんと聞いておこう」
「・・・は、はい・・・」
ウィルフレッドは一呼吸置くと、口を開いた。
「マクシミリオンが陛下の寝所に忍び込んだ事が事の発端です」
「お、お兄様が!?」
「あぁ、シアに手を出そうとして、派手にやらかした事で、屋敷に軟禁状態だった。それで、次期公爵家当主の座からもおろされた。何も叶わず、何も手にできず、あいつは自暴自棄になり、公爵にもう一度目を向けてほしくて、見返してやりたくて、大きな事を起こそうと画策した。だが、先に話した通り、今回の一件は全てレイバンが仕組んだこと。マクシミリオンは利用されたに過ぎない。だが・・・屋敷を無断で抜け出したのはよくなかった・・・」
「・・・お兄様は・・・お兄様はどうなるのでしょうか・・・」
「マクシミリオンの処罰は俺に一任されている。悪いようにはしないと誓う。マクシミリオンが屋敷を抜け出している間に、君が師匠のところへと嫁いで来た。それを教えてやると、あいつは・・・兄の顔になったよ。随分と心配していた。だから・・・マクシミリオンを安心させるためにも、君には幸せになってもらわないと行けない。だから、こんな人だけど、師匠をよろしく頼むよ」
「・・・すみません、お兄様の事・・・よろしくお願いします」
「あぁ」
「なぁ、ウィルフレッド、こんな人って言い方はないだろう・・・」
「そんな格好で言われてもですね・・・」
「案外いいもんだな。ハマりそうだ・・・」
「はいはい、ではお邪魔でしょうから俺たちは退散しますよ。シア、行こう」
「えぇ。あっ、イザベラ様?」
「は、はい」
「ゲオルグ様の髪もサラサラと気持ちよさそうよ?」
「は?」
ゲオルグとイザベラは何を言われたかわからず、ポカンとしている。手招きすると、それに応えるように、ウィルフレッドがレティシアの身体を抱きかかえる。
レティシアはウィルフレッドの頭を撫でながら、髪を梳いていく。ウィルフレッドは気持ちよさそうに目を細めていた。それを見たイザベラは無意識にゲオルグの髪に触れていた。
「ぬぉっ・・・」
自ら甘えてみせたゲオルグだったが、イザベラの手が自身の髪に触れるように頭を撫でている事を認識すると、全身が真っ赤に染まってしまった。そのままイザベラの足に顔を隠すように押し付け固まってしまった。その様子を見て、二人はそっと寝室から辞した。
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次回
【ゲオルグ・イザベラside】
ん?イザベラどこに行くんだ
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