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休暇五日目③語られる内情
しおりを挟むレガルドと名乗る、自らをソハナスの宰相であるという男。レガルドは、ソハナスを壊して欲しいと悲痛な面持ちで訴えてきた。
「待ってくれ。国を壊すなどと・・・なぜそのような必要があるんだ?」
「・・・ソハナスは、もう国として機能していないのです。民は重税で苦しむばかり。明日の生活すら危ぶまれている者も多いのです」
「国王は何をやってるんだ・・・」
「王は・・・気に入った女を愛妾として召し上げ、政治に関しては悪政を強いております。家族を人質に取られたり、娘を無理矢理愛妾にされたりと・・・散々な様子なのです」
レガルドは、国や王の現状を語っていくが、段々と表情も暗く声も小さくなっていく。
「随分と苦しまれているようですわね・・・土地の繋がった隣の国ですのに・・・随分と様子が違うのね・・・」
「先代の王もまた、独裁政治をしいておりましたが、それはれっきとした王族であったが故・・・現在の王は・・・成り上がりの、しかも先王を手にかけて成った王なのです」
「・・・その話は聞いた事があるな」
「王は・・・執着しておられる・・・」
「王位にか?」
「いや・・・一人の女性にです」
「たくさんの女性を召し上げているのよね?なのに、たった一人の女性を愛していると言うの?」
「現王は、子爵家の子息だったのです。ある時、先王が、決闘の末、優勝者には王女と婚姻する権利を与えると公表なさった。皆、躍起になって戦って、子爵家の子息で騎士だった現王がその権利を勝ち取ったのです。いざ勝利の証と姫を貰い受けようとすれば、姫の私室はもぬけのから・・・逃げ出した後だったのです。私どもからすれば自由に生きてくだされと何もして差し上げられなかった事を懺悔しながら心で祈ったものです。だが、現王は違いました。約束が違うと、王宮内で暴れてまわり、まずは先王、王妃、王子殿下と王族の命を奪ってまわりました。城の中にいた文官や騎士達もたくさん犠牲となりました。それからです。手に入れられなかった姫に執着をし、いまだに面影を探すかのように、どんどん女を城に召し上げ続けているのです」
ウィルフレッドとレティシアは、レガルドの話を聞き、国が随分と疲弊しているのだと理解した。
「ねぇ、ウィル、折角だし北の辺境伯のところへ一緒に来てもらいましょう?クレイドル様なら、何かいい案があるかも知れないわ」
「そうだな・・・宰相殿、俺達はこれから北の辺境伯領へ行く予定だ。同行されるか?」
「え、えぇ、八方塞がりでしたから、少しでも足掛かりができればなんだって嬉しいです。共に参らせて頂きます」
「では決まりね。さぁ、ブルーノ、行くわよ」
レティシアは、草原でのんびり草をむしゃむしゃ食べていたブルーノに駆け寄って行った。
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次回
騎士団長殿、なぜそうなる?
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