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休暇二日目②イザベラの本音と葛藤
しおりを挟む「ここならいいと思います」
「ゲオルグ様の部屋から丸見えですわ・・・なんだか見られているみたいで落ち着かないのですが・・・」
「大丈夫です。声は聞こえませんから」
「そうですけれど・・・」
ソワソワとしながら視界に入るゲオルグの部屋が気になってしまうイザベラ。
「それで、二人きりで話したい事って何でしょう?」
「あ、えっと・・・あの・・・」
言葉に詰まるイザベラだったが、レティシアはじっと語られるであろう事を待つ。
「・・・夫に・・・もっと夢中になってもらうにはどうすればよろしいのでしょうか!」
「・・・ぷっ・・・」
「レティシア様?」
「ぷはははっ!」
「な、何ですの!?どうしてそんなに笑うんですの!?」
「だって・・・くっ・・・一体何の、心配してるっ、かと思えば・・・はははっ」
「もう・・・真剣なんですのよ?」
「ごめんなさい・・・ふふっ、何の心配もいりませんわ」
「どうしてそう言い切れるのです」
「まぁ、いいです。イザベラ様は、旦那様が好きなんですね?」
「・・・え、えぇ・・・好き・・・になってしまいました」
「だったら素直に好きって言えばよろしいのに」
「い、言えませんわ!」
「どうして?」
「だって・・・親子ほど歳が離れているのですよ?こんな小娘が好きだと言って本気にしてもらえなかったら・・・立ち直れませんわ」
「あら、イザベラ様は、ご自分に自信がないのですか?」
「本気になどしてもらえる気がしませんわ・・・私なら尚更です。事件を起こして牢にまで捉えられたのです。辺境伯様は私を押し付けられたのでしょう?公爵家から・・・お父様から厄介払いされてしまった私を押し付けられて・・・きっと困ってらっしゃると思うのです」
「イザベラ様、夫の事をいつまで辺境伯様とお呼びになられるつもりです?」
「へっ?」
「お名前で呼んでみたら何か変わるかもしれませんわよ?」
「名前・・・名前で?」
「名前ご存知ないですか?」
「し、知ってますわ!心の中では呼んでおりますもの」
「口に出して呼べばよろしいのです」
「・・・い、いいんでしょうか・・・」
「きっと喜ばれますわ」
それから、レティシアはウィルフレッドの事を話してみせた。名前で呼び合うと決めた時に涙を流し、あーんを初めてした時に戸惑いながらも喜んだ事、騎士仲間に聞いた恋人の膝枕を羨ましがっていた事、自分が他の男によくする事に対して嫉妬をする事。いろんな話を聞き、あの冷静な騎士団長が、この人の前ではただの一人の男なのだという事に驚きを隠せなかった。
「シア、随分楽しそうだな?」
「ウィル。来ちゃダメだって言ったでしょう?」
「仕方ないだろう?俺が嫉妬するのは男相手だけじゃないらしい」
「え?」
「シアをとられただけで拗ねてしまった俺が面倒だったのか、師匠から追い出された」
「あははは!何してるのよ」
「もどかしかったんだ」
「もどかしい?」
「部屋の窓から姿が見えるのに、声も聞こえなければ、手も届かない」
「もう・・・とは言え、イザベラ様、まずはお名前からですわね」
レティシアはイタズラっぽく笑う。ウィルフレッドが敷物の上に寝転がると、レティシアの足に頭を預けた。
「夫人、シアは返して貰う。早く師匠の所に行ってやってくれ」
ウィルフレッドはレティシアの足にごろごろと頭を押し付けながら言い放った。
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次回
俺は今、この上なく感動している
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